プロが教える! エネルギー技術者必読書6冊♪
2016/07/17公開 更新
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エネルギーの安定供給は、日本の昔からの課題でした。エネルギーを求めておじいさんは山に柴刈りに行きました。もののけ姫のたたら製鉄の周囲は木炭を供給するめに山が禿山になっていました。第二次世界大戦も石油の供給を断たれたのが一つの要因となっています。地下資源のない日本にとって、エネルギーの確保が、日本の生命線であることは昔から変わりません。
ちなみに、電力の日本の自給率は、水力のみで約10%です。再生可能エネルギーも増えていますが、買取価格は30円/kWh以上。家庭の電気料金が25円/kWhくらいですから再生可能エネルギーをどんどん増やせば、電気料金もどんどん上がっていきます。太陽光、風力は不安定なので、いずれ周波数を安定化させるためにお金もかかるようになってくるでしょう。困っているのは、工場などで億円単位の電気を使って国際的な競争をしている人たちです。
日本のエネルギーをどうするのか、決めるのはだれなのでしょうか。まずは、日本のエネルギーがどうなっているのかを知ることからはじめるのが大事だと思います。最近のエネルギー関係の書籍を6冊厳選してご紹介します。
「石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門」岩瀬 昇
【私の評価】★★★★★(90点)
https://1book.biz/2016/02/15/post-3226.html
三井物産でエネルギー関連事業に取り組んできた岩瀬さんが重要視するのは、エネルギーの安定確保です。エネルギー自給率4%の日本は、構造的にエネルギー供給がボトルネックになっているということです。いかに安くエネルギーを購入するかが重要ではなく、いかに安定的にエネルギーを確保するのかが重要なのです。
「エネルギー(上・下)」黒木 亮
【私の評価】★★★★★(95点)
https://1book.biz/2020/08/18/energy.html
トーメンは資源エネルギー庁の官僚とイランのアザデガン油田を開発しようとします。したり、サハリン2はロイヤル・ダッチ・シェルル5%、三井物産%、三菱商事が推進しました。日本を支えるエネルギーである原油、LNG、石炭を確保するために、大手商社、国策資源会社、官僚が現在も努力しているのです。プロジェクトファイナンスに興味のある人は、ぜひ読んでみるべき一冊だと思います。金融機関、弁護士事務所との関係など実務の雰囲気を仮想体験できる一冊です。
「「エネルギー・シフト」再生可能エネルギー主力電源化への道」橘川 武郎
【私の評価】★★★★☆(80点)
https://1book.biz/2021/08/27/energy-shift.html
再生可能エネルギーが大量導入され、お昼の時間帯に太陽光の電力が余るようになりました。国の調査会の委員である著者の橘川(きっかわ)先生の提案は、FIT(再生可能エネルギー買取制度)は終了し、揚水や蓄熱による再生可能エネルギーの余剰電力を貯蔵するというものです。また、原子力についても、廃止するのか、最新型へ更新するのか、道筋をはっきりさせるよう求めています。
「電力と震災 東北「復興」電力物語」町田 徹
【私の評価】★★★☆☆(78点)
https://1book.biz/2014/04/12/post-2759.html
東北電力の女川原子力発電所が14メートルの津波に耐えたのは、外部電源として別々の3系統の送電線と変電所があったからです。また、津波の伝説を参考に敷地高さを15メートルとしたこと。さらに、取水口を深く掘り込み、津波の引き潮でも冷却水を維持する構造とする等、独自の津波対策を行っていたのです。
一方、東京電力の福島第1発電所は、外部電源が2系統なのに、なぜか変電所は1箇所でした。国の指針では外部電源は2系統だけでよいのですが、変電所が1か所で問題ないのは、指針の抜け穴のようなものなのです。東京電力は抜け穴を使って、安全性を犠牲にして、コストダウンを選択したのです。敷地高さも福島第1発電所は山を削って、経済的な5~10メートルとしていました。万が一の津波に備えるのか、形だけ指針に合わせて手抜きをして金儲けを優先するのか、企業の考え方がそのまま設備に反映されていたのです。
■「ドイツの脱原発がよくわかる本」川口・マーン・惠美
【私の評価】★★★☆☆(72点)
https://1book.biz/2016/06/17/denuclearization.html
ドイツでは、原発を減らしながら、再生可能エネルギーを大量導入しました。その結果、ドイツでは電気料金は2倍になってしまったのです。日本でも電気料金が再エネ大量導入で上がっていくことになるのです。
さらに、ドイツでは不安定な再エネを導入しても、バックアップとしてノルウェーやスウェーデンから水力の電気を買えるので、電力系統はなんとか安定しています。しかし、バックアップのない日本では、既存の火力発電所が停止したまま、再エネが発電しないときのためにバックアップとして残っています。発電しない発電所は収入がないので、廃止されています。
火力発電所が廃止されると供給力が不足してきます。そのため現在の日本では、容量市場という仕組みで4年後の発電できる能力にお金を払う仕組みを新しく作らざるをえなくなっています。この容量市場の費用も、電気料金に上乗せされるのです。日本は、ドイツの再エネ導入による失敗をまねるだけでなく、さらに加速して失敗しようとしているように見えるようです。
■「原発再稼働「最後の条件」:「福島第一」事故検証プロジェクト最終報告書」 大前 研一
【私の評価】★★★★☆(84点)
https://1book.biz/2013/03/20/post-2378.html
著者の提案は、原子力発電所を民間企業で運営することは無理なので国営化することとし、発電と核燃料サイクルを併営することです。原子力発電所で事故が起これば、東京電力のように会社は国営化され、分割されてしまうからです。
また、メルトダウンを2か月にわたって隠蔽したのは誰なのか、東京電力と原子力安全・保安院と首相官邸の間でどのような情報がやりとりされていたのか、どこでどんな情報が妨害されたのかといった流れを明らかにし、適切な情報を発信できなかった原因を解明していかなければ、同じことが起こると警鐘を鳴らしています。私でも原発の水素爆発を見て、炉心のジルコニウムが水と反応して水素が発生しており、これはメルトダウンしたと判断し、避難したのですから、国家として恥ずかしい話なのです。
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私たちにとってのエネルギーとは
エネルギーの安定供給は、日本の昔からの課題でした。エネルギーを求めておじいさんは山に柴刈りに行きました。もののけ姫のたたら製鉄の周囲は木炭を供給するめに山が禿山になっていました。第二次世界大戦も石油の供給を断たれたのが一つの要因となっています。地下資源のない日本にとって、エネルギーの確保が、日本の生命線であることは昔から変わりません。
ちなみに、電力の日本の自給率は、水力のみで約10%です。再生可能エネルギーも増えていますが、買取価格は30円/kWh以上。家庭の電気料金が25円/kWhくらいですから再生可能エネルギーをどんどん増やせば、電気料金もどんどん上がっていきます。太陽光、風力は不安定なので、いずれ周波数を安定化させるためにお金もかかるようになってくるでしょう。困っているのは、工場などで億円単位の電気を使って国際的な競争をしている人たちです。
日本のエネルギーをどうするのか、決めるのはだれなのでしょうか。まずは、日本のエネルギーがどうなっているのかを知ることからはじめるのが大事だと思います。最近のエネルギー関係の書籍を6冊厳選してご紹介します。
プロが教える! エネルギー技術者必読書6冊
エネルギーを考える
「石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門」岩瀬 昇
【私の評価】★★★★★(90点)
https://1book.biz/2016/02/15/post-3226.html
三井物産でエネルギー関連事業に取り組んできた岩瀬さんが重要視するのは、エネルギーの安定確保です。エネルギー自給率4%の日本は、構造的にエネルギー供給がボトルネックになっているということです。いかに安くエネルギーを購入するかが重要ではなく、いかに安定的にエネルギーを確保するのかが重要なのです。
「エネルギー(上・下)」黒木 亮
【私の評価】★★★★★(95点)
https://1book.biz/2020/08/18/energy.html
トーメンは資源エネルギー庁の官僚とイランのアザデガン油田を開発しようとします。したり、サハリン2はロイヤル・ダッチ・シェルル5%、三井物産%、三菱商事が推進しました。日本を支えるエネルギーである原油、LNG、石炭を確保するために、大手商社、国策資源会社、官僚が現在も努力しているのです。プロジェクトファイナンスに興味のある人は、ぜひ読んでみるべき一冊だと思います。金融機関、弁護士事務所との関係など実務の雰囲気を仮想体験できる一冊です。
電力業界を考える
「「エネルギー・シフト」再生可能エネルギー主力電源化への道」橘川 武郎
【私の評価】★★★★☆(80点)
https://1book.biz/2021/08/27/energy-shift.html
再生可能エネルギーが大量導入され、お昼の時間帯に太陽光の電力が余るようになりました。国の調査会の委員である著者の橘川(きっかわ)先生の提案は、FIT(再生可能エネルギー買取制度)は終了し、揚水や蓄熱による再生可能エネルギーの余剰電力を貯蔵するというものです。また、原子力についても、廃止するのか、最新型へ更新するのか、道筋をはっきりさせるよう求めています。
「電力と震災 東北「復興」電力物語」町田 徹
【私の評価】★★★☆☆(78点)
https://1book.biz/2014/04/12/post-2759.html
東北電力の女川原子力発電所が14メートルの津波に耐えたのは、外部電源として別々の3系統の送電線と変電所があったからです。また、津波の伝説を参考に敷地高さを15メートルとしたこと。さらに、取水口を深く掘り込み、津波の引き潮でも冷却水を維持する構造とする等、独自の津波対策を行っていたのです。
一方、東京電力の福島第1発電所は、外部電源が2系統なのに、なぜか変電所は1箇所でした。国の指針では外部電源は2系統だけでよいのですが、変電所が1か所で問題ないのは、指針の抜け穴のようなものなのです。東京電力は抜け穴を使って、安全性を犠牲にして、コストダウンを選択したのです。敷地高さも福島第1発電所は山を削って、経済的な5~10メートルとしていました。万が一の津波に備えるのか、形だけ指針に合わせて手抜きをして金儲けを優先するのか、企業の考え方がそのまま設備に反映されていたのです。
原子力を考える
■「ドイツの脱原発がよくわかる本」川口・マーン・惠美
【私の評価】★★★☆☆(72点)
https://1book.biz/2016/06/17/denuclearization.html
ドイツでは、原発を減らしながら、再生可能エネルギーを大量導入しました。その結果、ドイツでは電気料金は2倍になってしまったのです。日本でも電気料金が再エネ大量導入で上がっていくことになるのです。
さらに、ドイツでは不安定な再エネを導入しても、バックアップとしてノルウェーやスウェーデンから水力の電気を買えるので、電力系統はなんとか安定しています。しかし、バックアップのない日本では、既存の火力発電所が停止したまま、再エネが発電しないときのためにバックアップとして残っています。発電しない発電所は収入がないので、廃止されています。
火力発電所が廃止されると供給力が不足してきます。そのため現在の日本では、容量市場という仕組みで4年後の発電できる能力にお金を払う仕組みを新しく作らざるをえなくなっています。この容量市場の費用も、電気料金に上乗せされるのです。日本は、ドイツの再エネ導入による失敗をまねるだけでなく、さらに加速して失敗しようとしているように見えるようです。
■「原発再稼働「最後の条件」:「福島第一」事故検証プロジェクト最終報告書」 大前 研一
【私の評価】★★★★☆(84点)
https://1book.biz/2013/03/20/post-2378.html
著者の提案は、原子力発電所を民間企業で運営することは無理なので国営化することとし、発電と核燃料サイクルを併営することです。原子力発電所で事故が起これば、東京電力のように会社は国営化され、分割されてしまうからです。
また、メルトダウンを2か月にわたって隠蔽したのは誰なのか、東京電力と原子力安全・保安院と首相官邸の間でどのような情報がやりとりされていたのか、どこでどんな情報が妨害されたのかといった流れを明らかにし、適切な情報を発信できなかった原因を解明していかなければ、同じことが起こると警鐘を鳴らしています。私でも原発の水素爆発を見て、炉心のジルコニウムが水と反応して水素が発生しており、これはメルトダウンしたと判断し、避難したのですから、国家として恥ずかしい話なのです。
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読んでいただきありがとうございました!
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