「統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福」櫻井 義秀, 中西 尋子
2022/08/08公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
「統一教会」の勧誘方法
「統一教会」の教えの内容、勧誘方法、セミナーの内容、営業トークマニュアルから、会員へのインタビューと幅広く調査した内容となっています。「統一教会」の教義は、キリスト教をベースとしながら、文鮮明がメシアであり、人々に「祝福」を与えるというものです。祝福とは教祖が配偶者を決めて信者同士が結婚するというものです。このような異様な教義のため、キリスト教各教派からは異端とみなされています。
韓国は神の国であり、地上天国を建設した後に、世界の中心になり、世界の言語は韓国語になる。そして日本は、韓国を植民地とした罪深い国家であり、韓国民に対して贖罪しなくてはならないとしています。ところが日本での統一教会の宣教は、キリスト教が一般的でないためうまくいきませんでした。結局、1960年代から若者をターゲットとした反共的な政治運動としてメンバーを集め、そのメンバーを統一教会員とすることで勢力を拡大させたのです。政権与党の政治家の庇護を受けたのも事実のようです。
統一教会系の団体には、韓日人協会、原理研究会、世界平和宗教連合、世界平和教授アカデミー、世界平和女性連合、世界平和青年連合、世界平和統一家庭連合、日本青少年純血運動本部、真の家庭運動推進協議会、国際勝共連合、世界日報社、光言社、一心病院、世一観光、一和等の多数の組織があり、統一教会と知らされずに入会してしまう人も多いのでしょう。例えば、統一教会の販売マニュアルには、「印鑑を売るな!開運という商品を売れ!」と書かれており、仕事として霊感商法を組織的に進めていたことがわかるのです。
日本の統一教会は・・宣教の対象を若者に絞り込むことにした。1964年に小宮山嘉一を会長として全国大学連合原理研究会が創立され、大学生・青年の伝道が活発化した(p89)
日本の女性信者6,7千人が韓国人に嫁いだ
1980年代に入ると日本の統一教会は、活動資金を調達するために街頭や個別訪問で人をキャッチして姓名判断を行い、先祖の供養や悪霊を解くといった名目で高額の印鑑、数珠、壺を売りつけ霊感商法として問題となりました。運勢を転換するために印鑑を買うことを勧め、祖先の恨みをはらすには、さらに壺、多宝塔を購入するしかないと脅して、50万円から500万円で壺を買わせたのです。
1990年代半ばになると、日本の統一教会の幹部が韓国人に置き換えられ、日本の統一教会信者に対する献金の要請が激化ました。当時のビデオでは、韓国の幹部が日本の教会員に対して全財産を自らはき出すだけでなく、はき出す人を連れてこいと檄を飛ばしていたという。
合同結婚式も2000年代まで行われており、日本の女性信者6,7千人が韓国人に嫁いだという。日本は韓国を植民地とした罪深い国家であり、韓国への贖罪として金を支払わなくてはならず、韓国の花嫁不足問題の解消のために女性を提供しなくてはならないということなのでしょう。
日本が強制的に韓国を合併した後には、韓国民族の自由を完全に剥奪し、数多くの愛国者を投獄、虐殺し、・・・多数の良民を殺戮した(p61)
日本は罪深い国
不思議に思うのは、霊感商法で金を巻き上げているのは日本だけで、韓国、米国ではそれほど悪評がないことです。つまり、霊感商法は金を巻き上げるために日本だけで行われているのです。統一教会の勧誘方法は、プログラム化されており、正体を隠して手相・姓名判断を受けさせ、商品を買わせます。その後のビデオセミナー、宿泊セミナーでの教化と定型化されていることがわかります。
日本を罪深い国とし、罪悪感を利用して20歳前後の若者をターゲットに洗脳し、年間数百から数千億円の金を吐き出させ、7000人もの日本人女性を知らない男性と結婚させるたことに、怒りの気持ちがわいてきました。金を奪うだけでなく、関係した人の人生まで奪っているのです。
そして韓国人の男性と結婚した日本の女性が、貧しい生活の中で暴力を振るわれたりしても、それに耐えることで、罪深い日本人として救われると思い込まされているという。抜け出せないように仕組まれているのです。洗脳の技術は良い方向に使えば、強力なプラスに作用しますが、統一教会のように使えば、人を自分の思うとおりに動かせることに恐怖を感じました。
統一教会については調査を続けます。良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・CHは支部、物販名のMはマナ(高麗人蔘エキス)、DJは男女美化粧品、Sauはアセデール(遠赤外線サウナ)、チケ・コースはビデオセンター受講代、Blueは展示販売会、HGは早く現金(信者・関係者からの借入金)、TKは短期借り入れ(1年以内)、NTは献金のことである・・・年間数百億円から1000億円近くの金を日本が稼ぎ出していた(p148)
・新規前線トーク・マニュアル・・・若く、小金を持っている職種。学生に対しても学校を選んでいる。下宿・一人暮らしの人を選ぶのは家族に相談しにくい状況にあること、後のセミナーやホーム生活に導入しやすいからだ(p221)
・ツーデイズセミナー・・・講師は閉講式において、実は霊の親が迎えに来ているのだと明かす・・・突然幕が開けられ、霊の親が霊の子の名前を呼びながら駆け寄る(p232)
・三日行事式次第・・・第一日・・女性上位で愛の行為。(女性は白のネグリジェ・・第二日(第一日)と同様・・第三日・・男性上位で愛の行為(p308)
▼引用は、この本からです
櫻井 義秀, 中西 尋子、北海道大学出版会
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
第Ⅰ部 統一教会の宣教戦略
第一章 統一教会研究の方法
第二章 統一教会の教説
第三章 統一教会の教団形成と宣教戦略
第四章 統一教会の事業戦略と組織構造
第五章 日本と韓国における統一教会報道
第Ⅱ部 入信・回心・脱会
第六章 統一教会信者の入信・回心・脱会
第七章 統一教会信者の信仰史
第Ⅲ部 韓国に渡った女性信者
第八章 韓国社会と統一教会
第九章 在韓日本人信者の信仰生活
第10章 『本郷人』に見る祝福家庭の理想と現実
著者経歴
櫻井義秀(さくらい よしひで)・・・1961年 山形県生まれ。1987年 北海道大学大学院文学研究科博士課程中退。2004年より 北海道大学大学院文学研究科教授
中西尋子(なかにし ひろこ)・・・1964年 大阪府生まれ。1997年 龍谷大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在 関西学院大学,関西大学,京都女子大学,阪南大学等非常勤講師
統一教会関連書籍
「Nの肖像 ― 統一教会で過ごした日々の記憶」仲正 昌樹
「統一教会の内幕―なぜ若者たちは新宗教に走るのか」エール出版社
「統一教会とは何か―追いこまれた原理運動」有田 芳生
「統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福」櫻井 義秀, 中西 尋子
「旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録」樋田毅
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