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「旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録」樋田毅

2024/08/29公開 更新
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「旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録」樋田毅


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

多宝塔は500万円から1500万円

統一教会の広報部長であった大江益夫氏の発言を、元朝日新聞記者である著者がまとめたものです。大江氏は大腸ガンで治療を受けており、遺書に近いものを感じました。大江氏は広報部長から離れた直後に、信者の高額献金に反対する内容の書籍「統一教会の検証」を出版して、その後、ブラジルのアマゾン奥地へ左遷されたという。


かつて統一教会の副島嘉和氏が、統一教会の霊感商法の問題点を月刊文藝春秋に寄稿したときには、副島氏は自宅前の路上で刃物を持った男に襲われ、重傷を負っています。統一協会を裏切ると、命を狙われる危険があるわけで、大江氏の覚悟がわかります。


統一教会は1975年から、文鮮明教祖の発案で高麗人参製品の輸入販売を開始しました。その後、販売事業を行うハッピーワールド社が社長の古田元男氏の指導のもと、「壺を買わないと先祖が救われない」と恐怖心を煽り、お年寄りや弱い者に印鑑や壺や多宝塔を売っていたのです。多宝塔は500万円から1500万円で売られていたという。


統一教会系の世界日報編集局長であった副島嘉和氏の手記によると、手記が書かれた1984年までに、合計約2000億円が韓国の統一教会本部に送金されたというのです。


霊能者の役、その介添え役を信者が演じ、お年寄りや弱い者を騙す。「壺を買わないと先祖が救われない」と恐怖心を煽り、販売するわけです(p74)

クーデター計画を準備

統一協会の布教の歴史の記述では、統一教会が日本での布教に苦戦し、学生を中心とした反共産主義活動を布教の入口にしたことが垣間見れます。1967年に文鮮明教祖と、笹川良一氏、児玉誉士夫の代理人が、文教祖が主唱する勝共運動の受け入れで一致し、翌年、旧統一教会系の政治団体、国際勝共連合が結成されたという。


驚くべきことは、国際勝共連合には、400人ほどの武闘派がおり、銃を使った射撃訓練や、ソ連、中国、北朝鮮などの政府関連機関にスパイとして潜り込み、情報収集活動を行っていたというのです。


そして、どこまで信じられるのかわかりませんが、ソ連などの侵略に備え、強力な政府を樹立するためのクーデター計画を準備し、大江氏も関わっていたというのです。つまり、侵略された時、自民党政府では頼りにならないので、自衛隊と組んで臨時政権を樹立する。そのために、元自衛隊幹部の選挙を応援したというのです。


さらに、統一教会の韓国の教団本部は、「鋭和散弾銃」という子会社を持っており、日本全国に20店舗余りの銃砲店を置き、店に射撃練習場を備え、火薬銃も取り扱っていたという。そして、自衛隊員向けの布教も強化したり、武闘派メンバーは予備自衛官となって自衛隊基地で軍事訓練を受けるなど、クーデターの準備をしていたというのです。


埼玉の朝霞駐屯地で自衛隊員を主な対象に伝道していた旧統一教会のホームがあった。そこの代表は、自衛隊を中心にして日本に革命を起こすと言っていた(p105)

サタンの日本の金を神の韓国に取り戻す

統一協会の教義では、旧約聖書のアダムとエバの堕落によって、すべての人と物がサタンの側に奪われた状態にあると教えているという。そして、サタンの側にある万物を再臨のメシヤ、文鮮明教祖に導かれて神の側に取り戻すことを目指しているのです。


そして、韓国は神の国であり、日本は、その韓国を植民地として支配したサタンの国。だから日本は金で贖罪し、神の国である韓国を支えなければならないのです。サタンの国、日本の人、金、すべてのものを神の国、韓国側に取り戻すためだから、サタンの国の法律を破っても、良心の呵責を感じなかったと大江氏は語っています。


よくもまあ、こんな教義を考え、それで洗脳できるテクニックはすごいと思いました。そこにはウブな学生を狙うという点が、ポイントなのかもしれません。
 

私たちは1975年以来、韓国へ送金を続けてきた。これは1905年から1945年まで、日本が韓国を植民地支配したことへの贖罪のためだった(p23)

大江氏は文鮮明教祖を尊敬している

大江益夫氏の願いは、1975年の経済活動という名の、霊感商法を含めた日本人から違法に金を奪い取る活動の前に戻ることです。大江益夫氏は、今でも文鮮明教祖を尊敬しているということで、違法でなければ、統一教会の活動を続けていきたいと考えています。


大江益夫氏はとても頭のよい人だと思いますが、この大江氏の一生を通じて洗脳できた仕組みについて興味がわきました。統一教会については調査を続けたいと思います。樋田さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・文藝春秋に掲載された手記に、日本の天皇に扮した幹部信者が文先生に拝跪する儀式の存在を暴露し、右翼を刺激するような筆致で説明していました(p88)


・スポーツ新聞が一面トップで・・文先生が信者と性的スキャンダルを起こしていたという記事でした・・「その新聞社にどんな方法を使ってもいいから記事を抑えろ」というのです。少なくとも、日本の新聞社は金でどうにかなるものではない(p135)


・裁判所では全国弁連側の主張に沿って「信者組織と経済活動は一体のもの」と認定する判決が続いた・・壺や印鑑、多宝塔などの物品販売よりも、まず信者にした上で、高額の献金を求める集金方法に切り替えた(p134)


・数年前に「先祖を幸福に導く先祖解怨・祝福」という信者向けの本が教団側から出版されました・・七代ごとに3万円の献金となっており、それが430代まで続くわけです(p176)


▼引用は、この本からです
「旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録」樋田毅
樋田毅、光文社


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

第1章 出会い
第2章 生い立ち
第3章 早大原理研究会
第4章 川口大三郎君事件
第5章 霊感商法
第6章 幻のクーデター計画
第7章 日韓トンネル事業
第8章 旧統一教会広報部長の時代
第9章 自民党との「絶縁」を求める
第10章 赤報隊事件
第11章 今後の教団について



著者経歴

樋田毅(ひだ つよし)・・・ 1952年、愛知県生まれ。県立旭丘高校卒業、早稲田大学第一文学部社会学科卒業。1978年、朝日新聞社に入社。高知支局、阪神支局を経て大阪社会部へ。大阪府警担当、朝日新聞襲撃事件取材班キャップを務めたのち、京都支局次長、地域報道部・社会部次長、和歌山総局長。朝日カルチャーセンター大阪本部長等を経て、2012~2017年まで朝日新聞社・村山美知子社主の大阪秘書役を務め、同年12月退社。


統一教会関連書籍

Nの肖像 ― 統一教会で過ごした日々の記憶」仲正 昌樹
統一教会の内幕―なぜ若者たちは新宗教に走るのか」エール出版社
統一教会とは何か―追いこまれた原理運動」有田 芳生
統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福」櫻井 義秀, 中西 尋子
「旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録」樋田毅


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