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【書評】「「借金1000兆円」に騙されるな!暴落しない国債、不要な増税」高橋洋一

2026/01/07公開 更新
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「「借金1000兆円」に騙されるな!暴落しない国債、不要な増税」高橋洋一


【私の評価】★★★★☆(89点)


要約と感想レビュー


円安は日本経済全体ではプラス

高市政権となって、アベノミクスならぬサナエミクスという「責任ある積極財政」が注目されています。その一方で、日銀の利上げが進行中です。アベノミクスは、せっかくの積極財政と金融緩和が消費増税で潰されてしまいましたが、今回は日銀の利上げでどうなるのでしょうか。


アベノミクスのブレインともいわれる高橋洋一さんに、金融の基本を教えてもらいましょう。この本は2012年4月、日本では2011年の東日本大震災の復興増税、民主党政権下での更なる消費増税が計画されているときの一冊です。


海外では2008年のリーマンショックによる金融危機で各国が金融緩和し、1ドル80円前後の円高になっていました。日銀は2012年2月に、追加金融緩和策を発表しますが、著者は「日銀の対応が遅すぎる、円高で日本の成長率はますます下がってしまう」と批判しています。


日銀の不作為による円高で輸出企業の業績が悪化し、日本経済は瀕死の状態だったのです。反対に円安になると、輸入価格は割高になりますが、輸出企業の企業業績がよくなり、日本経済全体ではプラスになるのです。10%円高になるだけで、GDPが0.2~0.6%上昇するという。


政府日銀の無策で円高が放置されている。このままでは、生産現場の海外移転がますます進んでしまう(p143)

なぜ日銀は金融緩和したくないのか

著者の主張は「デフレを脱却するために、国債発行と日本銀行の引き受けで金融緩和すること」です。その後のアベノミクスと同じです。他国の金融緩和とのバランスを取って、為替を適切な円安に誘導する効果もあります。


著者が、金融緩和のために国債の日銀引き受けを主張すると、日銀は「それは禁じ手だ」と猛反対。それは禁じ手でもなんでもなく、「毎年日銀は、10~20兆円の国債を直接引き受けている」と著者が日銀の嘘をバラすと、今度は「日本がハイパーインフレになる」というトンデモ論を持ち出してくる始末だったというのです。


当時の日銀の白川総裁は、日本の経済をデフレから脱却させるつもりは全くありませんでした。市場もそれを見抜いていました。


具体的には、物価連動債と普通の国債の利回りの差から、市場のインフレ予想を計算することができます。これは「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」と呼ばれ、白川総裁の5年間は、一貫してBEIがマイナスでした。白川総裁の下では、日本のデフレが続くと市場は見ていたのです。


このように日銀が国債の引き受けを不自然なまでに拒否するのは、「財務省の言うことを聞くのは負け」という単なる劣等感から来ていると元財務官僚の著者は解説するのです。本当だとすれば、悲しいことです。


2025年の「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」は1%程度です。インフレ目標2%には、まだ足りません。こうした状況の中で、日銀が利上げをするのかどうか、注目していきましょう。


戦前も、戦争中も、戦後もずっと、日銀プロパー、いわゆる「民族派」には、財務省の言うことを聞くのは負けだという文化が色濃くあった(p123)

なぜ財務省は増税したいのか

次に、なぜ財務省は増税したいのでしょうか。1997年の消費増税で、結局税収は増えませんでした。デフレの中で、消費税増税は経済を縮小させ、経済と財政破綻に近づくまずい政策と誰でもわかるはずなのです。


実は、元財務官僚の著者にも明確な理由はわかっていないようです。


著者は、増税の例外措置を認めるかわりに、天下りポストを作らせるためだと説明しています。しかし、これは状況証拠で、本質ではない可能性もあります。

 
かつて財務省は格付け会社ムーディーズに「先進国の自国通貨建の国債のデフォルトは考えられない」と主張していました。それなら金融緩和して、円安にして、輸出企業が元気になり、経済水準が上がり、デフレからインフレに移行させ、名目GDPを増やせばいいのに、財務省は「財政破綻」を煽って増税し、経済を縮小させようとしているのです。


さらに、財務省は債務償還費を計上して国債費を10兆円以上増やして、財政赤字の額を大きく見せ、IMFのNo.2副専務理事を派遣して「日本は財政再建が必要だ」とIMFに言わせています。ある新聞社の論説委員が、増税反対の論調を張っていると、その新聞社には国税局の調査が入ったという。


そこまでしてデフレの中で、増税を強行しようとする理由が著者にもわからないのです。


日本を破綻させる方法は簡単だ。今のように低成長にもかかわらず、増税を続ければよい。明日から税率100%ですと言えば、すぐ破綻できる(p149)

日本国債が暴落しない理由

日本の借金1000兆円でも日本国債が暴落しない理由は、資産を無視している数字だからです。当時、日本の借金は1000兆円に対し資産が650兆円で、国の借金は差額350兆円なので、GDP比で70%でしかありません。(イタリアは130%)(現在は連結で、借金1570兆円、資産1050兆円差額は▲530兆円(対前年度末比+54兆円)改善してるじゃありませんか!


ちなみに先進国で借金しまくった例としては、第2次世界大戦後のイギリスで、債務がGDP比で250%前後に達していますが、破綻していないのです。結論としては、G7レベルの国は、戦争に負けない限り破綻しないのです。平時でも平気でデフォルトするギリシャやスペインとはまったく違うのです。


しかしテレビを見ると、多くの人がポジショントークをしています。


どのようなポジションかといえば、財務省は増税したい、投資家には自分の資産を守りたい、学者は自分のポジションと面目を守りたい、評論家は脅かすようなことを言って名前と顔を売りたいなど、裏の意図があるというのです。私たちは誰を信じればいいのでしょうか。


私には財務省は井上準之助の生まれ変わりであり、高橋洋一さんは、高橋是清の生まれ変わりに見えました。その心は、経済とは理論・理屈よりも心理学に近いということです。


元米連邦準備制度理事会(FRB)議長ベン・バーナンキは日本の財政・金融政策を「どうしようもない」と酷評していました。歴史は日本の財政・金融政策を、どう評価するのでしょうか。高橋さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・(国債の)「未達が起きた」と騒ぎ立てる・・・「今回はちょっと高かったですね」というだけの話なのだ(p102)


・経常収支が黒字でなければ国が維持できないということはない・・オーストラリアやカナダのように、経常収支が毎年のように赤字の先進国もあるが・・別に経済危機になっているわけでもない(p40)


・高橋是清は、世界大恐慌の影響を受けてデフレに陥りつつあった昭和7(1932年)年・・大蔵大臣を務めていた。井上準之助の金解禁をただちにやめ、軍事費や困窮する農村向けに手厚い予算を配布したが、そのための財源は、国債を日銀に引き受けさせることで賄った(p157)


・1998年、大蔵省職員だった私は、アメリカのプリンストン大学に客員研究員として赴いた。講義に出ると、ある教授が「日本の財政・金融政策はどうしようもない」と何度も繰り返し教えている・・教授の名前は、ベン・バーナンキ。現在の米連邦準備制度理事会(FRB)議長(p6)


▼引用は、この本からです
「「借金1000兆円」に騙されるな!暴落しない国債、不要な増税」高橋洋一
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高橋洋一 (著)、小学館


【私の評価】★★★★☆(89点)


目次


第1章 誤解や嘘を解くための国債の基礎知識
第2章 格付け会社を信用するな!
第3章 日本はギリシャのように破綻するか
第4章 いま増税すれば日本はこうなる!
第5章 日本再生の経済運営とは


著者経歴


高橋洋一(たかはし よういち)・・・1955年東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員などを経て、小泉内閣の総務大臣補佐官、安倍内閣の内閣参事官(総理大臣補佐官補)などを歴任。現在、嘉悦大学経営経済学部教授、株式会社政策工房代表取締役会長。


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