「ファクトに基づき、普遍を見出す世界の正しい捉え方」高橋 洋一
2023/02/07公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(86点)
要約と感想レビュー
高橋さんの本は、すべて読むことにしているので、手にした一冊です。初見の内容を紹介していきましょう。
ちょっと驚いたのは、将来受け取れる年金の額を通知する「ねんきん定期便」をつくったのは、財務官僚現役のときの高橋氏だという。民間の保険では、契約内容をお客様に定期的に通知しているのですから、年金でも同じことをしただけなのです。それまで「ねんきん定期便」がなかったのは、通知したら役人が適当に管理していた年金が見える化されて困るから、頭のよい担当者はそのような地雷を踏むことはしないのです。役人の論理では、高橋さんはとんでもないことをする危ない人なのかもしれません。
高橋氏はなぜか、官僚からだけでなく立憲民主党などの野党からも嫌われています。議員の勉強会で講師をすることになった時には、立憲民主党の議員から、「レイシズムとファシズムに加担するような人物」と名指しで批判されたのです。これは、ロシアがウクライナをナチスと批判するのと同じで、印象操作でしょう。データを示し、事実を主張することは、一部の人にとっては危険人物に見えるようなのです。
・石垣のりこ議員が、勉強会を欠席してツイッターでこう発言した・・初回の講師は、高橋洋一氏・・私は、レイシズムとファシズムに加担するような人物を講師に呼ぶ研究会には参加できません(p55)
さらに驚いたのは、国家戦略特区についてです。国家戦略特別区域(国家戦略特区)という仕組みがあるのですが、これは民間企業がビジネスをしやすい環境を作るためにワーキンググループ委員(以下WG委員)が民間企業と一緒に、規制官庁と交渉してくれるものです。ところが、加計学園問題と同じように一部のマスコミはWG委員が、賄賂をもらって規制緩和を進めようとしたと決めつけ、偏向報道していたというのです。
具体的には、2019年に毎日新聞が国家戦略特区の提案を検討していた学校法人からWG委員が200万円と会食の接待を受けたと毎日新聞が報道したというのです。本件については、当事者が毎日新聞を名誉毀損で訴え、2022年7月に東京高裁で毎日新聞に220万円の支払いを命じています。実際、2019年9月30日の安倍総理の出席した国家戦略特区諮問会議で八田議員が、「毎日新聞が特区制度に関して誤った報道を続けております・・訂正を求めてまいりました。しかし、何の対応もされず、抗議を行ったことの報道すら未だ行われていませんん」と発言しています。毎日新聞は、オフレコの首相秘書官の発言を報道して、秘書官を解任させており、多角的な活動をしているようです。
・毎日新聞が6月11日付朝刊一面のトップ・・原氏と協力関係にあるコンサルタント会社が、特区の提案を検討していた福岡市の学校法人から200万円と会食の接待を受けたと思わせる内容だ。原氏は、これを事実無根として、毎日新聞を名誉毀損で訴えている(p29)
当時は、「桜を見る会」も疑惑報道が行われていましたが、これも印象操作に近いと説明されています。
「桜を見る会」は民主党政権時代も含めて、これまで60回以上も平穏に開催されてきたもので安倍政権になって1万人が18000人に増えたと批判されていましたが、「1万人がよくて、1万8000人がダメ」という根拠はないのです。前日の安倍首相講演会主催の前夜祭が5000円と安いことを批判しているメディアもありましたが、野党の政治家でも、政治資金集めのパーティでは経費率5000円以下の場合も珍しくはないのです。そもそもホテルと個人との間の取引で処理されており、後援会は介在していないのであれば、政治資金収支報告書には書きようがないのです。
高橋氏が主張するのは森友学園・加計学園問題や「桜を見る会」の問題など安倍政権を倒そうとうする野党勢力とマスコミの疑惑攻撃は、現実と慣行を無視した空論ばかりで、批判のための批判であり、合理的な証拠が出てこないのは当たり前ということなのです。そうした中で、加計学園問題をノンフィクションかのように装った『新聞記者』という映画まで作って、毎日新聞と東京新聞は毎日映画コンクールで日本映画優秀賞や東京新聞映画賞を受賞させています。報道だけでなく、映画も含めた組織の総力を使って、恐ろしい活動が行われているように感じました。
いつもながら、マスコミ報道ではわからない物事の本質を説明していくことに驚きました。高橋さんは今後もフォローしていきます。高橋さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・地方交付税交付金・・・財務省は上から目線で地方業務にあれこれ口出しができる・・徴税コストがなく地方偏在の少ない消費税は、国税ではなく地方税化するのがいい(p191)
・「あいちトリエンナーレ2019」・・「表現の不自由展・その後」・・慰安婦を表現した少女像や、昭和天皇を含む肖像が燃える映像作品など、20数点が展示されていた・・・実行委員会の会長を務める大村秀章・愛知県知事・・・文化庁は約7800万円の補助金を全宅不交付とすることを決定した(p75)
・ヨーロッパの国々の多くは、陸続きで隣接と接しているし、ユーロという共通の通貨も使える・・定住する「所得」に応じた直接税よりも、市場での「消費」に応じた間接税で徴収したほうが合理的・・人が動かなければ所得に課税したほうが確実に徴収できる・・四方を海に囲まれた日本においては、なおさらのことだ(p110)
【私の評価】★★★★☆(86点)
目次
第1章 まかり通る歪んだ議論
第2章 令和元年のフェイクと混乱を振り返る
第3章 消費増税が日本経済にもたらす大打撃
第4章 景気回復の打ち手はあるか
第5章 働き方の未来を読む
第6章 かつてない緊張、安全保障の着地点
第7章 米中覇権争いの行方
終章 2020年代に「不安」と「期待」を寄せて
著者経歴
高橋 洋一(たかはし よういち)・・・(株)政策工房会長、嘉悦大学教授。1955年東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。
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