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「統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる」高橋洋一

2022/05/22公開 更新
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「統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる」高橋洋一


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 高橋洋一さんの本はすべて読もうと思っているので手にした一冊です。東日本大震災の直後の書だけあって、いきなりSPEEDIが公開されなかった経緯解説が面白い。SPEEDIは文科省の天下り先である原子力安全技術センターが100億円以上かけて、気象状況によってどのように放射能が拡散するのか予測するものでした。事故直後、住民を避難させるために、どこが汚染が大きいのか予測できれば、そこを優先して避難させればよいということです。


 驚いたのは、著者が政府や政党(当時は民主党)の関係者にSPEEDIのことを説明し、そのデータを活用して避難地域を決めるように説得していたということです。ところが、政府内ではSPEEDIのデータが「正確か、正確でないか」が議論され、結局、グズグズ議論しているうちに汚染度の測定データが集まってきて、事故直後に活用されることを前提としたSPEEDIの意味がなくなってしまったのです。


 著者は100億円もかけて福島第一原発事故のような重大事故で住民の命を守るために作られたシステムが活用されなかったことに落胆を隠しません。100%正確でなければ動かないという官僚と民主党の政治家に、情けないと思うと同時に、世界の笑いものになったというのが著者の実感なのです。


・原子力安全技術センターというのは文科省の下で独立行政法人になり、前の科学技術事務次官が会長に就任している天下り団体です(p36)


 印象深かったのは、日銀総裁の白川方明氏が2008年のリーマンショックに対する金融緩和が欧米に比べて不足しているのではないかとの批判に対して、反論した内容の解説です。日銀の主張は「日銀のマネタリーベース(日銀が供給しているお金)のGDP比は24.6%で、FRBの17.4%、ECBの11.5%を上回っている」というものでした。


 著者の解説では、元々現金がよく使われている日本では日本のマネタリーベースのGDP比は高かったのです。問題はリーマンショック後のマネタリーベースの増加量が欧米の数分の1ということなのです。このように財務官僚であった著者の手にかかると、素人を馬鹿にしたような官僚の言い訳の欺瞞が明白に説明されてしまうところがおもしろい。経済学については勉強不足で、私には持論を出す力がありませんので、高橋さんの主張の裏を取っていきたいと思います。


・日銀は財務省にコンプレックスがあり、国債を引き受けたり、市場から購入したりすると「負け」と考えてしまう風土があります(p78)


 後半にはAが起こったという条件でBが起きる確率を考える「ベイズ統計」が説明がされています。例えば、マンモグラフィーで陽性となった人がほんとうに乳がんである確率は?実はたったの3%なのです。いかに偽陽性が多いのかということですが、こうした事実を知れば、マンモグラフィーで陽性になっても不安になるのが馬鹿らしいとわかるのですが、学校で教えているのかしら。


 ベイズ統計については応用範囲が広く、私もこれから勉強していきたいと思いますが、このように高橋さんの話はレベルが高く他の本も読んでいきたいと思います。高橋さん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・経産省は組織や委員会の人事を通じて・・・学会に強い影響力を持ちました。これは財務省がやはり各種審議会や委員会の人事を通じて、日銀が寄付等を通じて、学会に御用学者のグループをつくりあげたこととよく似ています(p108)


・ベント遅れを巡っては、当日朝の首相の視察のせいにする東電側と、東電のせいにする官邸・・・ベントをすれば原子炉の放射性物質は空気中に放出されます。これを知っていれば、行けるはずがありません(p112)


・東電には悪者になってもらうが、会社は潰さない・・・日本は本当に資本主義の国なのかという疑問を海外に抱かせるほうが、自由主義経済を標榜する国にとってよほど大きな打撃になるはずです(p119)


・財政当局は、「日本は1000兆円もの借金がある。このままでは国家が破綻してしまう」というキャンペーンを続けています・・・資産が700兆円ある・・700兆円の半分以上は天下り邦人への資金供給(p156)


・厚生労働省の労働保険(労働保険特別会計)・・・「私の仕事館」のような、何の役にも立たないただの天下り団体が作られた・・・保険料を取りすぎて、それが現在5兆円も余っています(p168)


▼引用は、この本からです
「統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる」高橋洋一
高橋洋一、光文社


【私の評価】★★★★★(90点)


目次

第1章 統計・確率思考で世の中のカラクリを見破る
第2章 バランスシート思考で考える東電問題
第3章 シンプル・ロジカル思考で考える復興政策
補講 よくある誤解と間違い



著者紹介

高橋洋一(たかはし よういち)・・・1955年東京都生まれ。数量政策学者。嘉悦大学ビジネス創造学部教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。2008年に退官。菅儀偉内閣では内閣官房参与を務める。


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