「反回想―わたしの接したもうひとりの安倍総理」青山繁晴
2024/09/25公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(95点)
要約と感想レビュー
青山繁晴は安倍元首相のブレーン
青山繁晴さんといえば、テレビのコメンテーターというイメージですが、自民党比例区の参議院議員として2期目となっています。この本でわかるのは、青山さんが新聞記者であった時代から、安倍晋三元首相と政策について議論するブレーンかつ友人であったということです。
著者は安倍さんが暗殺される前から、消費増税や習近平主席の国賓来日を回避するよう提案したり、硫黄島の遺骨未収問題、統一教会の問題について議論していたというのです。例えば、安倍元総理が暗殺される前、統一教会と距離を置くよう提案すると「父親から受け継いだ縁だからさ。切れないよ」と、著者に語ったという。
また、安倍総理は「政治的コストが高いんだよ」が、口癖であったという。憲法第9条から改正することや、尖閣諸島に公務員を常駐させることは、「政治的コスト」を理由にやらないと語っていたという。
わたしは安倍総理に電話し、「総理、習近平主席の国賓来日は、国とアジアを誤ります」と申しました(p236)
憲法改正と慰安婦問題
この本を読むと、安倍総理が語っていた美しい国、戦後日本外交の総決算の意味がわかります。
安倍元首相は、青山さんの護る会で超法規的な措置で過激派を釈放した日本赤軍による日航機ハイジャック事件と、1カ月後のルフトハンザ機のハイジャック武力制圧を例として紹介しました。戦後憲法を改正した国と憲法を改正しなかった国の違いがここにあるというわけです。
だから第一次安倍政権は、国民投票法を制定して、具体的に憲法改正に踏み出したのです。また、第一次安倍政権では、防衛庁をついに防衛省に昇格させ、海洋基本法も制定しているのです。
慰安婦問題についても、河野談話に終止符を打つために、河野談話がどういう経緯でもって形づくられたのか検証し、これは事実の探求ではなく外交的な努力だったと安倍首相は明確したのです。そして、朴槿恵大統領と慰安婦問題の最終解決を目指した慰安婦合意を安倍総理は進めました。裏切られるからと周囲の反対の中、「今度ばっかりは裏切らない気がする」と安倍総理は決断したのです。案の定、裏切られ合意を一方的に反故にされることになるのです。
特定秘密保護法は、まさしく事前に特定秘密に指定した情報だけを守る法であって、外国のスパイ活動そのものは取り締まれません。だからスパイ防止法も依然、必要なんです(p255)
安倍首相辞任の本当の理由
この本で最も興味深いのは、安倍総理の辞任の理由は病気ではないと説明しているところでしょう。青山さんは安倍首相との議論の中で、第一次安倍内閣の崩壊は、宏池会(岸田派)の改憲反対議員に足を引っ張られたと確信したという。安倍首相も頷いたと書いています。
そして宏池会は中国とズブズブであり、官邸の主導権を取られないためにも、高市氏を内閣に入れる必要があると安倍首相は考えていたという。安倍首相は第一次安倍政権を宏池会の親中派に潰されたという経験から、親中派を意識していたことがわかります。その後、安倍首相は暗殺されるのです。
今度は岸田と決まっているんだよ・・・岸田は気が弱いだけで悪い男じゃない。しかし宏池会は悪い。中国ともズブズブだ(p330)
加計学園問題の真相
この本の内容がどれくらい信じられるのでしょうか。私が信ぴょう性が高いと思ったのは、加計学園問題についての記載が正確だったからです。加計学園問題については、多くの日本国民は安倍首相が、加計学園が獣医学部を作れるように無理強いをしたと考えているかもしれません。
この本では、加計学園問題について、参議院予算委員会で当時の愛媛県知事だった加戸守行さんが参考人として証言した内容を紹介しています。加戸愛媛県知事は、愛媛県で獣医の態勢を強化しようと加計学園の獣医学部を愛媛県今治市に誘致しようとしていました。ところが、獣医を増やしたくない獣医師会や、そこから献金をもらった大臣らが文科省と抵抗して実現できなかったのです。
それを打ち破ることができたのは、安倍首相が推進する「国家戦略特区」という仕組みでした。ところが、テレビ・新聞は加戸さんの証言をまったく報道せず、安倍首相が口を出したかのような報道しかしないのです。加計学園問題の真相を、記者はプロなのですから、分かっているはずなのに偏向報道を続けたのです。
報道記者出身の青山さんは、加計学園問題は日本のマスメディアの自殺であり、日本には公正にして自由な報道は存在しないとしています。
加戸さんはのちに「歪められた行政が、安倍総理によって正されたのが事実。それを公開の国会審議で公の当事者として明らかにしても報道しない」と批判・・憤激されました(p214)
LGBT法案の闇
それ以外にも、青山さんだから書ける内容が満載です。あまりに衝撃的な内容で、正しいのかどうかわかりませんが、もう少し調査したいと思います。
2点だけ紹介すると、安倍元首相が暗殺された責任を、警察庁が責任を取るべきだと青山さんが追求すると、警察官僚から「そんなことばかり仰っていると先生のためになりませんよ」と脅されたという。次は青山さんの番ということなのか、それとも別件で逮捕するという意味なのでしょうか。
また、2023年に成立したLGBT法案の背後には、「LGBTへの差別を極左の活動家が利用して、公金の入る利権を作った」のが実態だという。一部の極左組織がLGBT差別解消の組織に衣替えし、活動しているというのです。この点はもう少し調査したいと思います。青山さん、 良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・中国共産党は、表で「憲法改正を企む反動勢力を許すな」と公然と内政干渉することに加えて、自由民主党に対して工作活動を長年、続けています(p110)
・中国は沖縄県石垣市の尖閣諸島の海を日常的に公然と侵し、邦人を何の説明もなく拘束し、靖国神社をめぐって不当に内政干渉し、日本に対しても異様に圧迫を加えています(p236)
・NHKが昭和30年、西暦1955年に放送した軍艦島をめぐるドキュメントで「島で朝鮮半島出身者に強制労働と差別があった」という韓国の真っ赤な嘘を助長している問題・・差別なく一緒に働いていたんですから、平和的な施設が残っているだけ(p299)
・北朝鮮・・拉致問題対策本部は、外務省が仕切っていて、われわれには何も教えてくれないのです・・安倍総理は、対応策として、防衛省から連絡役を拉致対に出し、省庁の垣根を超えて情報を共有するために動き回れるようにしました。ところが、この人物がやがて・・「外務省がドアを開けてくれない」と涙を流されました(p146)
【私の評価】★★★★★(95点)
目次
一の壺
二の壺
三の壺
四の壺
五の壺
六の壺
七の壺
八の壺
九の壺
十の壺
十一の壺
十二の壺
十三の壺
十四の壺
十五の壺
十六の壺
十七の壺
十八の壺
十九の壺
二十の壺
著者経歴
青山繁晴(あおやま しげはる)・・・神戸市生まれ。慶應義塾大学文学部中退、早稲田大学政治経済学部卒。共同通信記者、三菱総合研究所研究員、独立総合研究所代表取締役社長・兼・首席研究員を経て、現・参議院議員(二期目)。ほかに現職は、東京大学学生有志ゼミ講師(元非常勤講師)、近畿大学経済学部客員教授。作家
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