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「アメリカはなぜ安倍晋三を称賛したのか」古森 義久

2024/09/30公開 更新
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「アメリカはなぜ安倍晋三を称賛したのか」古森 義久


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

靖国参拝で孤立する安倍首相

安倍首相は海外から「自由で開かれたインド太平洋構想」の提唱者として高い評価を得ています。長年ワシントン特派員として活動した著者から安倍首相の思い出を教えてもらいましょう。


まず、第一次安倍内閣では、安倍首相が靖国参拝したことについて、民主党オバマ政権が、参拝に「失望した」とコメントしたときが一番厳しい時期でした。そもそも靖国参拝は、1985年中曽根首相が靖国神社公式参拝したことに左翼勢力が朝日新聞を利用して、反対キャンペーンを行い、中国政府も連動して参拝反対を主張し始めたと著者は説明しています。


この左翼勢力は、鈴木善幸内閣では日本の教科書が日本軍中国「侵略」を「進出」に書き換えたと報道し、中韓両国に首相が謝罪しましたが、実は書き換えはなかったという事件に関連していたという。


また左翼勢力は、1990年代の慰安婦問題を作り上げ、宮澤喜一内閣は事実関係をよく調べないまま、河野氏が韓国側に謝罪し、日本軍が女性たちを強制連行していたという虚構をなかば事実として認める発言さえしたのです。日本の軍隊や政府が一般女性を集団で強制連行し、売春を強制していたとする左翼勢力の主張には根拠がないことが判明しています。


アメリカでは民主党関係者は左翼勢力の主張に連動する傾向にありますが、共和党系の議員や専門家は靖国問題は中国の日本封じ込めの手段にすぎないと理解していたという。


靖国問題・・われわれは中国政府が東アジア地域のアメリカの同盟諸国同士の見解の相違を悪化させ、悪用しようとすることを黙認すべきではない(共和党議員マルコ・ルビオ)(p171)

アメリカでの中国系組織の工作活動

アメリカでは中国・韓国系の勢力が、中国や韓国の対日非難に呼応して、従軍慰安婦問題、南京大虐殺、731部隊など日本の犯罪を誇張し、虚構も加え、日本を糾弾し、攻撃してきたというのです。具体的には中国系住民によって結成された「世界抗日戦争史実維護連合会」が日本の国連安保理常任理事国入りに反対する大キャンペーンを展開したり、「ザ・レイプ・オブ・南京」を宣伝していたという。


また、1990年代に韓国系の「ワシントン慰安婦問題連合」が設立され、日本の朝日新聞を道具に使う左翼勢力と連携し、慰安婦問題を政治化する大規模な活動をしていたという。さらに、中国系団体に支援されたマイク・ホンダ議員は、「日本の軍や政府が一般女性を強制連行して売春を強制した」という決議案を下院に提出、決議させました。安倍首相は、強制性を否定しましたが、慰安婦問題や安倍首相を批判する報道が続いたのです。


こうした反日活動に対し、日本政府は沈黙を守ることが通例でしたが、安倍首相だけは明確に事実と違う点を明確に説明しようとしたのです。左翼勢力の攻撃が安倍首相に集中することになったのは、必然なのです。


ニューヨーク・タイムズは安倍叩きで知られるノリミツ・オオニシ東京支局長の記事で安倍発言を「安倍首相が性的奴隷への日本軍の役割を否定した」」という趣旨で報じました(p121)

特定秘密保護法・安保法制の反対派の正体

安倍首相は第二次政権で特定秘密保護法、平和安全法制を成立させました。特定秘密保護法は「スパイ天国」と言われる日本の現状に、スパイ防止法に準じるものとして制定されました。また、平和安全法制は、日本の集団的自衛権の行使を限定的に認めるものです。ロシアのウクライナ侵攻も、ウクライナがNATOに入って集団的自衛権で守られていればロシアの侵攻はなかったはずなのです。


こうした安倍首相の日本の安全を確実にしようとする取り組みは、「戦前の軍国主義の復活だ」「日本が侵略戦争をはじめる」「徴兵制が始まる」「言論の自由が弾圧される」という左翼勢力の攻撃にさらされました。


例えば、特定秘密保護法案への反対派は「マスコミが委縮する」と主張していました。安倍首相は「(歪曲報道ばかりの)「日刊ゲンダイを買ってみなさい」と言いたかった」と発言しています。また、民主党のブレーンである法政大学の山口二郎教授は、安保法制を審議する国会前で、「安倍に言いたい、お前は人間じゃない!たたき斬ってやる!」と発言しています。


こうした反安倍活動は組織的に行われており、こうした手法は中国の反日教育や反日活動と類似性があるように感じるのは私だけでしょうか。こうした過激なプロパガンダの結果として、中国の日本人学校生が襲われたり、安倍首相は暗殺されるわけです。


共産党と社会党とそれに連なる左傾マスコミの政治戦術としての「国家は悪」とするプロパガンダの影響。安倍晋三氏はまさにこの種の左翼の宣伝と正面から戦ったわけです(p266)

自由で開かれたインド太平洋構想

安倍首相が評価されるようになったのは、共和党トランプ大統領との親密な関係を構築できたからです。トランプ大統領は、「安倍さんはすばらしい男だ」「シンゾーと私とは波長が合う」と発言しています。著者も、なぜトランプと安倍首相が親密になれたのか不思議であり、理由はわからないというのです。


ただ、事実としてトランプ大統領は、対中政策として「自由で開かれたインド太平洋構想」を推進しました。インドやオーストラリアと連携し、中国包囲網を構築したのです。安倍首相は、これからはインド・太平洋の世紀であり、自由、民主主義、人権、ルールに基づく秩序を、日本とアメリカは一緒になって作っていくと主張し、アメリカの賛同を得ることに成功したのです。


ここからは私見になりますが、安倍首相は中国の危険性と対策の必要性を言い続けてきたのだと思います。そして、中国のAIIB設立や南シナ海軍事化の動きにやっとアメリカの政府関係者が危機感を持ったときに、中国に厳しい見方をする共和党トランプ大統領が登場し、安倍首相と意気投合したと推察します。


下院外交委員長のマイケル・マコール議員が「いまや日米同盟も、アメリカと日本のそれぞれの中国への政策も、安倍晋三首相が示した路線を着実に進んでいますね」と語った(p3)

左翼メディアはいまも健在

著者の安倍氏の暗殺についての疑問は、なぜ安倍氏の背後の警備がゼロだったのか、2発目の銃撃までの3秒ぐらいの間に、なぜ警護側は安倍氏の身体を守ろうとしなかったのかということです。しかし、もう安倍首相は戻ってきません。左翼勢力と戦った安倍首相は暗殺されたのです。


左翼勢力といえば、実は北朝鮮政府が日本人を日本国内で組織的に拉致していたという事実は、かなり早い時代から日本側の一部で知られていたという。しかし左翼メディアの多くは「拉致などない。北朝鮮に対して非難をするのはとんでもない。朝鮮民族への蔑視や偏見だ」という反応が強かったという。


左翼メディアはいまも健在なのだと思いました。最近は本のソムリエは、テレビや新聞を見なくなりました。古森さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・中国政府は長年、日本の首相の靖国参拝をまったく問題にしなかった・・その中国共産党政権がいま日本の首相の靖国参拝を非難するのは日本に対して優位に立ち、支配権を取得するための手段なのだ(ペンシルベニア大学アーサー・ウォルドロン名誉教授)(p175)


・中国側は近年も一貫して「日本軍は合計35万人ほどの非武装の民間中国人を虐殺した」と非難します。一方、その当時の南京市の総人口が20万人ほど・・日本政府は一切、沈黙を保ったままでした(p75)


・ノーベル文学賞受賞の作家、大江健三郎氏・・「日本の自衛隊は軍隊であり、憲法に違反しているから、全廃しなければならない・・」・・「防衛大学生は日本の青年の恥だ」とも繰り返し述べていました(p263)


▼引用は、この本からです
「アメリカはなぜ安倍晋三を称賛したのか」古森 義久
古森 義久、産経新聞出版


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

第一章 安倍晋三を賞賛したアメリカ
第二章 米国製憲法との戦い
第三章 アメリカで始まった安倍攻撃
第四章 中国系反日組織とNYタイムズ 米慰安婦報道
第五章 「失望」だけではなかった 首相靖国参拝
第六章 歓迎されたナショナリズム
第七章 日米関係の黄金時代
第八章 安倍晋三の「遺言」 核抑止・憲法改正・財政法



著者経歴

古森義久(こもり よしひさ)・・・産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。国際問題評論家。1941(昭和16)年3月、東京都生まれ。1963年、慶應義塾大学経済学部卒業後、米国ワシントン大学留学。毎日新聞社入社。サイゴン支局長、ワシントン特派員などを経て、1987年に産経新聞社入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長などを歴任し、2013年から現職。


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