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「教養としてのアメリカ大統領選挙」神野正史

2024/10/23公開 更新
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「教養としてのアメリカ大統領選挙」神野正史


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー


国際秩序が弱体化すると戦争が勃発する

タイトルは「アメリカ大統領選挙」ですが、覇権国家の歴史を学ぶ内容となっています。そして、著者の言いたいことは、「覇権国家や国際秩序が弱体化すると戦争が勃発する」という歴史から導かれる法則です。


例えば、宗教対立の三十年戦争後のウェストフェリア体制による平和は、国家の主権を認めた国際法の元祖ともいえる多国間のウェストフェリア条約で達成されました。しかし、自由と平等を掲げるフランス革命で絶対君主が倒されると、革命を阻止したい周辺諸国とのナポレオン戦争が勃発するのです。


ナポレオン戦争後のウィーン体制もビスマルク体制に移行した後、ビスマルクが辞任してしまうと、その後の第一次世界大戦に突入してくことになるのです。第一次世界大戦後のアメリカ、イギリス、フランス主導のベルサイユ体制も崩壊して、第二次世界対戦が起こります。


アメリカ合衆国、ソ連、イギリスによるヤルタ体制も、ソ連崩壊からアメリカだけが覇権国家となりましたが、そのアメリカの国力が低下してきた今、紛争の増加は避けられないと予想できるのです。


国際情勢が不安定になるのは、その時代を牽引していた覇権国家が弱体化したときです(p2)

欧米人の特徴

面白いのは歴史から見る欧米人の特徴でしょう。欧米人の特徴は、正論と武力です。つまり、正論やルールを押し付け、最後は武力で解決するのです。これは欧州で殺し合いを続けてきた欧米人の知恵なのです。


中国の「孫子」では完全包囲の愚を戒めています。日本でも敵を殲滅する事例は少ないのです。ところが、欧米では、クラウセヴィッツの殲滅戦争理論のように、如何にして敵を完全包囲、殲滅するかを目的とするのです。


また、正論やルールは自分に都合の良いときは適用し、不都合となるとルールを変えたり、無視します。例えば、日本が国連憲章に「人種差別撤廃」条項を加えるよう要求したとき、投票結果は賛成11・反対5となりました。ところが、議長だった米国ウイルソン大統領は「重要案件は全会一致でなければならない!」とここまで議案は「多数決」だったのに、突然のルール変更で否決するのです。


自国の利益ために使えるものは何でも使うというのが、欧米の本質であるというわけです。


国家であろうが個人であろうが、ことさら"正論"を振りかざす者は、その腹の底に"悪意"を隠している(p42)

アメリカ大統領選挙の法則

アメリカ大統領選挙については、共和党と民主党が2期8年ごとに交代するという法則があります。ただし、例外として相当に無能な大統領は1期で終わるという。ということは、1期で終わったトランプ大統領は、よほど無能であったということになるのです。


平時・緩和の共和党、戦時・緊張の民主党という法則もあるようですが、共和党ブッシュ大統領がアフガニスタン戦争やイラク戦争をはじめており、すべて法則どおりはいかないようです。


著者がいうとおり、歴史から何を学び取ることができるか考えることは楽しいものです。試験のためではなく、自分のために歴史を学びたいものです。神野さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・アメリカに移民してきた人々・・ほとんどは食い詰め浪人・破落戸(ならずもの)・お尋ね者・盗賊・極道といった輩で占められており、彼らの目的は「新大陸で一攫千金」でした(p18)


・満州を押えたロシアが、次に狙うのは朝鮮であることは明らかでしたし、そうなれば次に狙われるのは日本です(p53)


・民族自決・・合衆国の意図するところは、戦前まで欧州において多民族帝国として君臨していたロシア・オーストリア帝国を解体すること(p81)


▼引用は、この本からです
「教養としてのアメリカ大統領選挙」神野正史
神野正史、秀和システム


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次


第1章 二大政党制の成立
第2章 覇権国家への野望
第3章 覇権国家への道
第4章 狂騒の20年代
第5章 冷戦時代
第6章 ポスト冷戦
第7章 そして現代



著者紹介


神野正史(じんの まさふみ)・・・元河合塾世界史講師。YouTube神野ちゃんねる「神野塾」主宰。学びエイド鉄人講師。ネットゼミ世界史編集顧問。ブロードバンド予備校世界史講師。1965年名古屋生まれ。立命館大学文学部西洋史学科卒。自身が運営するYouTube神野ちゃんねる「神野塾」は人気講座。また「歴史エヴァンジェリスト」として、TV出演、講演、雑誌取材、ゲーム監修などもこなす。


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