【書評】「謀略と捏造の二〇〇年戦争 釈明史観からは見えないウクライナ戦争と米国衰退の根源」馬渕睦夫, 渡辺惣樹
2025/11/03公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
要約と感想レビュー
Deep State(世界政府)は存在するのか
元外務官僚の馬渕さんと、日米関係の歴史を研究している渡辺さんの対談です。
馬渕さんの主張は、「国際金融資本」や「軍産複合体」つまり「ネオコン」や「グローバリスト」の勢力が世界をコントロールしているというものです。
一方、渡辺さんは、「国際金融資本」や「軍産複合体」、「ネオコン」や「グローバリスト」は存在するものの、それぞれの勢力が自分の利益の最大化、自分の思想信条に従って動いた結果、イワシの群れのようにあたかも「Deep State(世界政府)」のように見えているだけだと主張しています。
例えば、ナポレオン戦争では、ロスチャイルドなどのユダヤ国際金融資本が、各国政府に戦争資金を貸し付け、大きな利益を得ています。
しかしそれは、どちらが勝っても損をしないように国際金融資本がリスクをヘッジのために両勢力に資金提供していただけというのが渡辺さんの意見なのです。
チャーチルにしても金融資本家にしても一匹のイワシで、実際は、各自利益の最大化をはかるために懸命に泳いていたのです(渡辺)(p116)
ウクライナ戦争の本質
馬渕さんは「ウクライナ戦争」は、国際金融資本家が、ロシアをグローバル経済に組み込もうとしたために起きたとしています。国際金融資本とアメリカのネオコンが、旧ソ連圏の国々で「カラー革命」で政権を傀儡化し、自由貿易圏を広げようとしたのです。
それに対しプーチンは、国際金融資本に支配されたロシアではなく、ロシア人が支配するロシアを選んだというのです。したがって、「ウクライナ戦争」の本質は「国際金融家vs.ロシア」の最終戦争であるというのが馬渕さんの理解なのです。
日本が中国満州に進出したとき、日中戦争が続きましたが、アメリカが蒋介石を裏から援助して日本と戦わせていました。今はアメリカがゼレンスキーを援助して、ロシアと戦わせているのです。
プーチンは世界統一を目指す欧米支配層を「悪魔崇拝者」とかなり強い口調で切って捨てました(馬渕)(p244)
国際金融資本の影響力
国際金融資本が政治を動かしているというのは、ある意味、事実でしょう。例えば、アメリカ大統領候補選出には、資金とメディアを支配している国際金融資本が決定的影響力を持っています。トランプ大統領は例外的存在なのです。
馬渕さんの説明では、アメリカの南北戦争も、アメリカを分断したいイギリスがアメリカ南部からの綿花輸入を禁止し、不満を持った南部アメリカに、連邦から離脱して独立国となるよう煽動工作を行った結果だという。(ほんまかいな)
昔の話になりますが、マルクスの共産主義研究に資金援助をしたのは、ロスチャイルド家だという。また、ロシアのユダヤ人を解放するために、ユダヤ系国際金融資本はロシア革命に資金援助していました。ロシア革命政権の指導部は、8割がユダヤ人だったのです。
戦争は商売になる・・イギリスの軍需品買い付けを一手に任されたモルガン商会が巨利を得る・・それが戦後バレたからこそ、中立法が制定され、交戦国への軍需品の輸出を禁じました(渡辺)(p229)
メディアを通して世論を誘導する
馬渕さんが主張するように国際金融資本と軍産複合体が、ある程度力を持っているのは事実なのでしょう。国際金融資本はお金の力で各国政府に望む外交や内政をとらせ、所有するメディアを通して世論を誘導するのです。
国際金融資本は利益の最大化のため、「規制緩和」「民営化」「グローバルリズム」を推進し、最近では「脱炭素」も仕掛けていると馬渕さんは説明するのです。
私はどちらかといえば、渡辺さんのほうが現実に近いのではないかと思いました。財力、影響力を持つ幾つかの勢力が、それぞれの利益を最大化しようと行動し、その結果、歴史が作られるのです。
馬渕さん, 渡辺さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・第二次世界大戦中にも英米は日本人の捕虜を虐殺していました・・バターン死の行進は虐待でも何でもありません。長距離をゆっくり移動しただけのことです。原爆投下という未曽有の虐殺を糊塗するために、日本軍の行為をどうしても非道に宣伝する必要に迫られた(馬渕)(p71)
・「ペトロダラー(ドルベースの資源取引)システム」というのは、ニクソンショック後に、金とのリンクが外れたドルの信用を支えるために、ドルと石油取引とをリンクさせたものです。これを考案したのはニクソン政権時に国務長官だったヘンリー・キッシンジャーです(渡辺)(p221)
・アメリカの南北戦争において、北軍側にロシアが加担した(馬渕)(p28)
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馬渕睦夫, 渡辺惣樹 (著)、徳間書店
【私の評価】★★★☆☆(77点)
目次
第一章 国際金融家vs.ロシア二〇〇年戦争
第二章 ナポレオンと「哲人政治」の本流
第三章 ヨーロッパを脅かした新興国アメリカ
第四章 世界大戦を仕掛けたチャーチルの闇
第五章 操り人形ウィルソン大統領の大罪
第六章 ドイツの英雄だったヒトラー
第七章 仕組まれたアメリカ解体が生んだトランプ
第八章 プーチンは誰と戦っているのか
第九章 二〇〇年戦争の行方
著者経歴
馬渕睦夫(まぶち むつお)・・・元駐ウクライナ兼モルドバ大使、元防衛大学校教授、前吉備国際大学客員教授。1946年京都府出身。京都大学法学部3年在学中に外務公務員採用上級試験に合格し、1968年外務省入省。国際連合局社会協力課長、文化交流部文化第一課長等を歴任後、東京外務長、(財)国際開発高等教育機構専務理事などを務めた。
渡辺惣樹(わたなべ そうき)・・・日本近現代史研究家。ソーワトレーディング代表。1954年静岡県下田市出身。1977年東京大学経済学部卒業。カナダ・バンクーバー在住。英米史料をもとに開国以降から太平洋戦争開戦までの日米関係史を研究している
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