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【書評】「コミック版ザ・ゴール4: 在庫管理の魔術」エリヤフ・ゴールドラット

2025/10/31公開 更新
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「コミック版ザ・ゴール4: 在庫管理の魔術」エリヤフ・ゴールドラット


【私の評価】★★★★☆(86点)


要約と感想レビュー


売れた分だけ倉庫から補充する

エリヤフ・ゴールドラット氏の「「ザ・ゴール」シリーズ 在庫管理の魔術」のマンガ版です。ストーリーもほぼ同じ。何カ月分もお店に在庫を抱えているのに,欠品を起こす商品があとを絶たないアパレルチェーン店が舞台です。


そのお店で、水漏れにより倉庫が使えなくなることからドラマははじまります。やむなくお店に在庫を20日分だけ残し、すべての在庫を地域倉庫に戻すのです。さらに、お店の倉庫が使えないので、商品1個単位で売れた分だけ、地域倉庫から補充することにしました。


するとどうでしょう!欠品が減ったので、売上が20~30%増えたのです。仕入れコストは販売価格の半分なので、売上増の半分がまるまる利益増となり、利益率は3倍の17%となったのです。


投資収益率は・・・利益率が他の店のだいたい三倍・・それで在庫が4分の1だから・・今までの10倍以上!(p82)

部分最適が在庫と欠品を増やす

欠品の原因は、組織が大きくなると部門の責任者が「部分最適」ばかり考えるうになるからです。


「部分最適」のお店では「欠品しないように店舗で在庫を確保するため発注できるだけ発注する」のです。


「部分最適」の輸送部門は輸送費を下げるために、「まとめて送る」のです。


「部分最適」の購買部門は安く仕入れるために、「大量に仕入れて値段を下げる」のです。


その結果、売れる商品の在庫が尽きても補充できない。仮に中央倉庫に在庫があっても、必要な店舗に商品を送れない。お店の在庫がなくなっても、すぐ補充できないということが起こるのです。全体最適を考えず、そんなバカなことをやっている会社があるのか?と思われるかもしれませんが、実はあるのです。


店長の「思い込み」それは在庫は「店舗」にできるだけ多く確保する・・だが本当に店舗に必要な在庫は「商品が次に補充されるまでに売れる分」だけなんだ(p120)

単品管理・小口配送

在庫管理の魔術とは、コンビニのように単品管理・小口配送を行い、売れただけ補充することです。さらに、単品で在庫管理をして、信号機のように在庫量を「青」「黄」「赤」で見える化します。


そして、常時「赤」の商品は予想よりも売れ行きが良いので、目標在庫量を上げて多めに発注します。つまり商品別に在庫量を最適化するのです。コンビニのように近くに倉庫があれば、毎日2,3回、売れた分だけ配送することで、在庫は限りなく減っていくのです。


ゴールドラット社では、在庫コンサルだけで稼ぐのではなく、こうした在庫最適化システムを販売することでも稼いでいるようです。ソフトウエアと一緒に管理方法を売るというのが、最近のコンサルの稼く方程式なのでしょう。


「バラツキ」の大きい店舗に在庫を押し込むから,ある店舗では欠品,ある店舗では過剰在庫という状況が起きる・・これを「在庫の偏在」と言う(p229)

発注から納品までのリードタイム短縮

最後の在庫管理の魔術は、製造メーカーからいかに短納期で商品を納入してもらうのかということです。つまり、社内内部の在庫の最適化は簡単にできても、社外への発注から納品までのリードタイム短縮は難しいのです。


この本では、アパレルの例として、材料である染色布を買っておくという解決策を紹介しています。つまり、欲しい商品をメーカーからすぐに仕入れるために、素材を買ってメーカーに提供するのです。メーカーとしては、仕入れリスクがないので、ありがたいことでしょう。


在庫管理のプロからすれば当たり前のことのように感じるかもしれませんが、「部分最適」の事例は現場では多くあります。在庫に限らず、全体最適を考え、ボトルネックを改善していきたいものです。 


ゴールドラットさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・POSデータを活用して「売れた分だけ」補充すればいいんだ!(p37)


・「供給時間が一日」だとちゃんと認識したらどうなる?・・在庫は20日分もいらない(p130)


・「店頭」と「中央倉庫」,どちらが予想が当たるか?・・・中央倉庫のほうが「バラツキ」は小さいので予想が当たる確率は高くなるのだ(p228)


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「コミック版ザ・ゴール4: 在庫管理の魔術」エリヤフ・ゴールドラット
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エリヤフ・ゴールドラット (著)、ダイヤモンド社


【私の評価】★★★★☆(86点)


目次


第1章 在庫は持つべきか、減らすべきか
第2章 在庫と売上げの「謎」
第3章 とにかく在庫を細かく動かせ
第4章 「少ない在庫」が儲けを生む
第5章 倉庫の言い分、店舗の言い分
第6章 現場の「思い込み」を塗り替えろ
第7章 「正しい場所」に在庫を置く
第8章 「本当のWin‐Win」を考える
解説 ゴールドラット博士からの9つの質問


著者経歴


エリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu M. Goldratt)・・・1947年生まれ。イスラエルの物理学者であり、カリスマ的経営コンサルタントとしても知られる。1984年に出版されたビジネス小説『ザ・ゴール』は、全世界で1000万人以上が読んだ大ベストセラーとなった。その中で説明した管理手法をTOC(Theory of Constraints:制約理論)と名づけ、その研究や教育を推進する研究所を設立した。その後、TOCを新しい会計方法(スループット会計)や一般的な問題解決の手法(思考プロセス)へと発展させ、生産管理やサプライチェーン・マネジメントに大きな影響を与えた。2011年没。


在庫管理関連書籍


「トヨタ生産方式の逆襲」鈴村 尚久
「「ザ・ゴール」シリーズ 在庫管理の魔術」エリヤフ・ゴールドラット
「世界一わかりやすい在庫削減の授業」若井 吉樹
「改訂版 データ分析できない社員はいらない」平井明夫
「ソニー中村研究所経営は「1・10・100」」中村 末広


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