「ゴールドラット博士のコストに縛られるな! 利益を最大化するTOC意思決定プロセス」エリヤフ・ゴールドラット
2022/03/02公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
スループットとは粗利益
スループット会計について学びたいと思って手にした一冊です。この本を読んでみて、私のスループット会計のイメージは、京セラのアメーバ経営の採算の計算方法とほぼ同じでした。頭の良い人が考えると、結論は同じになるのでしょう。まず、意思決定のためには正しい情報が必要ですが、いわゆる税務会計は経営者に正しい情報を与えてくれませんので、別の会計が必要なのです。
例えばスループット会計では、製品在庫の価値は部品代の額だけを計上します。ところが税務会計では、製品在庫の価値は税金を多く取るためだと思いますが、労務費や設備の減価償却費などを加えた製造原価で計算すること多いのです。在庫に労務費や設備の費用などを計上すると売れてもいないのに資産として利益計上されてしまいます。その結果、在庫を増やせば、税務会計上の利益は増え続けるのです。
スループット会計のスループットとは、そうした在庫増による利益増を排除した、あくまで製品だけの粗利益だと理解しました。つまり売上から変動費だけを差し引くのです。税務会計とは別にスループット(粗利益)を把握しなければ、正しい経営判断ができないのです。
大野耐一氏にお会いした時、氏は、いかにコスト会計とずっと闘ってきたのかを私に説明してくれました(p81)
人件費は固定費
驚いたのは固定費である人件費や、設備の減価償却費を含めた製造原価と外注を比較して、外注のほうが安いので外注を増やしている会社が多いという指摘です。固定費である人件費や設備の減価償却費は外注しても変わらないのですから、売上から変動費だけを引いた粗利と外注コストを比較しないとまずいですよね。皆さん、わかりますか。
びっくりしたのはそのような明らかに間違った経営判断で、アメリカでは外国へ製品製造を委託していったというのです。ところが固定費は変わらないから、残った製品の製造原価はどんどん上がって、さらに海外に製造を移転して、アメリカには工場がなくなってしまったのです。そこまで頭の悪い人ばかりではないと思うのですが、本当なのでしょうか。
全体的に文章ばかりで論文のような内容で一般の人にはわかりにくいのではないでしょうか。図表があれば、少しは理解の一助になると思いました。とはいえ、アメーバ会計というか固定費と変動費をわけて考えるという基本を思い出させてくれる一冊で、頭の体操によいと思います。ゴールドラットさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・インフォメーションとは、意思決定のために必要とされるデータ(p7)
・製品のライフサイクルが2年未満という環境の中、3カ月から6カ月分もの在庫を抱えてビジネスを行っているというのが、今日の多くの企業の実態です(p39)
・(スループット会計での在庫には)付加価値、さらには直接労務費さえも付加されることはありません。これは従来の在庫の評価方法とは大きくことなります(p31)
▼引用は、この本からです
エリヤフ・ゴールドラット、ダイヤモンド社
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
1 企業のゴールと三つの尺度
2 コストワールドの落とし穴
3 スループットワールドの意思決定プロセス
4 インフォメーション・システムを構築する
著者経歴
エリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu M. Goldratt)・・・イスラエルの物理学者。1948年生まれ。『ザ・ゴール』で説明した生産管理の手法をTOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)と名づけ、その研究や教育を推進する研究所を設立した。その後、博士はTOCを単なる生産管理の理論から、新しい会計方法(スループット会計)や一般的な問題解決の手法(思考プロセス)へと発展させ、アメリカの生産管理やサプライチェーン・マネジメントに大きな影響を与
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