「コミック版 ザ・ゴール3 チェンジ・ザ・ルール!」エリヤフ・ゴールドラット, 岸良 裕司
2023/04/14公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
DXの課題
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の課題を指摘した一冊ということで読んでみました。DXとは、「デジタルによる仕事の革新」ですが、実は仕事の革新がなければ、システムを導入しても成果が上がらないケースが多いというのです。この本では、基幹システムを導入した会社でシステム導入によるメリットを計算しようとするところからストーリーがはじまります。
通常、メリットとしては売掛金の回収時間短縮、仕入れコスト削減、在庫の減少、欠品減による売上増加などが考えられますが、明確に関連づけることができるのは在庫と欠品の減少くらいでしょう。このように仕事のやり方を変えずに、システム導入による効率化だけでシステム導入費用を説明しようとすると苦しくなるのです。実際、DXということでシステム導入したものの何も変わらなかったという会社が多いのではないでしょうか。
現場の働き方が変わらなければそれらは「無意味」なのです(p101)
仕事の仕組みを変える
この本が良い事例として紹介するのは、ロットを小さくしてリードタイムを短縮することができた会社です。ところが単純にリードタイムを短くすると、製造現場の仕掛品が増え、個別の製品の納期管理が難しくなり、現場が混乱するケースが多いのです。
仕掛品(在庫)を適正量とするためには、材料を必要な分だけジャストインタイムで引き取る仕組み(かんばん)が必要となります。また、個別の製品の納期管理を行うために、納期の余裕(バッファー)の見える化も必要となります。こうした対策をシステム化することで、リードタイムの短縮が実現できるのです。システム化が先にあるのではなく、リードタイムを短くする仕事の仕組みの革新が先にあるから、成果が出るわけです。
「リードタイム」が短縮できれば他社との競争で優位に立てる(p70)
ゴールドラット博士とトヨタ生産方式
ゴールドラット博士が創業したコンサル会社ゴールドラットグループは、私の理解ではトヨタ生産方式の秘密を欧米社会に伝えてきた会社です。ジャストインタイム、かんばん、ムダの排除といったトヨタ生産方式の考え方を、欧米人が理解しやすいようにボトルネックやドラム・バッファー・ロープといった理論にまで昇華させ、欧米で広めていったのです。
トヨタ生産方式を形だけ導入してもうまくいかないと、よく言われていますが、システムを導入しても仕事のやり方を変えなければ何も変わらないのです。DXの課題と本質を指摘する一冊ということで、素晴らしいと思いました。ゴールドラットさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・早く投入すればするほど・・現場は仕事であふれかえってしまい混乱する(p80)
・仕事の緊急度が赤・黄・緑の色であらゆる現場で示されれる(p92)
▼引用は、この本からです
エリヤフ・ゴールドラット, 岸良 裕司、ダイヤモンド社
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
第1章 窮地のCEO-「見える化」という幻想
第2章 システム導入の本質-企業のはなにか「制約理論」で見えてくる真実
第3章 解決できない問題の正体-変革の動力となる「ドラム・バッファー・ロープ」と「バッファーマネジメント」
第4章 企業変革のヒントー「個別最適」が「全体最適」に自然と変わるルールを作れ
第5章 部分最適の罠-なぜ、アンバランスな在庫が生まれてしまうのか
第6章 チェンジ・ザ・ルール!-変えるのは仕組みではなく「文化」
著者経歴
エリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu Goldratt)・・・イスラエルの物理学者。1948年生まれ。トヨタ生産方式の生産管理の考え方をTOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)と名づけ、研究所を設立。TOCを普及させるために、ゴールドラット・グループを創設。その後、TOCを単なる生産管理の理論から、新しい会計方法(スループット会計)や一般的な問題解決の手法(思考プロセス)へと発展させ、アメリカの生産管理やサプライチェーン・マネジメントに大きな影響を与えた
岸良裕司(きしら ゆうじ)・・・1959年生まれ。株式会社Goldratt Japan CEO。全体最適のマネジメントサイエンスであるTOC(Theory Of Constraint:制約理論) をあらゆる産業界、行政改革で実践し、活動成果の1つとして発表された「三方良しの公共事業」はゴールドラット博士の絶賛を浴び、07年4月に国策として正式に採用される。
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