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「組織をダメにするのは誰か?職場の問題解決入門」岸良裕司

2025/02/19公開 更新
本のソムリエ
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「組織をダメにするのは誰か?職場の問題解決入門」岸良裕司


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー


「全体最適」の答え

本のソムリエは、30歳の頃、数百億円の修繕費を主管している上司に「仕事をする上でもっとも大切なことは何ですか?」と質問しました。その上司は少し考えて「全体最適だな」と答えました。


本のソムリエはそれからの20年以上、「全体最適」とは具体的にどういうことなのか、どう仕事に反映すべきなのか、考え続けてきたのです。


この本はゴールドラットという外資系経営コンサルティング会社の実際の現場で使われた「全体最適」の手法が説明されています。私が考え続けてきた全体最適の答えが、この本にまとまっているのです。


実話をベースにしている・・マツダ、TATA、オムロン、パナソニック、P&G、国土交通省、三菱重工、三菱電機、ボーイング、米国国防総省、防衛省などで目覚ましい成果を出した(p10)

仕事の見える化

素晴らしい点は、ゴールドラットが成果報酬型のためか、成果が出やすい施策を提案していることでしょう。例えば、受注から納品まで13週間であった商品を、1~3日で納品してしまうことで、在庫削減と短納期を実現する。


遅れるプロジェクト管理では、関係者全員が参加するワークを通じて、部門別の余裕(サバ)を集めて全員で余裕(サバ)として共有する。


仕事が見える化されていなければ、担当者別に準備状況、作業内容などを把握して、誰がボトルネックになっているのか明確にして、上司は課題があれば支援する体制を作る。


一つひとつ手法は違いますが、合理的かつ具体的な対応策が提案されているのです。


標準リードタイムは13週間だが・・緊急の場合は1日、たいていの場合は3日間あれば十分・・3日間のリードタイムをすべての商品で実現・・3カ月分の棚卸在庫が減り・・1日の場合は価格を倍にしても売れる(p67)

原価計算の錯覚

面白いのは、原価計算の錯覚や、手段と目的をはき違えなど、よくある仕事での勘違いを指摘しているところでしょう。


原価計算では、本社経費を製品原価に配賦した資料によって方針決定が行われ、「儲かっている製品」が「赤字の製品」と思われて海外への生産移管されてしまうこともあるという事例。よくあるのは、閑散期の余剰人員を活用した新規事業で人件費や本店経費を配布して、赤字だから撤退しようと考える人もいるのではないでしょうか。


また、手段と目的をはき違えは、在庫削減が目的なのに、在庫把握のシステムを導入することが目的になってしまっている事例。特に今の仕事をそのままシステム化しようとする会社が多いと思いますが、今の仕事が部分最適だったら、システム化で部分最適が固定化され、仕事の改革の障害になる可能性もあるのです。


海外への生産移管・・・国内生産品には、本社経費など様々な経費が配賦され、ゆがめられた数字をもとにコストが高いと誤って判断されていた(p235)

小説やマンガで解説

この本の最初に紹介されているCA虫(CA虫で検索すると動画が見れます)もよくありがちで、面白い。CA虫とは、PDCAのPlan Doの段階では部下に仕事を丸投げしておいて、Check段階で部下にあれこれ指示し、期待外れの部下の仕事に自らActionに乗り出して、自己重要感を満たす上司です。


こうしたよくある職場の問題や錯覚に解決方法をパターン化して提示するのが、ゴールドラット流なのです。


単に解決法を説明するだけでなく、小説にしたりマンガで説明してくれるところも人間の特性を理解しているところが素晴らしい。合理的かつ実践的な内容でした。岸良さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・問題を拾い上げるために上司が部下に投げかける質問は、たった3つ・・「あと何日で終わりそうですか?」「問題があるとしたら何ですか?」「何か助けられることはありますか?」(p53)


・必要なものが全てそろうまでは、現場は仕事を始めない・・・モノづくり現場では常識的なことだ・・・見切り発車要因の手直しがすべて解消する(p75)


・午前中は生産系の仕様決めや打ち合わせ、午後は営業とともに顧客との打ち合わせに追われ、設計の仕事に集中できるのは定時の退社時間を過ぎてから・・朝7時から9時までを設計に没頭する「集中タイム」とした(p177)


・決して遅れてはならないという責任感が強く、不確実性が高いほど、人はより多くのサバを読む・・特効薬・・「サバ」を一人で持たず、みんなでサバを持つことだ(p95)


・テイコウ虫は頼もしい応援勢力・・「懸念事項はありますか?」と問いかけ・・「この懸念事項が起きる理由はなんでしょうか?」・・「この理由を解消するうまい手はありませんか?」と質問し、重大な懸念事項から的を絞って解消方法を参加メンバー全員で知恵をひねる(p121)


▼引用は、この本からです
「組織をダメにするのは誰か?職場の問題解決入門」岸良裕司
岸良裕司、クロスメディア・パブリッシング(インプレス)


【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

はじめに 組織をダメにするのは誰か?
第1章 ダメ上司の問題を解決する
第2章  ダメプロジェクトの問題を解決する
第3章  あなたをダメにする問題を解決する
第4章 ダメな組織の問題を解決する
おわりに 月曜日が楽しみな会社にしよう!


著者紹介

岸良 裕司(きしら ゆうじ)・・・ゴールドラットジャパンCEO。全体最適のマネジメント理論TOC(Theory of Constraint:制約理論)をあらゆる産業界、行政改革で実践。活動成果の1つとして発表された「三方良しの公共事業改革」は、ゴールドラット博士の絶賛を浴び、2007年4月に国策として正式に採用された。成果の数々は国際的に高い評価を得て、活動の舞台を日本のみならず世界中に広げている。2008年4月、ゴールドラット博士に請われてゴールドラット・コンサルティンググローバルパートナーに就任し、日本代表となる。東京大学MMRC(ものづくり経営研究センター)非常勤講師。


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