【書評】「外資系コンサルの資料作成術-短時間で強烈な説得力を生み出すフレームワーク」森 秀明
2025/05/29公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
外資系コンサルの資料の作り方
ボストン・コンサルティング・グループなど外資系コンサルティング会社で経験を積んできた著者の資料作成方法です。資料作成の基本は、まず様式(ビジュアル)を決め、資料にロジックを埋め込み、顧客とコミュニケーションしながら、資料を見直ししていくことです。
最初の様式(ビジュアル)はフレームワークとも呼ばれますが、一目でわかるように図解的になっています。そして、筋の通ったメッセージをはっきり伝えるために、証拠と主張と保証の3つを打ち込んでいきます。つまり、「〇〇という事実がある」(証拠)、「それゆえ△△である」(主張)、「なぜなら□□だからである」(保証)というわけです。
実際の現場では、説得力を高めるために3つの証拠を並べたり、他社事例を列挙するなど、顧客を納得させるために労力をかけていることがわかります。
社内の反対派を説得し、関係者の納得感を得るためには、競合A社とB社という複数の証拠が必要だった(p50)
常にアップグレードしていく
特に面白いと思ったのは、資料は完成品ではなくβ版であり、顧客との対話によって常にアップグレードしていくという基本姿勢です。未完成の資料を顧客にぶつけて、顧客の反応を感じ取り、刻々と変わっていく顧客が求める内容をフォローしていくのです。
したがって、紙1枚あれば社長とも討議するというのが著者の流儀であって、相手の反応を感じ取り、次の討議へ反映させることで、相手の心をつかむのです。こうした考え方は、「これが正解だ!と示す」マッキンゼー流と違い、顧客と共に考え抜くというボストン・コンサルティング・グループの特徴が出ているのかもしれません。
アウトプットのステップ・・メモ書き→チャラ書き→ホン書き(p15)
30分以上悩んだら相談
では具体的にどうやって資料を作成しているのかといえば、スケジュール例と資料の構成例が示されているのが、親切です。
スケジュール例では、
1日目(・・お客様幹部との重要な討議会・・)
2日目(・・ラフ・スケッチを使って議論する・・)
3日目(・・討議会資料の内容を詰める・・)
4日目(・・討議会資料の最終形を決める・・)
5日目(・・最終確認・・討議資料の修正・・)
6日目(・・お客様との討議会・・)
というように、上司と毎日議論しながら、
資料を固めていく流れがわかります。
また、資料の構成例では、
1.表紙 2.目次
3.現状理解 4.背景
5.事業のコンセプト 6.顧客 7.体験 8.場 9.プログラム
10.事業の発展形 11.展開スケジュール
12.収益モデル 13.収益予想
14.体制
15.まとめ
と、普通の目次が紹介されています。
著者が注意しているのは、1枚の資料作成に30分以上悩んだら、作業をストップして、上司や他のメンバーに相談することです。悩んでいる時間は無駄であり、衆知を使えばよいのです。
1枚の資料作成に30分以上悩んでしまうことがあったら、要注意です。その場合は、そこで資料の作成作業をストップして、リーダーや他のメンバーなどと相談してください(p133)
手書きの紙一枚で顧客と議論する
誰でも「空・雨・傘」というフレームワークを使ったり、プロセス図やマトリクスで分類したりして資料が作れると思いますが、差が出るのはスピードではないかと思いました。 手書きの紙一枚で、顧客と議論できる人は強いと思うのです。具体的な資料のイメージ図が多用されており、メルマガでご紹介できないのが残念です。
資料は慣れれば作るのは簡単ですが、本質を理解し、顧客の思いに寄り添うのは修行が必要なのでしょう。森 さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・手書きの資料・・ある方が「岡山弁ではこういう走り書きのことをチャラ書きというんだ」と教えてくれました(p23)
・マッキンゼーはロジックをとても大事にする・・「空・雨・傘」というフレームワークを用いて論を展開する・・マッキンゼーのコンサルタントはプロセス図を描くのが好きだ(p74)
・ボストン・コンサルティング・グループのコンサルタントはマトリクスを描いて物事を分類したり、整理したりするのが得意です(p91)
▼引用は、この本からです
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森 秀明(著)、ダイヤモンド社
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
第1章 資料作成のガイドラインなしに、やみくもに仕事を始めてはいけない
第2章 ビジュアルを論理で裏づけることが重要(基礎編)
第3章 効果的なビジュアルには周到な論理が隠されている(応用編)
第4章 相手を説得するロジックは人類最高の知恵
第5章 資料作成はメモ書き、チャラ書き、ホン書きの3段階で進化する
第6章 コミュニケーションとは相手の変化に寄り添うこと
著者経歴
森秀明(もり しゅうめい)・・・イッテ・デザイン・グループ(itte design group Inc.)社長兼CEO。一橋大学経済学部卒、慶応義塾大学院修了。ボストン・コンサルティング・グループ、ブーズ・アレン・ハミルトンなどの外資系コンサルティング会社を経て現職。これまでに総計100案件40億円以上のプロジェクトを実施。
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