【書評】「任せる勇気: チームの熱を生み出す「マインドセット」」五十嵐 剛
2025/12/25公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
指示型リーダーは人を育てない
著者はNECで社長賞を4度受賞しました。最初の2度の受賞は、メンバーを徹底的に管理し、仕事を任せずに1人で抱え込んで成果を出したのです。しかし、メンバーは自分で考える機会を与えられず、疲弊し、目は死んでいたという。
著者は今、考えると、「自分でやったほうが早い」「全部自分の責任」という恐怖から仕事を任せることができなかったと証言しています。
小さいプロジェクトなら「指示型リーダー」でもうまくいきます。しかし、指示型ではメンバーの自主性は生まれず、成長機会もないので、いつまでたっても「任せられる人がいない」状況が続くことになるのです。
9割以上の管理職が「部下に仕事を任せられない」と感じた経験があるという(p33)
「任せるリーダー」は人を育てる
著者は大きな失敗プロジェクトを支援することになるのですが、はやり「指示型リーダー」ではうまくいきませんでした。そこで著者はそれまでの「コントロール」から「エンパワーメント」へ仕事のやり方を切り替えたのです。すると、不思議なことに仕事は改善していったという。
著者が思い出すのは、リーダーから「嫌なのはわかるけど、顔に出す」と注意されたことがあります。これは「指示型リーダー」です。その一方で、頼りないリーダーに相談しても「そうだよねえ。厳しいよねえ」と言うだけで答えを教えてくれないという経験もしています。
答えは教えてくれないのに、著者はは自ら考え、行動することができたのです。そのリーダーは著者の「決定権」を奪うことなく、ただ著者の心を支えてくれたのです。これは「任せるリーダー」でしょう。つまり、「指示型リーダー」の先に「任せるリーダー」があったのです。
あなたの一挙手一投足は、常にメンバーに見られています・・・メンバーは賢いので、不満があっても文句は言いません(p185)
「任せるリーダー」は長所を伸ばす
「指示型リーダー」は、メンバーの苦手を矯正しようとします。「任せるリーダー」は長所を伸ばすのです。
「指示型リーダー」は、何をするべきか指示するだけです。「任せるリーダー」は「私はこの点が気になるのだけれど、あなたはどう思う?」とメンバーに気づきを促すのです。
「指示型リーダー」は、指示を出すだけです。「任せるリーダー」はその仕事が持つ意義や、成功したときのメリットをメンバーに伝えるのです。
「指示型リーダー」は、「ダメ出し」します。「任せるリーダー」は褒めファーストなのです。
「もし責任者だったら、この仕事をどう進めてみたい?」・・このような問いかけは、メンバーに「あなたの考えには価値がある」と感じさせる(p189)
絶対守るルールを決める
仕事を任せるコツは、「絶対守るルール」を決めておくことだという。
例えば、週に1回、「定期的な打ち合わせ」を行う。顧客とのやりとりは、かならずチャットで記録する。緊急時は、すぐに電話で連絡する。
こうした最低限のルールを決めて、メンバーに失敗する権利を与えるわけです。
自分で仕事はできるけれど、あえて「任せるリーダー」を選んでいる人が最強なのだと思いました。五十嵐さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・「助けてほしい」と言える人はうまくいく・・・実は、この分野については私も経験が浅いんだ。だから、みんなの知恵やアイデアを借りたい(p212)
・「もしかして納得いかない?何か疑問があれば教えて」・・個人の心に生じたさざ波は、やがて大きなうねりとなってチーム全体に影響を及ぼしてしまう(p203)
・「目標を達成するために、あなたは何ができると思いますか?」・・自分がどう貢献できるか・・・チームメンバー全員で、自由に話ができる場で行う(p89)
・目標が共有できているか・・・メンバーに「どこを目指すのか」を告げないまま、ただ歩き続けさせるようなことをしてはいけません(p77)
▼引用は、この本からです

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五十嵐 剛 (著)、三笠書房
【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
1章 「任せ上手」になるための大前提―「どう依頼するか」の3原則を知る
2章 「誰に任せるか」の思考法―そもそも、最初から「適材」は存在しない
3章 任せるときの「ルール」設計―チームを守るために、決めておくべきこと
4章 「任せた後」こそが、最重要―「小さな躊躇」を放置してはいけない
5章 任せるリーダーとしての日常習慣―常に「見られている」ことを自覚する
著者経歴
五十嵐剛(いがらし つよし)・・・株式会社リーダーズクリエイティブラボ代表取締役CEO。いきいきチーム創り仕掛け人。長野県東御市出身。上田高校卒。東海大学卒業後、長野市のNECグループ会社に入社し、NEC本社に逆出向。実績を認められて移籍。中央官庁の大規模システムプロジェクトを担当するなど、リーダーとして多様な現場を経験。年間売上600億円、メンバー1000人超のプロジェクトを率い、NECグループ12万人の中から年100人しか選ばれない社長賞を前代未聞の4度受賞。しかし、その裏で「指示型リーダー」として任せられない苦悩を重ね、突発性難聴を発症。孤独の中で「任せる勇気」こそがチームを動かす原点だと痛感し、トップダウンとボトムアップを融合させた独自のマネジメントスタイルを確立。すると、わずか半年で危機的プロジェクトをV字回復へ導く。2023年にNEC を定年退職。株式会社リーダーズクリエイティブラボ代表取締役CEOに就任。
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