【書評】「図解「減税のきほん」新しい日本のスタンダード」小倉 健一, キヌヨ, 土井 健太郎
2025/12/24公開 更新
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【私の評価】★★★★★(93点)
要約と感想レビュー
日本の国民負担率は48.4%
日本の国民負担率(税金と社会保険料)は2002年は35.0%でしたが、2022年には48.4%まで上昇しているという。この本では、税金と社会保険料を減らすことで、経済全体の活性化が期待できる!と提案しているのです。
経済学者の研究では、減税と支出削減を組み合わることで経済成長を促進するという。アメリカのレーガン政権時代に実施された減税によって、民間消費と投資を活性化した実績があります。
名古屋市も2010年度には市民税10%減税、2011年度からは5%の減税を継続したことで市民税1600億円が減少しましたが、最終的には税収が3000億円増加しているのです。
「税金と成長の強固な関係」によれば、税負担が1%減少する場合、短期的には一人当たり実質個人所得の成長率が2.59%増加する(p105)
補助金は非生産的な活動を推進
そもそも公共事業や公務員の増加は、民間の活力を奪い、社会全体の生産性を低下させます。政府の補助金や特別な規制は、本来成り立たない非生産的な活動を推進するものです。
この本では地方創生、食料自給率向上、半導体産業育成、再生可能エネルギー事業などに関連し、税金が特定の利益団体に流れ、中抜きや官僚の天下りが行われていると批判するのです。
例えば、地方創生交付金は、成長しない地域に人口を留めてしまう、住民間格差を固定する制度と批判しています。地方創生交付金で作られた施設の維持費が高額になり、自治体の財政を圧迫し、維持できなくなるわけです。
環境問題ではカーボンニュートラルを達成するため、再生可能エネルギー買取制度で3兆円も電気料金が上がっています。さらに、政府はグリーントランスフォーメーション(GX)戦略として、炭素税や約150兆円の官民投資を計画しています。
この本では、GX戦略はエネルギー価格を上げるだけで、結果、日本は経済成長できなくなるだけだと批判しているのです。
炭素税がオーストラリア経済に与える影響・・炭素1トンあたり23豪ドル(約2050円)の税がGDPを0.68%押し下げ・・電力価格は26%上昇(p70)
税金をドブに捨てる事例
国が行う政策は、「やっている感」だけで、結果が伴わないと批判しています。
例えば岸田政権は「異次元の少子化対策」として子育て支援に、3.6兆円投入しました。しかし、少子化の原因は、未婚率の上昇と晩婚化が9割であり、子育て支援に偏った「少子化対策」は少子化に何の意味もないと断罪しています。
また、国民の受けがよいのが「無償化」ですが、結局税金で支払うこととなり、別の副作用も大きいと批判しています
例えば、医療無償化は過剰受診を引き起こし、医療資源の浪費を招きます。医療無償化のスウェーデンでは緊急ではない手術の待機期間が平均113日だという。三田市では中学生までの通院費を無料としていましたたが、2018年から1日400円の自己負担を導入した結果、助成申請件数は10%減少したという。
給食無償化も有償であれば「1食1000円払ってこんなものしか出せないのか」と批判もするでしょうが、無料なら「無料であればこんなものか」とチェックが甘くなるのです。
教育無償化も、教育の質の低下や財政負担の増大を招くだけで、そもそも高校進学率はすでに高いので、これ以上の支援に意味はないとしています。
政府が関わるのが正しいとは限らない・・国土交通省がタクシー業界を守るためにライドシェアを抑える動きや、「地方が衰退するのを防ぐ」と言って税金でバラマキをする例(p4)
豚は太らせてから食え
財務省は減税に対して「財源がない」と言いますが、この本では財源がなくても減税を先行させることを提案しています。なぜなら、公務員の給与を引き上げるときには、財源を理由にしないから。また、国は収入が減って初めて無駄の見直しに着手するからです。
私は財務省の増税路線を見ていると、「豚は太らせてから食え」という格言を思い出します。つまり、財務省は国民を太らせてから税金を取るのではなく、やせ細らせた上に税金を取ろうとしているからです。
小倉さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・図書館の蔵書が増えるほど、書店の売上が減少する(p54)
・世界の約半数の国々には相続税が存在しない・・・富裕層が税金を避けるために海外に移住することを防ぎ、逆に国内に呼び戻すこと(p87)
・森林環境税は、震災復興の名のもとに徴収されてきた復興特別税の住民税分をそのまま引き継ぐかたちで始まった・・・地方自治体による独自の森林税がすでに37都道府県に存在する・・二重課税である(p83)
▼引用は、この本からです

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小倉 健一, キヌヨ, 土井 健太郎 (著)、株式会社ブックフォース
【私の評価】★★★★★(93点)
目次
第1章 ムダ遣い天国・ニッポン
コラム:経営の神様・稲盛和夫の小さな政府論
第2章 増税を許すな!
第3章 減税のきほん
コラム:安倍元首相と財務省
第4章 日本社会の病床
コラム:ノーベル経済学賞2024
著者経歴
小倉 健一(おぐら けんいち)・・・1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任。2021年7月ITOMOS研究所設立。
土井 健太郎(どい けんたろう)・・・SNSで自然発生した減税運動に出会い、のちに自動車関連税の学習を目的とした「クルマ減税会」に参加する。
キヌヨ(きぬよ)・・・減税団体の必要性を感じ、SNSで活動を続ける「ナイス減税会」を立ち上げメンバーとなる。
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