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【書評】「私の夢・日本の夢 21世紀の日本」松下 幸之助

2025/10/27公開 更新
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「私の夢・日本の夢 21世紀の日本」松下 幸之助


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー


高市早苗は「松下政経塾」出身

内閣総理大臣に就任した高市早苗さんは、「松下政経塾」出身です。その「松下政経塾」を創設した松下幸之助は、松下電器グループだけでなく、日本国も経営したいと考えていたのではないでしょうか。


しかし、自分にはその時間がない。そこで、「松下政経塾」を作ったのです。この本は1977年に松下幸之助が、30年後、2010年の理想の日本国を説明したものとなっています。 松下の理想の達成度を見ていきましょう。実現(◯)、途上(△)、未着手(×)


まず面白いのは、経済政策でしょう。理想は、年率4、5%の経済成長と物価の上昇率は高くて1~2%までと現在のインフレターゲット政策を予言しています。(◯)そして、アメリカの例を示しながら、財政赤字は減税によって不況を解消し、経済を活発化させるとしています。


つまり、国の財布と国民の財布は同じであり、富は国民が生み出すものという考え方なのです。国が赤字でも、国民の経済活動を活発化させれば、結果して国の税金も増えるというわけです。現在の財務省はまったく逆の増税を続けることで、デフレ経済を40年も続けてきたのです。(×)


結局アメリカには、政府のフトコロと国民のフトコロは一つのものだという考えが伝統的にあるのでしょうね。だから、減税によって政府の財政が赤字になっても、その結果国民活動が盛んになり、それ以上の国民の収入が増えれば、国全体としてさし引きプラスになる(p35)

中央政府と地方自治体は職員半分

そして中央政府が一元的に行うべき仕事だけを残して、あとはすべて地方政府に任せる小さな政府を目指しています。(×)公共事業も、ほぼすべて民営化すべきとしています。なぜなら、役人が経営すると経営責任の所在がはっきりせず、自由活発な経営が期待できず、赤字が多くなるからです。(△)


さらに、中央政府と地方自治体は、根本から再検討し、半分の費用、半分の人間で対応できるようになっています。つまり、議員定数は半分、公務員も半分で仕事をこなせるのです。(×)


そして、政治献金は禁止します。そのかわり選挙の費用の8割まで国庫負担、首相の給与は10億円です。政治献金を認めない分、その地位にふさわしい待遇とするのです。(×)


共産党や立憲民主党が発狂しそうな内容ですが、これが日本国の発展を願う松下幸之助の理想の政治なのです。


(国や自治体の)歳出額を今の2分の1に減らしても十分やっていくことができる・・・(議員や)職員の数も2分の1以下に減らした(p433)

社会保障費と防衛費

社会保障については、教育はタダ、老人の生活費すべて保障するというような社会保障は、一見理想的なように見えますが、財政負担が大きいだけでなく、本人も不幸になるとしています。(△)


つまり、至れりつくせりの社会保障を続けていると、人間は怠惰になり、勤労意欲が衰え、活動が不活発になり、国家全体が脆弱になるというのです。したがって、老人でも働ける人は可能な限り働いていただき、プラス年金と、貯蓄で暮らしていくのが、生きがいある生活となるというのが松下幸之助流なのです。(△)


社会保障を削減する分、防衛費の国家予算に占める割合は10%としています。現在の一般会計予算は110兆円ですので、防衛予算は11兆円、GDP比2%となります。松下幸之助はGDP比2%の防衛費が国力相応と予言していたわけです。(◯)


そして、当然のことですが、学校では国旗の日の丸が毎日掲揚されています。日本教職員組合(日教組)は反対しているようですが、日本国を発展させたい松下幸之助にとっては当然のことなのです。(◯)


いま各学校では国旗の日の丸が毎日掲揚されていますし、式典のときには国家「君が代」が堂々と歌われています。こういう姿は世界の国ぐにではきわめて当たり前のことと思いますが、・・三十年ほどまでの日本ではそれができなかったのです(p218)

人間とは偉大な存在である

松下幸之助の予言が当たっていないものでは、例えば、日本を訪れる外国人旅行者数を300万人ほどと予想していますが、昨年は3600万人です。(×)


個人株主の比率は60%としていますが、現状は個人株主17%、外国人株主30%と株式大衆化はまだまだです。(×)


当たっているものとしては、自家紙幣に等しい手形については、禁止の方向で60日以上の手形は発行禁止としていますが、現実にも2024年から手形は原則60日以内となっています。(◯)


松下幸之助は人間とは偉大な存在であると定義していました。だからどんどん便利なものを作って、機械も自動化され、運ぶのも簡単になり、通信・ネットで便利に、効率化できるので、物価は下がり、人は半分になるというわけです。松下幸之助さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・貿易を盛んにして日本製品を買ってもらい、必要な外国製品を購入するにも、すべて海外諸国との友好関係が前提になるわけですね。つまり日本人が世界の人びとに信頼され、好感を持ってもらわなければ、資源なき工業国日本の安定発展はあり得ないのです(p192)


・大学の数の減少につれて総合大学といえども学生数は半減しました・・学生の質はよくなり、大学教育にふさわしい教育がなされるようにもなりました・・ほんとうに学問に向いている人とか、高度の知識や研究を求めている人に限られるようになったわけです(p227)


・日本にとっての最大の懸案の一つは食糧問題です・・・食糧の完全自給をと願っているわけですが・・早くて今世紀末と考えています・・永世中立国スイスでは・・食糧の輸入が断たれたときのために食糧備蓄も相当量とったり、予備の農地や労働力にしても常備していました(p292)


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「私の夢・日本の夢 21世紀の日本」松下 幸之助
松下 幸之助 (著)、PHP研究所


【私の評価】★★★★☆(88点)


目次


序章 西暦2010年の日本
第1章 経済について
第2章 企業経営について
第3章 教育、宗教について
第4章 国土と社会について
第5章 政治について


著者経歴


松下幸之助(まつした こうのすけ)・・・パナソニック(旧松下電器産業)グループ創業者、PHP研究所創設者。明治27(1894)年、和歌山県に生まれる。9歳で単身大阪に出、火鉢店、自転車店に奉公ののち、大阪電燈(現関西電力)に勤務。大正7(1918)年、23歳で松下電気器具製作所(昭和10年に松下電器産業に改称)を創業。昭和21(1946)年には、「Peace and Happiness through Prosperity=繁栄によって平和と幸福を」のスローガンを掲げてPHP研究所を創設。昭和54(1979)年、21世紀を担う指導者の育成を目的に、松下政経塾を設立。平成元(1989)年に94歳で没。


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