「松下幸之助の生き方」佐藤 悌二郎
2019/09/18公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★★☆(86点)
要約と感想レビュー
松下幸之助の成功哲学
久しぶりに松下幸之助の本を手にしました。今思うのは、現代の成功哲学を説く人と同じことを言っているということです。つまり、人間とは幸福であることが本来の姿であって、うまくいっていないのはやり方や考え方が悪いのだということです。
例えば戦後の貧困時代には、本来人間は平和と幸福の満ちた社会を作れる能力を持っているとしたうえで、やり方が悪いと貧乏になってしまうこともあると考えたのです。つまに、人間は幸福になるために生まれたのであって、そうでないのはやり方がまずいということなのです。
これは現代の成功哲学を説く人の主張と類似であり、松下幸之助の考え方をうまくパクっているのではないかと感じました。
人間は限りない繁栄と平和と幸福というものを原則として与えられているものだと、こう考えたのです。この悲惨な姿は人間がみずから招いたものである(p135)
使命感、錦の御旗が必要
松下幸之助は強い人でした。やるべきことはやる。約束は守る。叱るべきは叱る。褒めるべきは褒める。こうした心の強さは、"これは社会のためにやらなければならない"という考えが根底にあったからだと幸之助は言っています。使命感、錦の御旗が松下幸之助と松下電器という組織を突き動かしてきたというのです。10人くらいの組織でも、錦の御旗のような方針が必要なのです。
例えば松下幸之助は、ある発明家が所有していたラジオの重要部分の特許権を、昭和7年当時のお金で2万5千円という大金で買い取りました。松下幸之助は、その特許を同業メーカーが自由に使えるよう、無償で公開したのです。多くの企業が切磋琢磨することが、社会のためになるという信念があったからなのでしょう。
"この改革は会社のため、従業員のために、さらには大きくは広い世間のために断行しなければならない"と考えた場合には、それを断行する勇気は湧いてくる。そういうところに根ざさないかぎりは、ほんとうの勇気は湧かないと思うんです(p190)
役割、使命がやりがいを作る
松下幸之助は宗教法人の活動を見て、無償で生き生きと働く信者をみて驚きました。松下電器は社員にお金を払っているのに、松下電器の社員は生き生きと働いていなかったからです。
つまり、人間は、ただ普通に会社で働いているとしたら、これはあまり面白くもなく、また生きがい、やりがいのようなものは感じられないけれども、自分のやっていることが何らかの目的に向かっているものであり、そこに自分の役割、使命があるのだとなれば、意義を感じ、やりがいも生まれ、充実した日々を過ごしていくことができるのではないかと考えたのです。
やはり松下幸之助の本を読むと、背筋が伸びます。もう松下幸之助はこの世にいませんので、私たちが松下幸之助の言葉に学ぶことで、よりよい社会を作っていかなくてはならないのでしょう。佐藤さん、良い本をありがとうございました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・若気の至りちうか、血気というか、人間だれしも、多少とも、よし、おれが出てやろう、という気負った気分があるものだが、そういう気分になったときに、人間は注意しなければいけない。おおむね失敗するのは、そういう気分がツッと出たときである(p117)
・GHQに対して徹底的に抗議・・・私は、言うべきは言い、なすべきはなす。また、どこまでも初志を貫いて自己の正しさを訴えなければならない、という信念のもとにやった。それが幸いよかった。やはり志を失わないことが大事だ(p131)
・過当と考えられる競争は、ものを破壊することに結びつくおそれが多分にある。国と国とが過当競争をした場合には、戦争が起こるんです・・・われわれ企業間においても、過当競争は罪悪であると考えていいと思います(p184)
・一所懸命つくった製品ですからね。本来は自分の手で需要者に手渡したいわけですよ・・宣伝やPRはそういう気持ちから出発しているはずですわ(p35)
・経営者自身が広告するようでなくてはあきまへんわ。広告代理店がやってくれるから、そこに任せとったらええ、というのではダメです。経営者が、自分で精神をこめてやる・・逆に、宣伝部に任せっきりのところはあきまへん(p37)
▼引用は下記の書籍からです。
【私の評価】★★★★☆(86点)
目次
1 商人の魂かくあるべし
2 よき人材を育てる
3 繁栄によって平和と幸福を
4 一大躍進を期して
5 国際社会の平和と発展のために
著者経歴
佐藤悌二郎(さとう ていじろう)・・・新潟県生まれ。1980年、慶應義塾大学卒業後、PHP総合研究所に入社。研究員としてPHP理念および創設者松下幸之助の経営観の研究に従事。『松下幸之助発言集』全45巻をはじめ松下幸之助に関する多数の書籍、テープ・CD集等の原稿執筆、編集、制作にあたる。その間、松下幸之助を中心としたPHP理念研究会に出席、PHP理念をまとめる作業を行う。現在、PHP総合研究所取締役経営理念研究本部長
この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
コメントする