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「不敗の名将 今村均の生き方 -組織に負けない人生を学ぶ-」日下公人

2019/09/19公開 更新
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不敗の名将 今村均の生き方 -組織に負けない人生を学ぶ- (祥伝社新書)


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

宮城県仙台市から不敗の名将、今村均という人が出たと聞いて手にした一冊です。今村均司令官は、大東亜戦争後期、孤立無援となったパプアニューギニアのラバウルで10万人の兵士とともに終戦を迎えました。今村均司令官は、ラバウルに地下通路を作ることで要塞化し、農地を作って自給自足の体制を作り、終戦まで生き延びたという。とかく当時の軍人は特攻や突撃など非合理的な作戦を立てがちでしたが、今村均は合理的な人だったのです。


当時の日本の風景を振り返ってみましょう。第一次世界大戦が終わると、全世界的にもう戦争は当分あるまい、という平和一色の時代となりました。しかし、実際にはこのときから十年後には早くも満州事変が始まり、この軍事力についての勉強不足が顕在化することになるのです。特に新しい武器であった機関銃、大砲、戦車、航空機、潜水艦などに関する認識不足と準備不足は、その後の日本軍の大きな弱点となるのです。


また、中国大陸への駐留費に予算を食われ、軍事装備品の近代化に予算がまわらず、1939年には陸海軍の動員兵力146万人となり、軍事費が日本の財政を圧迫していたのです。景気刺激のためと称して赤字国債による財政支出を増大させると、経済合理性のない仕事が増え、日本経済全体の生産性が低下するという現在と同じような状況となっていたのです。


・日本人は状況が困難になるとその合理的な解決を考えるよりも、とかく精神的・抽象的になり神がかり的な"純粋の美学"と"破滅の美学"に逃避する・・追いつめられるとすぐに全軍を挙げたバンザイ突撃を敢行して米軍を喜ばせたりする(p223)


今村均大将回想録

この本が面白いのは、「今村均大将回想録」の面白さを解説しているところでしょう。今村均は陸軍大学校を主席で卒業し、将来少将以上に出世するのはほぼ約束されたエリートでした。その前の時代があまりにもコネで人事が決まっていたことの反動で、日本の陸軍も海軍も政府も高級幹部要員の選抜に当たっては試験を非常に重視したのです。


そのため試験の成績と席次が、軍部での昇進をほとんど決定するような硬直したものになってしまったのです。そのトップエリートがいかに足を引っ張られずに組織の中で慕われ、実戦においても不敗の伝説を作ったのか興味深いところです。その答えが「今村均大将回想録」にあり、組織の中においていかに敵を作らず、ゴマをするわけでもなく組織の目的を達成するのかという事例をこの本ではいくつか紹介してくれるのです。


帝国陸海軍にはろくな人がいなかったとする本が多いなかで、今村均将軍は比較的合理的な軍人であったということなのでしょう。不敗という実績からは組織人としては成功したということなのでしょう。もう少し今村均さんを調べてみたいと思います。日下さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・性善説で行動すると相手も多少はそうなるし、性悪説で行動すると相手もそうなるのが人の世である(p186)


・陸大主席卒業という肩書きが今村均の上につけ加えられた。これは出世の切符でもあるが・・ハンディキャップを持つことでもあった・・「陸大の成績を鼻にかけてそういう横着なことを言う」などと他人から言われる・・なまじハクをつけたために和田大佐のような人からいじめられ、その度に応接を誤って自滅してゆくのである(p71)


▼引用は下記の書籍からです。
不敗の名将 今村均の生き方 -組織に負けない人生を学ぶ- (祥伝社新書)
日下公人
祥伝社
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【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

第一話 陸軍士官候補生
第二話 陸大入学
第三話 陸大卒業
第四話 佐々木一等兵
第五話 炊事当番兵
第六話 ノックス事件
第七話 小柳津少佐と少年給仕
第八話 上原勇作元帥
第九話 思想犯とされた兵
第十話 大激戦



著者経歴

日下 公人(くさか きみんど)・・・1930年生まれ。日本長期信用銀行取締役を経て、ソフト化経済センター専務理事。多摩大学教授、東京財団会長などを歴任。


日本帝国軍人関係書籍

「米内光政 改版」阿川弘之
「アッツ島とキスカ島の戦い―人道の将、樋口季一郎と木村昌福」将口 泰浩
「不敗の名将 今村均の生き方 -組織に負けない人生を学ぶ-」日下公人


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