「戦争が嫌いな人のための戦争学」日下 公人
2016/03/21公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(83点)
要約と感想レビュー
「戦争は政治(外交)の延長である」と言われますが、戦争について著者の持論を集めた一冊です。だれもが戦争を嫌いなのに、なぜ戦争がなくならないのか?著者の持論は、戦争に強い民族が生き残ったのだから、戦争がなくならないのは当然ということです。戦争に弱い民族は、消滅してしまったのです。最終的に残った民族が、バイキングやアンブロ・サクソンであるというのです。
そして、過去にはインドや中国が千年の平和に慣れて、軍備と外交を軽視していたせいでイギリスのアジア侵略に勢いがついたというのです。こうした状況を見た日本は、明治時代に国民国家を作り、ロシア・イギリス・フランス・アメリカによる植民地化の脅威から日本を守ったのです。
そして衝撃なのは、戦争は若者比率の高い国が起こすということです。若者が増えふと、仕事を与えなくてはならない。失業率が増えると、その不満が政権への圧力となり、その解決策としての戦争に向かってしまうという、ということです。確かに老人だけの国が戦争はしません。日下さんの法則では、15~25歳の若者が全人口に占める比率が15%を超えると、その国は戦争をするのですが、現在、その法則に当てはまるのは中国です。最近の中国の他国への侵略や力の行使を見ていると、法則は裏切らないのかな、と思いました。
・若者比率の高い国が戦争を起こす・・・15歳から25歳の若者が全人口に占める比率が15%を超えると、その国は戦争をする・・現在、それはどこの国かというと、中国である(p99)
最近、中国は沖縄の領有権まで主張しはじめているようですが、2002年発行のこの本では、10年後に中国は戦争をすると予言しています。ただ、中国や韓国が日本に戦争を仕掛けても、東京まで侵攻することはなく、中国は沖縄だけ取れればいい。韓国は対馬だけ取れればいいと考えるだろうとしています。
またこの本では、沖縄が独立するのも夢物語ではない、とも予言しています。その理由は、独立は簡単だから。10人くらいで独立を宣言する。中国に独立を承認してもらう。中国と友好条約を結ぶ。中国軍を派遣してもらう。これで独立国家ができるのです。
また、中国については建国は1949年で、国の歴史が50数年しかなく、人民政府は国民を統制できないとしています。さらに、外国に対して条約や約束を守るつもりがなく、税法や合弁会社法をすぐ変えることから中国は国家の体をなしていないとしています。中国は国家でないとすれば、何でもありということなのです。
・宮古島が独立しようとした場合を考えてみよう。・・・10人くらいでホテルの一室を占領して、インターネットで世界中に独立宣言をする・・・それが済むと、すぐに近隣の強国に独立の承認を要求する。たとえば、中国に宮古島国の独立を承認してもらう(p13)
国家とは、人工的に作られたもので、簡単に作れ、簡単に崩れるものです。そして国家は、人が生きていくうえで、必要不可欠であり大切なものなのです。今が正念場なのかもしれません。今、日本は平和ですが、世界のあちこちで軍事作戦が進行中です。
安心しているときが、一番危ないのかもしれません。そういう意味では、万が一に備えようとする日本人の足を引っ張るのだけはやめてほしいと思います。日下先生、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・どうしても海外に工場を建てたいのなら・・政府としては「もしも日本人を誘拐したら、武力行使も辞さない」くらいの脅しはかけておく・・1863年、イギリスは二人の国民が殺されたというだけの理由で鹿児島の町の約一割を焼き払い、2万5000ポンドの賠償金を取った(薩英戦争)(p178)
・戦争賠償を要求して受け入れられるのであれば、ベトナムはアメリカに対して戦争賠償を要求するだろう・・それを言わないのは、欧米諸国は絶対に戦争賠償金を払わないからだ。日本には戦争賠償を払った実績がある・・だから今でも戦争賠償を要求される(p153)
・フランス外人部隊がゲリラに負けない理由・・われわれは女を木に縛りつけてきても、気にせずに撃つ。効果がないから相手は二度と同じ手は使わない。だから平和が達成できる(p182)
・革命的な現状打破派を穏健派に転向させるために、援助漬けにするという方法がある。援助漬けにされると骨抜きになって、現状打破勢力の運動は減速する。日本の農業が全滅していくのと同じである。保護すれば結局、全滅していく(p121)
・ニューヨークのジュリアーニ前市長は凶悪犯罪を激減させた功績で有名だが、警察に対しては次のように訓示した。「常に相手より一段ヘビーな武器を持って対応せよ。相手が素手なら棒で、相手が棒を持っているときはピストルで、相手がピストルを持っているときはショットガンで対応せよ」(p2)
・日本のマスコミが「アメリカは怒っている」という言い方をすることが多いが、怒っているのは議会だけで大統領府は別だという場合が結構ある。(p48)
・日本では、議論といえば怒った人が勝つことが多い・・「日頃穏やかな人があれだけ怒ったのだから」と相手が譲歩する。怒ると得することが多いから、それを交渉の武器に使うことが多い。しかし、そうしたやり方は外交交渉の席では通用しない(p168)
・「アングロ・サクソンは攻撃的だ」と言っているばかりでもいけない。アングロ・サクソンの中の穏健派が勝利を得るように援助をしないといけない。穏健派が負けると、ルーズベルトやチャーチルが正しいということになってしまう。(p82)
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【私の評価】★★★★☆(83点)
目次
第1章 こうすれば国家が造れる
第2章 「好戦的な民族」と「平和的な民族」
第3章 「戦争」と「平和」は表裏一体
著者経歴
日下 公人(くさか きみんど)・・・1930年生まれ。日本長期信用銀行取締役を経て、ソフト化経済センター専務理事。多摩大学教授、東京財団会長などを歴任。
読んでいただきありがとうございました!
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