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「人間はなぜ戦争をするのか―日本人のための戦争設計学・序説」日下 公人

本のソムリエ 2013/05/07メルマガ登録
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人間はなぜ戦争をするのか―日本人のための戦争設計学・序説


【私の評価】★★★★★(97点)


要約と感想レビュー

 憲法改正議論が話題になっていますが、「戦争」についてまじめに考える本をご紹介します。日本は「戦争」についての知識がないだけではなく、間違った通説がまかりとおっている、というのが著者の考えです。


 なぜ、「戦争反対!」と叫んでいる人が、自衛隊反対、軍備強化反対なのでしょうか。


 アメリカは尖閣問題を安定化させるために、オスプレイを沖縄配備し、「尖閣は日米安保の適用範囲内である」と断言している。そうすることが、「戦争反対!」につながると確信しているからです。自衛隊や軍備を強化することで、戦争にならないと考え方が逆なのです。


・歴史を調べてみると、パシフィスト(平和主義者)がいるとむしろ戦争が起こっている。絶対に一歩も引かない、必ず戦う、と両方が思っている時はなかなか戦争にならない・・・(p57)


 戦争は外交の一部であり、目的達成のための手段です。


 目的達成のために、手を打っていくのが政治・外交です。「靖国参拝反対!」と批判して効果があれば批判する。アメリカの議員に献金するのが効果的であれば献金する。スパイが簡単であれば、スパイするのが国際政治なのです。


 資源獲得と領土拡張のために、中国が軍を動かすことで効果があるとすれば、動かすのは当然のことでしょう。


・中国は尖閣諸島については「日本こそ侵略している」と言うだろう(先方は領海法をつくって中国領と明記した。)韓国は対馬に軍隊を上陸させる時は「旧領回復」と言うだろう。中国が沖縄を支配したいと思えば、尚王族の子孫を探して、「本領回復」の独立戦争を起こさせ、それを支援するだろう(p157)


 日本は、貿易黒字であり他国に多額の資金を融資しています。それは国家として素晴らしいことだと思いますが、「戦争」の視点では非常にあぶないと著者は指摘しています。


 戦争で日本という国家が消滅すれば、借金も消滅するからです。社会が混乱しているときは、借金している側が、強くなるわけですね。


・アメリカが第一次世界大戦に参戦したのは、財界がイギリスとフランスに、たくさん金を貸していたからである・・・現在の日本の貸付金は、全世界に対して8000億ドル・・・日本に金を借りている国は、すべて日本の敵に回る。日本から借金をしている国は、日本が滅びてくれれば丸儲けだからだ。(p194)


 歴史を見ると、日本人というものは、政治とその一部としての軍事に弱い傾向があります。狡賢さのない、お人好しなのです。それは今も変わりません。そうしたことを指摘してくれる人が、必要なのだと思いました。


 日本人に軍事を含めた政治・外交を設計することができるのかどうか。そこがポイントなのだと思いました。日下さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・日本や天安門事件以降、サミットの場でも常に中国をかばい、その孤立化を防ぐ目的で積極的に援助や投資を行ってきた。しかし、それはむしろ中国を増長させ、日本は、不安定化の原因を醸成した(p25)


・北海道でも沖縄でも佐渡ヶ島でも対馬でも小笠原でも、どこでも起こりうることだが、侵略を狙う国は、そこに自国に呼応する勢力や団体や住民をあらかじめつくろうとする。独立宣言をするのは簡単である(p233)


・北朝鮮から核で脅されたとしても、サッチャーさんが総理大臣だったら、どうぞ撃ち込みなさいと言うだろう。三万人くらい死んでも、そんなことで国家の方針は変わらない、そのかわり撃ち込まれたら日本は非核三原則を撤廃して、核弾頭を100発造って"同等報復"か、"倍返し"する(p63)


・面白いことに、アメリカへ留学した人はみんな戦争反対だった。やろうやろうと言ったのは、ドイツへ留学した人たちだ。ドイツ派の意見がマスコミや政治家を巻き込んで大勢を制すると、英米留学派はポストでも不遇になる。すると意見が採用されなくなる。こうした案外小さな事情で国家の命運が決まってしまうのである(p117)


・東京裁判のためアメリカが戦犯容疑者を尋問した時のことだが、何を目的だと思って 戦争したのか、誰に聞いても答えがなかった。尋問したアメリカ人は、腰が抜けるほど驚いたという(p201)


・第一次欧州大戦が終わって(大正7年)、これでもう半永久的に平和だと世界が思った。世界中で軍人株が暴落した。・・・軍事予算が削られる。昇進しないし、月給は上がらない・・・"軍国主義"といっても仕組みは簡単で、要は、将校たちが金とポストと勲章を欲しがっただけである(p106)


・日本がアジアから出ていった後に、イギリスがビルマに、オランダがインドネシアに、フランスがベトナムに侵略を行なった。アメリカはフィリピンに対して、日本がすでに与えていた独立を取り上げた。その後はベトナムにも攻め込んだ。アジア各国が日本のことばかり言うのは、日本から金を引き出そうとしているからである(p48)


・中国人は「南京大虐殺」といったら、さもありなんとすぐに思っただろう。なぜかといえば、中国の歴史では中国人自身の手で南京大虐殺は二回も三回もあった・・・国内展示用だから、たぶん日本人には見られたくなかったと思うが、朝日新聞が発見して大々的にPRした。中国政府はさぞ迷惑していることだろう。(p160)


・ポツダム宣言の受諾は無条件降伏ではなかった・・・各地の日本軍は正面の連合軍に対して無条件降伏せよ、というのがポツダム宣言である。後は捕虜としての待遇を受ける、と書いてある。国家と君主と国民と軍隊は、別のものである(p153)


▼引用は下記の書籍からです。

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【私の評価】★★★★★(97点)



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目次

第1章 人間は、なぜ戦争をするのか
―戦争を「道徳」の価値観で捉える愚かさ

第2章 戦後の「戦争常識」の非常識
―歴史を決定づけたのは"ほんの些細なこと"だった

第3章 「失敗の教訓」としての大東亜戦争
―歴史的事実を考察する時、何が重要か

第4章 戦争とは何か、「戦争設計」とは何か
―平和国家だからこそ「戦争設計学」の確立が急務


著者紹介

 日下 公人(くさか きみんど)・・・1930年生まれ。日本長期信用銀行取締役を経て、ソフト化経済センター専務理事。多摩大学教授、東京財団会長などを歴任。


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