「北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪」安田 峰俊
2024/09/09公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(93点)
要約と感想レビュー
技能実習生は優秀とはいえない人材
ベトナム人が梨を3千個盗んで、転売していたというニュースを見ました。「ベトナム人の犯罪率が高い」という情報もあります。この本では、不法滞在のベトナム人(ボドイ)の実態についてレポートしたものです。技能実習生の失踪者数は、2022年のデータで9千人。そのうち6千人がベトナム人です。
特に群馬県の太田市や伊勢崎市は、ベトナム語のみで生活可能で、不法滞在のベトナム人の集積地になっているという。逃げたベトナム人は、ベトナム人同士で部屋をシェアして住んでいます。そうしたベトナム人ハウスの特徴は、豚を調理した匂い、洗濯物を外に干しっぱなし、周囲にゴミが放置され、大音量で音楽や動画がベトナム語で流されているという。
著者が取材した印象は、技能実習生として派遣されてくる人は、後先を考えない行きあたりばったりに行動する、ベトナム社会でも優秀とは言えない人材が多いことがわかります。
逃げた技能実習生の多くは、生活が貧しく・・窃盗や詐欺、暴力行為、無免許運転・・野山で許可なく鳥獣を狩る(p20)
無免許、無車検・無保険で飲酒運転
この本では、ベトナム人の犯罪事件を取材しながら、逃亡したベトナム人が、日本人の常識から掛け離れた危険な生活を送っていることを紹介しています。
例えば、2020年、茨城県古河市の住宅街でベトナム人が運転するミニバンが、側道から一時停止も左右確認もなく太い市道に突っ込んで、車と衝突して歩行者が死亡した事件。ミニバンを運転していたベトナム人女性は逃走し、彼女は不法滞在・無免許・無車検・無保険であったという。実際、著者の取材でも不法滞在のベトナム人が闇売買で自家用車を簡単に購入できて、無免許運転が常態化しているのです。
2021年には茨城県土浦市のJR西日本常磐線で、パトカーの停止指示を無視して逃げた不法滞在・無免許、無車検・無保険、飲酒運転のベトナム人が、線路に車両を突っ込ませて列車と衝突。2日間常磐線を不通にしています。
自動車のヤミ売買や無免許運転が事実上の野放し状態になっている・・急ブレーキや急加速・・進路変更するときもウインカーは出さず、車線境界線を無視してヌルヌル動く(p45)
豚は自分たちで食べるために盗む
ベトナム人の窃盗については、2020年に群馬県内でブタ約720頭、ニワトリ約140羽、ウシ一頭とナシ約5700個などの盗難が確認されていたという。2022年には山梨県で桃が約1万4400個(387万円相当)が盗まれ、「メルカリ」に桃が出品されていた事件もありました。
ベトナム人は、ブタやウシやトリやフルーツを自分たちで食べるために盗んでくる人もいるというのです。特にベトナム人は「青い桃」に辛い塩をつけて食べるので、熟れる前の青い桃を盗んでいくという。そして盗んだものは、主にフェイスブックのベトナム人グループ内で販売しているのです。
実習生のバーベキューパーティに参加したところ、子ブタがまるごと一頭解体されていた・・養豚場から盗んできた・・ずっと前からやっていました(p110)
低賃金外国人労働者は是か非か
それ以外にも、この3年間で、ベトナム人同士で10人が刺殺されています。在日ベトナム人を50万人とすれば、5万人に1人が刺殺されたのです。日本の10万人あたりの殺人件数が年間0.2人なので10倍くらいでしょうか。
統計によると技能実習生の失踪者比率は、3%程度だという。日本では技能実習生や偽装留学生を、実質的な低賃金の外国人労働者として雇用することが常態化しており、政府もそれを支援し、外国人労働者は200万人、2011年から3倍以上に増えています。3%の失踪者が行うであろう犯罪と、97%が行う低賃金労働は釣り合うのでしょうか。
また、不法滞在者や在日外国人が増えていった場合、ヨーロッパのような治安の悪化や、民族や宗教対立が起きるのも予想されます。優秀とはいえない低賃金外国人労働者を多量に日本に呼び込むのは賢いとは思えませんが、もう少し調査を続けたいと思います。安田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・スーパーやドラッグストアで万引きした商品を売っている人がたくさんいるし、畑や果樹園から盗んだ農産物を売る人も当然いるよ(p257)
・村のなかでは「貯金が50万貯まると逃げる」と噂が流れていた(p74)
・チャイニーズエステ・・一時間あたり7000~1万円程度でシステマティックに性行為を提供する・・主役は中国人からベトナム人へ(p163)
【私の評価】★★★★★(93点)
目次
序章 「兵士」を自称するやんちゃなベトナム人
第1章 無免許運転でひき逃げ死亡事故
第2章 嫌われ娘・ジエウが暮らした漁村
第3章 シャブ・刺青・おっぱい―ウーバーイーツ配達青年の青春
第4章 豚窃盗疑惑「群馬の兄貴」と会った!
第5章 「日暮里のユキ」が見た日本人の性と老
第6章 殺し合うボドイたち
第7章 列車衝突事故でもほぼおとがめなし
第8章 桃窃盗事件の裏にあるボドイ経済
著者経歴
安田峰俊(やすだ みねとし)・・・1982年、滋賀県生まれ。広島大学大学院文学研究科博士課程前期修了(中国近現代史)。ルポライター。立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。中国およびアジア世界を主なフィールドとし、『八九六四「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)が第5回城山三郎賞と第50回大宅壮一ノンフィクション賞、『「低度」外国人材移民焼き畑国家、日本』(同)が第5回及川眠子賞をそれぞれ受賞
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