「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」田村 昇平
2024/03/13公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(92点)
要約と感想レビュー
ベンダー選定プロセスに時間をかける
システム開発の本は珍しいなと、手にした一冊です。私が入社した頃は、社内のシステムはスクラッチ開発ばかりでしたが、最近はパッケージをカスタマイズするのが主流です。この本ではいかにベンダー(システムを開発する会社)を選ぶのかにはじまり、受入テストまでシステム導入の原則が説明されています。
驚くのは、ベンダー選定までに4割くらいの時間をかけるスケジュールが引かれていることです。つまり、候補ベンダーに発行する提案依頼書・RFP(Request For Proposal)の作成とベンダー選定プロセスに時間をかけているのです。
提案依頼書(RFP)を作るためには、関係部署を巻き込んでどの部分をシステム化するのか、どの業務プロセスは絶対に変更しないのか、どのようなメリットを目指すのか、そうした方針を決めておかなくてはなりません。システムに関連する部署、キーマンには全て確認を取って、最終的には役員まで提案依頼書(RFP)の内容について社内合意しておくことが重要となります。
パッケージ導入のスケジュール・・ベンダー選定までの期間は十分確保する(p45)
ベンダーに丸投げしない
ベンダーの選定にあたっては、応募のあったベンダーをリストアップし、徐々に数を絞っていく過程を、関係者と共有します。ベンダーの評価基準も事前に作成し、関係者を巻き込みながら、ベンダー選定をしていくのです。
責任をベンダーに丸投げしないという視点では、システム開発中の障害管理表を自社で管理するということも重要です。「ベンダーの課題管理表」と「自社の課題管理表」を管理するのです。また、受入テストも十分な時間を取って、主導権を握りながら行うとすれば、マスターデータの全件テストや現新比較テストも全件で行うことで導入後のトラブルを防止することができます。
関係者にシステム開発の状況を社内でオープンにすることで、仕様の抜けが防止でき、実際の業務の実態がベンダーに伝わりやすくなるのでしょう。
プロジェクトの推進と責任をベンダーに丸投げしている(p4)
発注する企業の人選が重要
システム開発の経験が少ないと、ベンダー選定やテスト期間を短く見積もる傾向にあることがわかりました。また、そういう人にかぎってシステム開発をベンダーに丸投げし、必要十分な情報をベンダーに渡さず、何が重要なのかはっきりさせないのです。数十億円、数百億円をかけたシステム導入が失敗するのは、ベンダーの責任もありますが、発注した企業がそういう人を責任者にしてしまうことにも問題があるのです。
この本を読んで、発注する企業側で改善すべきところを改善すれば、システム開発での大きな失敗を防ぐことが可能となるのでしょう。類書が少ないということで★5としました。田村さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・システムの効果は全ての数値化を試みる・・金額換算は難しい(p34)
・担当者にプレッシャーをかける暇などない・・「期限が厳しい」と相談を受ければ、メンバーを増員する、方針を変える、関係者にフォローをお願いする(p151)
【私の評価】★★★★★(92点)
目次
第1章 システムの企画提案―ITベンダー選定までのルール
第2章 プロジェクト立ち上げ―要件定義までのルール
第3章 ユーザー受入テスト―システム検収までのルール
第4章 ユーザー教育―システム本稼働までのルール
第5章 システム運用/保守のルール
著者経歴
田村 昇平(たむら しょうへい)・・・情シスコンサルティング株式会社 代表取締役。ITプロジェクトを推進する情報システム部門を支援する情シスコンサルタント。支援したIT部門は20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクトを経験。現場の課題が上流工程にあることに気づき、「ファネル選定」などの上流工程のノウハウを編み出し、IT部門のシステム開発の支援を行っている。
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