どちらがいい?と問われたらどう答えるか「頭のいい人が話す前に考えていること」安達裕哉
2024/05/16公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(96点)
要約と感想レビュー
コンサルタントの基本とは
デロイトトーマツコンサルティングで中小企業向けコンサルティング部門を立ち上げた著者が、意識していたのは何だったのでしょうか?それは著者がコンサルタントの基本として徹底的に教えられたこと。つまり、簡単にアドバイスするな、意見を言うな、とにかく相手に話してもらえということです。
その事例が秀逸です。本書では、新商品をプレスリリースや特設サイトで告知したのに、まったく反響がなかった企業からの相談への対応が紹介されています。コンサルタントから見れば、新商品のキャンペーンのどこが悪かったのか、ひと目でわかる内容でした。でも、そのコンサルタントはクライアントに「みなさんが今回、何が原因だとお考えか、教えていただけないでしょうか?」と問うたのです。
そのコンサルタントはクライアントの考えを問い、質問するだけで足りない視点をクライアントに気づかせたのです。教えるのではなく、気づかせるというところが日本では受け入れやすいのでしょう。
コンサルタントはアドバイスする職業ではなく、交通整理する職業だ(p239)
どっちがいい?にどう答えるのか
また、この本では、配偶者から、「この青の服と、白の服、どっちがいいと思う?」と質問されたときに、どう答えるかという問いかけがなされています。答えは書きませんが、「青」、「白」と答えを言うのは正解でないことはわかると思います。配偶者はどう思っているのか、質問すべきなのです。
世の中には、正しいことを言って、正しいのに恨まれて、正しいことに従ってもらえない人が存在します。著者は会社員生活の中で、自分のやりたいことを押し通し、優秀なのに失脚していった人をたくさん見てきたという。
ところが世の中には、他者を認めつつ、自分はなんでもない人間ですが、ここを教えてもらえませんかと言いながら、やりたいことを実現している人も存在するのです。
論破できたとしても、信頼されるどころか恨まれかねません・・人が動くわけではありません(p87)
質問して相手に気づかせる
著者は典型的な日本人として、頭の良い人なのだと思いました。世の中を平穏に生きていくためには、できるだけ敵を作らないことが大切なのです。敵を作らないということは、相手の自己重要感を下げないこと。相手の言っていることを否定しないこと。否定するとしても、質問して相手に気づかせることなのです。
私の先輩にも同じような人がいました。その人は、決して間違っているとは指摘しないのです。質問しながら、自分が間違っていることを気づかせてくれるのです。
また、相手の自己重要感を高めるために相手の言っていることをよく聞くことも大切です。よく聞くとは、相手の話を整理して相手の意思決定を助けることなのです。
"教えてやろう"は多くの場合、単なるおせかいであり、聞き手は教えてもらうことを望んでいません(p230)
話をよく聞くテクニック
相手の話をよく聞くテクニックの一つとして、構造化面接マニュアルが面白いと思いました。面接で深堀りするときに、「どのような状況でしたか?」「そのとき、何をしましたか?」「どのような変化がありましたか?」と質問するのです。当たり前の質問のように見えますが、当たり前に深堀りできていない人がいるということなのでしょう。
全面的に賛成の一冊でした。ただ、人生には0.1%だけ「かくすればかくなるものと知りながら」正論を言わなければならないときもあるはずです。その時に、どのように発言するのかよくよく考えたいものです。
教科書に載せたい内容でした。安達さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・そのつどオウム返しをされると・・この人、ちゃんと話聞いているかな?・・と思うのではないでしょうか(p104)
・上司がアドバイスをしても、聞く耳を持たない・・好意を持っている同僚から言ってもらえるだけでアドバイスが実行に移されるケースがある(p239)
・私は前の妻を病気で亡くしています・・本当に頭のいい人とは、大切な人を大切にできる人だと思います(p326)
【私の評価】★★★★★(96点)
目次
第1部 頭のいい人が話す前に考えていること
その1 頭が悪くなる瞬間、頭がよくなる時間
その2 頭のよさを決めるのは「だれ」だ?
その3 なぜ、コンサルは入社1年目でもその道30年の社長にアドバイスできるのか?
その4 頭のいい人は、論破しない
その5 「話し方」だけうまくなるな
その6 知識が「知性」に変わるとき
その7 承認欲求をコントロールできる者がコミュニケーションの強者になれる
第2部 一気に頭のいい人になる思考の深め方
第1章 まずは、バカな話し方をやめる
第2章 なぜ、頭のいい人の話はわかりやすいのか?
第3章 ちゃんと考える前に、ちゃんと聞こう
第4章 深く聞く技術と教わる技術
第5章 最後に言葉にしてインパクトを残す
著者経歴
安達裕哉(あだち ゆうや)・・・ティネクト株式会社 代表取締役。1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が"本質的でためになる"と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。
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