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「重要証人: ウイグルの強制収容所を逃れて」アレクサンドラ・カヴェーリウス

本のソムリエ 2022/01/22メルマガ登録
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「重要証人: ウイグルの強制収容所を逃れて」アレクサンドラ・カヴェーリウス


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 中国が「キツネ狩り」として、国外逃亡した約1万人を誘拐や脅迫によって強制帰国させているという記事を読んで、手にした一冊です。著者も亡命先のスウェーデンでマスコミの取材を受ける度に、「黙らないか。子どものことを考えろ」と中国人から電話で脅迫されているのです。


 著者は、新疆ウイグル自治区の強制収容所で中国語教師として働いていました。強制収容所を辞めた後、著者は仲間から次は自分が収容されると知らされ、カザフスタンに脱出したのです。ところが中国との関係を重要視するカザフスタンでは亡命が認められず、著者は中国に強制送還されそうになります。著者はマスコミ報道されて注目されたことで運良くスウェーデンに亡命することができて、この本を書くことができたのです。運が良かった、奇跡に近いことだと思います。


 中国の新疆ウイグル自治区では100~300万人のウイグル人が強制収容所に収容されていると言われています。中国ではその収容所は職業技能教育訓練センターであるとしています。しかし、収容されるときは夜に警察から手錠をかけられ強制的に逮捕されるのです。また、著者のいた収容所では16平方メートルに20人が収容されており、トイレは一監房に一個のバケツで、24時間に一回しか空にしてもらえず、監房は汚くて吐き気がしたという著者の証言は貴重でしょう。


・あの施設が学校なら、連れていくのになぜ警察が手錠をかけ、深夜に逮捕しなくてはならないのだろう(p165)


 著者の証言の多くは、他の証言者と共通しており、ほぼ事実と考えられます。例えば、2016年から強制収容所が建設され、100~300万人が逮捕収容されている。親が収容されると、子どもは別施設に入れられる。パスポートを没収して、海外に出られないようにしている。外国に亡命中のウイグル人に対しては、家族を人質にして脅して帰国させる。収容所で、子どもが産めなくなる薬を投与しているのです。


 びっくりしたのは、2017年から「家族になろう」プログラムとして週末、ウイグル人は漢族の家で家事手伝い、性接待をしなくてはならないことです。著者はワイロを渡して性接待を避けることができ、多くのウイグル人がワイロを渡していたというのです。あまりに常識外のことで、本当なのでしょうか。


・私は週に一度、大きな錠剤を一錠飲まされるようになった・・・常に吐き気との闘いだった・・・その後、大半の女性収容者の生理がこなくなった(p243)


 また、この本に書かれてあることで、あまりに非人間的、犯罪的で事実なのかどうか確認が必要と思われることは、次のとおりです。


 公開レイプ:収容所内で同胞の前で少女をレイプし、抗議した人はどこかに連れていかれた。
 反政府デモで逮捕された人が、デモ弾圧での死者と一緒に生きたまま火葬場で焼かれていた。
 中国共産党の三段階計画では、新疆を同化した後に最終的にはヨーロッパ占領を目指している。


・「中国の三段階計画」第一段階(2014~2025):「新疆において同化・・・第二段階(2025~2035):・・同化完了後、近隣諸国が併合・・第三段階(2035~2055)「中国の夢の実現後はヨーロッパの占領」(p225)


 著者はスウェーデンに亡命した今でも、中国から監視されており、マスコミの取材を受けた直後に脅迫の電話を受けています。中国の長い手は、どこにでも届くのです。


 この本を読んで、日本のマスコミや政治家で中国寄りの発言や活動をしている人がいますが、それも仕方がないことだと思いました。著者のように中国に脅され、従わざるをえない状況にあると思われるし、中国はウイグルでその冷徹さを実証しているのです。不思議なことに著者について日本ではほとんど報道されていません。報道できないのでしょう。報道できないからこそ事実に近い内容と感じました。


 想像してほしいのですが、仮に沖縄が中国の自治区となり、中国人が大量入植して9割となり、沖縄人はパスポートを没収され、DNAや指紋がデータベースに記録される。週末中国人の家で家事をして夜の性の相手をさせられる。中国人に土地を収容され、学校では中国語で勉強させられる。反政府デモをすれば強制収容所に入れられ、臓器移植のドナーにされ、いつ臓器を摘出されるかわからない。収容所の女性は不妊薬を飲まされる。こうしたことが、現在、実際に起きている可能性があるのです。カヴェーリウスさん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・記者と話すのはやめろ。さもないと、家の外のゴミ箱で細切れにされたお前の姿を記者は見ることになるだろう(p25)


・1997年・・泉がかれた・・・老人たちはすっかりふさぎ込んでいた。「中国人が通った後には、草一本生えない」(p62)


・2006年、北京政府は「双語教育」と呼ばれる母語と中国語を学ぶ・・・法律を定めた・・・新たに採用する教師の80%は中国人にしなければならなくなった(p108)


・2014年、ほぼすべての五つ星ホテルは中国人だけしか利用できなくなった(p141)


・(一体化統合作戦プラットフォーム:IJOP)と呼ばれる秘密の包括システムがあり、全国の収容所の情報が集められていた(p230)


・授業では、中国の公敵であるアメリカを中傷するように指示された。中華人民共和国に最も敵対的な国を分類・・・第一位はアメリカである。第二位が日本・・第三位と第四位にドイツ、カザフスタン(p232)


▼引用は、この本からです
「重要証人: ウイグルの強制収容所を逃れて」アレクサンドラ・カヴェーリウス
アレクサンドラ・カヴェーリウス 、草思社


【私の評価】★★★★★(90点)


目次

第1章 過去の亡霊
第2章 中国の侵攻と破壊―輝く未来と生活の安定を夢見て
第3章 口をテープでふさがれて
第4章 監獄よりも劣悪な環境―世界最大の監視国家
第5章 完全なる支配―尋問とレイプ
第6章 収容所―地獄を生き延びる
第7章 「収容所で死ぬくらいなら、命がけで逃げよう」
第8章 カザフスタン―北京政府に介入される国
第9章 ウイルス―世界への警告



著者紹介

 サイラグル・サウトバイ(Alexandra Cavelius)・・・新疆ウイグル自治区出身のカザフ人。1976年、イリ・カザフ自治州に生まれる。元医師・幼稚園園長。2017年11月から翌年3月まで新疆の少数民族を対象とした強制収容所に連行され中国語教師として働かされる。収容所から解放された直後、今度は自身が収容者として収監されることを知って故国の隣国カザフスタンに逃れるが、不法入国の罪に問われ同国で裁判を受ける。この裁判で中国政府が「職業技能教育訓練センター」と称する再教育施設の実態と機密情報について証言、裁判は一躍世界的な関心を呼び、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングなどの主要メディアで報じられる。カザフスタン政府は亡命申請を却下、滞在許可が切れる直前の2019年6月に国連のとりなしでスウェーデンに政治亡命。現在、安住の地となったスウェーデンで夫、娘、息子の四人で暮らしている。2020年にアメリカ国務省から国際勇気ある女性賞(IWOC)、2021年にはニュルンベルク国際人権賞が授けられた。


ウイグル問題関係書籍

中国人の少数民族根絶計画」楊海英
中国の移植犯罪 国家による臓器狩り」 デービッド・マタス、トルステン・トレイ
ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在」福島 香織
在日ウイグル人が明かす ウイグル・ジェノサイド― 東トルキスタンの真実」ムカイダイス
命がけの証言」清水 ともみ
ウイグル大虐殺からの生還 再教育収容所地獄の2年間」グルバハール・ハイティワジ
「重要証人: ウイグルの強制収容所を逃れて」アレクサンドラ・カヴェーリウス


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