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「黒化する世界 民主主義は生き残れるのか?」北野幸伯

2022/10/04公開 更新
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「黒化する世界 民主主義は生き残れるのか?」北野幸伯


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 最近、専制主義国家が増えています。ブッシュ大統領はイラン、イラク、北朝鮮を悪の枢軸と呼びましたが、著者が注目しているのは最近、ベラルーシ、ミャンマー、アフガニスタンが黒化したことです。ベラルーシは2020年の選挙結果に不満を持った国民がデモを起こしましたがルカシェンコ大統領が武力で鎮圧しています。ミャンマーは2021年にクーデターが発生。アフガニスタンは2021年にアメリカの撤退でタリバン政権となっています。


 この原因は2020年に、中国が香港の自由を制限する法律に反対するデモを鎮圧したことで、デモは違法化して、武力で鎮圧すればいいことに、独裁者たちが気づいたからだ、と著者は分析しているのです。こうした民主主義国家に対抗する権威主義国を著者は、黒色独裁国家と呼んでいます。もちろんウクライナに侵攻したロシア、香港から自由を奪い、ウイグル民族を絶滅させようとしている中国は真っ黒です。


・2020年、香港から自由は、完全に消滅した・・「デモは武力によって鎮圧すればいい」「デモは、法律によって違法化すればいい」・・・この「ノウハウ」が、独裁者たちに伝わったことで、「連鎖黒化」が起こった(p91)


 そして黒色独裁国家ロシアが、なぜウクライナに侵攻したのか。その理由について、全ロシア将校協会イヴァショフ会長の言葉を引用して説明しています。まず、これまでのロシアの戦争はナポレオンが攻め込んできたり、ヒトラーがソ連に侵攻したなど「自衛戦争」であったということです。しかし、現在のウクライナやNATOといった脅威は存在するが、核兵器を持つロシアの生存を脅かすほどのものではないという。


 これまでウクライナにロシアの友好国となってもらうために、ロシアは武力と脅しを使ってきました。しかし、それは逆にウクライナをロシアから遠ざけることになったとイヴァショフ会長は批判しているのです。


 そして現在のロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナをロシアの勢力圏とする目的もありますが、真の目的は、新興財閥、官僚、マスコミ、軍人、警察、諜報機関が、国民から盗んだ富を維持するために戦争を引き起こしたとしているのです。その結果、ロシアは国際的に孤立し、崩壊するだろうと全ロシア将校協会イヴァショフ会長は警告しているのです。


・ウクライナ侵攻、真の目的は・・・反国家的権力と、国民から盗んだ富を守るための手段だ(全ロシア将校協会イヴァショフ会長)(p257)


 最後に、黒の国家のラスボスは中国です。アメリカは英米豪の軍事同盟であるオーカス(AUKUS)、日米豪戦略対話(TSD)、日米豪印クアッド(Quad)など、様々な「戦略的パートナーシップ」を構築しています。これらはすべて中国包囲網なのです。


 では中国の未来はどうなるのかといえば、北野さんは中国の国家ライフサイクルが、日本から30年遅れていることを指摘し、2020年代、中国は「暗黒の30年」に突入すると予測しています。日本のバブル崩壊を中国も体験するだろうということです。


 これまで多くの予測を的中させてきた北野さんの予測が当たるのかどうか、注視していきたいと思います。北野さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・「『民主主義国家』対『専制主義国家』」(バイデン氏)の戦い、米中覇権戦争は、「世界の未来を決める、世界を二分する、善と悪の戦い(p5)


・中国・・・かつて「赤」(=共産主義国家)でした。しかし、現在は、ただの「民族主義独裁国家」(=黒)になっています(p12)


・欧州の「覇権争奪戦略」とは・・欧州連合(EU)を東に拡大していくこと・・・ユーロを基軸通貨化させ、ドルを基軸通貨の地位からひきずり下ろす(p33)


・中国政府は、「ウイグル人女性が子供を産めない体にすること」で、事実上の「民族絶滅政策」を実行しているのです(p123)


・ロジア自民党のジラヴィリョフ議員は、「サルマト1発でイギリスは消滅する。何か問題があるのか?」と発言しています(p242)


▼引用は、この本からです
「黒化する世界 民主主義は生き残れるのか?」北野幸伯
北野幸伯、扶桑社


【私の評価】★★★★★(90点)


目次

第1章 前黒化時代
第2章 連鎖黒化
第3章 白の逆襲
第4章 黒VS白の戦争
第5章 黒化勢力の「核」中国の未来



著者紹介

 北野幸伯(きたの よしのり)・・・国際関係アナリスト。1970年生まれ。19歳でモスクワに留学。1996年、ロシアの外交官養成機関である「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を、日本人として初めて卒業(政治学修士)。メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」(RPE)を創刊。アメリカや日本のメディアとは全く異なる視点から発信される情報は、高く評価されている。2018年、日本に帰国。


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