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「正義なき世界を動かす シン地政学 「安倍後」を読み解くマネー、オイル、暴力の新方程式」猫組長(菅原潮)

2022/09/19公開 更新
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「正義なき世界を動かす シン地政学


【私の評価】★★★★★(91点)


要約と感想レビュー

山口組系経済マフィアであった著者が教える地政学です。著者はロシアがウクライナに侵攻したことで「グローバリズム」が終焉し、戦時経済に移行したとしています。戦時経済とは何かといえば、暴力によって、エネルギーと食糧を奪い合う世界です。各国がウクライナを支援するのは、仮にロシアが勝利すれば、核保有国は何をしても勝つという戦時経済の常識が成立してしまうからなのです。


戦時経済に移行したことで、暴力に対抗できるのは、同量の暴力によってのみです。フィンランド、スウェーデンのNATO加盟はそうした認識の元で判断されているのです。著者は、「中立国スウェーデン」を例にして日本の防衛費拡大に反対を訴えてきた人たちが、この状況をどう説明するのか、と嫌味に問いかけています。


・国際社会には「信頼」など存在しない。「強大な暴力」から自分たちを守るためには、同量の「暴力」を保有するしかない(p130)


この本で興味深いのは、世界のエネルギー事情についての分析でしょう。


まず、グリーンエネルギーへの傾斜によって、石油開発への投資が減少し、エネルギー供給力が減少しました。さらに新型コロナ対策で、金融緩和が行われ大量のマネーが供給されたのです。これらはすべて資源・エネルギーの価格を押し上げる要因とになりました。エネルギー価格の上昇によってオイル・ガスマネーを手に入れたプーチンが、アメリカの軍事介入はないと判断したうえで、「帝政ロシアの復活」という長年の目標達成のためにウクライナ侵攻を決断した、というのが著者の見立てなのです。


生前の安倍元首相はロシアとの緊張を緩和し、「インド太平洋構想」でインドを取り込み、中国包囲網を構築しようとしていました。安倍元首が暗殺されたことは、「インド太平洋構想」を主導した戦略家を失ったことであり、日本のみならず自由主義諸国にとって大きな損失となりました。著者は自称文化人や左翼メディアが「反安倍」を煽ってきた結果、山上という暗殺者を生み出したようなものであり、日本の未来を奪ったとまで表現しています。


・朝日新聞、毎日新聞は安倍氏がスベっても転んでも攻撃を続けた・・・もはや病気である(p57)


石油取引の現場にいただけあって、正確な日本のエネルギー関係の知識、現状認識に驚愕しました。日本の再生可能エネルギーについても、期待通りには絶対に動かない「ポンコツ」と断罪しています。そのポンコツを高額で買い取る「再生可能エネルギー買取制度:FIT法」によって、高額の賦課金がプラスされ日本の電気料金は上昇し続けているのです。


戦時経済となった今、資源、エネルギーの安定確保のためにも、再生可能エネルギーの高額での買い取りの見直しを提言しています。今、投資すべきなのは不安定な再エネではなく石油・ガス・石炭などの安定したエネルギーなのです。マスコミが報じない現場に近い情報だと感じました。★5とします。猫組長さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・ロシアは先進国と違って軍と秘密警察、オリガルヒ(新興財閥)、そしてマフィアの「黒い三権」が国家を支配している(p6)


・「ウクライナ侵攻」において奔走しているのはロシアン・マフィアだ。私の知るロシアン・マフィアの巨大組織はマレーシア、シンガポール、タイに拠点を持つ(p156)


・イギリスは、海の要衝の香港を取り戻したい(p47)


・輸出企業は円安によって大きな利益を得ることになるのだ。その反対側で輸入原価は上昇する・・・ようやくデフレから脱出できる可能性が高い(p231)


▼引用は、この本からです
「正義なき世界を動かす シン地政学
猫組長(菅原潮)、ビジネス社


【私の評価】★★★★★(91点)


目次

第1章 「安倍外交」で一変したユーラシアの地政学的ベクトル
第2章 インフレとグリーン政策と戦争の「不気味なハーモニー」
第3章 「世界再編」へと突き進む赤いロシアの「黒い現実」
第4章 「賢者」だけが知っている泥沼の「アフター・ウクライナ」
第5章 「戦時経済」を勝ち抜くために必要な正しい「投資観」の磨き方
第6章 日本の未来を左右する「エネルギー安全保障」と安倍氏の「遺産」



著者経歴

 猫組長(菅原潮:すがわら うしお)・・・1964年生まれ。兵庫県神戸市出身。元山口組系組長。評論家。大学中退後、不動産会社に入社し、その後、投資顧問会社へ移籍。バブルの波に乗って順調に稼ぐも、バブル崩壊で大きな借金を抱える。このとき、債権者の1人であった山口組系組長を頼ったことでヤクザ人生が始まり、インサイダー取引などを経験。石油取引を通じて国際金融の知識とスキルを得る。現在は引退して評論、執筆活動などを行う。


地政学関係書籍

「日本の地政学」北野幸伯
「正義なき世界を動かす シン地政学」猫組長(菅原潮)
「知らないではすまされない地政学が予測する日本の未来」松本利秋
「不穏なフロンティアの大戦略-辺境をめぐる攻防と地政学的考察」ヤクブ・グリギエル
「学校では教えてくれない地政学の授業」茂木 誠
「大国政治の悲劇 米中は必ず衝突する!」ジョン・J.ミアシャイマー


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