「知らないではすまされない地政学が予測する日本の未来」松本利秋
2021/12/08公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
日本は海洋国家
台頭する中国を念頭に米英豪のAUKUS、日米豪印のQUAD(日米豪印戦略対話)が作られました。今、国際社会では何が起きているのでしょうか。それを読み解くために必要なのが「地政学」なのです。地政学の視点から考えると、大陸を支配しようとする大陸国家とそれを阻止しようとする海洋国家とのバワーバランスが歴史を動かしているのです。
イギリスは日本と同じように海洋国家であり、大陸には直接関与せずに、大陸に強力な覇権国ができないように、その周辺国を支援していくことを基本戦略としています。日本も海洋国家ですから、イギリスの基本戦略を真似るとすれば、大陸には直接関与せずに、周辺の韓国やベトナム、インド、フィリピンなどを支援してくのが、地政学的に正しい戦略なのです。
マッキンダー・・・ハートランドを一手に支配する強力な国家の出現を許してはならないと力説した。ランドパワーとシーパワーとの間のパワーバランスを保つ(p40)
大陸の覇権を目指す国々のバランスを取る
地政学の視点で見てみると、日中戦争から太平洋戦争までの日本の敗戦は、大陸に関与しすぎであったということになります。また、同じ海洋国家同士の日英同盟を破棄するべきではなかったのです。そして、自らが大陸で戦うのではなく、大陸の覇権を目指す国々のバランスを取るような政策を取るべきだったということになります。
面白いのは、現在の中国が、100年前のドイツと似ているということでしょう。ドイツが国家統一で国力を増大させたように中国も国家の膨張を目指しているのです。ドイツの邪魔となったのが、海洋国家のイギリスでした。中国の邪魔となるのが、台湾であり日本なのです。
中国にとってみれば、日本列島弧は中国の海を囲む壁のような存在に見えてくるだろう(p46)
世界は中国の膨張を防ぐために連携
中国は100年前のドイツと同様に膨張しようとし、世界は中国の膨張を防ぐために連携すると考えられます。その具体的な形が米英豪のAUKUSであり日米豪印のQUADなのです。世界的に見れば強力な軍隊を持つ日本を取り込むために、日本のファイブ・アイズ(米国、英国、豪州、カナダ、ニュージーランド)加盟の可能性もあります。そのためにスパイ防止法制定、自衛隊の軍隊化、平和憲法改正が、これからの政治課題としてあがってくる可能性があるのです。
タイトルの地政学で未来が予測できるというのは嘘ではないと感じました。松本さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・南シナ海・・・中国はかつてオホーツク海がソ連の海になっていた状況を再現しようとしている・・・南シナ海は人民解放軍海軍の核弾頭を搭載した攻撃型原子力潜水艦既知となる十分な深度がある(p175)
・中国の世論操作・・・「欧米・白人は中国人を差別している」と人権を武器に使いながら、国内ではウイグル人やチベット人、内モンゴル人に圧政を強いて、香港からは自由を奪っている(p208)
・日本やイギリスのような島国には資源がない。となれば、貿易で栄えるほかの選択肢はない。だからこそ重要なのが自由な海、つまり、自由貿易を担保するシーレーン(海上交通路)となる(p49)
・我々が心しておかなくてならないことは、アメリカは日米安保がなくとも生きていけるが、日本それがなくなると死活問題(p51)
【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
第1章 マクロな視点でコロナ後の世界の動向を分析する地政学の基本
第2章 中国経済に依存した悲劇
第3章 地政学から見た朝鮮半島―日本の戦略的視点とは
第4章 海から見た日本の生き残り戦略
第5章 新段階に入った日本―地政学的立ち位置とクアッドの舞台
著者経歴
松本利秋(まつもと としあき)・・・1947年高知県安芸郡生まれ。1971年明治大学政治経済学部政治学科卒業。国士舘大学大学院政治学研究科修士課程修了、政治学修士。ジャーナリストとしてアメリカ、アフガニスタン、パキスタン、エジプト、カンボジア、ラオス、北方領土などの紛争地帯を取材。
地政学関係書籍
「日本の地政学」北野幸伯
「正義なき世界を動かす シン地政学」猫組長(菅原潮)
「知らないではすまされない地政学が予測する日本の未来」松本利秋
「不穏なフロンティアの大戦略-辺境をめぐる攻防と地政学的考察」ヤクブ・グリギエル
「学校では教えてくれない地政学の授業」茂木 誠
「大国政治の悲劇 米中は必ず衝突する!」ジョン・J.ミアシャイマー
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