【書評】「「自衛隊 元最高幹部たちの告白」現役時代には語れなかった国防の真実【下巻】」
2025/06/25公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(86点)
要約と感想レビュー
内部告発者は処罰される防衛省
この本では、「誰よりも戦争をしたくないのは最前線にいる自衛官」という仮説のもと、「どうしたら戦争にならないで済むか」制服組の元トップに聞いています。
2016年、ネットニュースに元航空自衛隊司令官の織田邦男元空将が、東シナ海上空で中国軍機が空自機に対して攻撃動作を仕掛けたことを記事の中で暴露しました。政府に報告しようとしたところ、防衛省内で情報が止まってしまったので、ネットで公開したのです。
防衛省内では、なんと、織田にばらしたのは誰だと犯人探しがはじまっていたという。どうやら防衛省は、鹿児島県警や兵庫県庁のように内部告発者は処罰されてしまうところなのです。
なお、中国空軍の不適切な行動は、空軍関係者から見ると恥ずかしい愚かな行動であり、告発以降、中国空軍機はおとなしくなったという。
以前にも空自のスクランブル機に対して中国機が攻撃動作を仕掛けてきたことがありました・・政府に上げようとしたら途中で止まって,・・私が書いたあと,中国はおとなしくなりました(織田邦男)(p29)
武器輸出のメリット
織田邦男元空将の提案は、日本製の武器を輸出することです。武器を輸出すると、固定費の回収が容易になり、価格が下がります。さらに、仮に戦闘機を輸出すると相手国は日本と戦争ができなくなります。なぜなら日本が支援をやめたら戦闘機のメンテナンスができなくなるからです。
織田邦男元空将の不満は、日本がウクライナに武器を輸出しないことです。ウクライナは自国の領土内で専守防衛のため戦っているのです。なぜ、ウクライナ国民を守るために日本の対空ミサイルを送らないのか。もし、日本が侵略され専守防衛で戦っているときに支援してもらえなくてもよいのだろうか?ということなのです。
武器輸出・・・ロシアが侵略している中で,武器輸出をウクライナにもしないというのはいかがなものでしょう(織田邦男)(p47)
平和を欲するなら戦争に備えよ
戦争を防ぐ方法は、相手の侵略の意図を抑止することです。抑止するためには、何かやられたらやりかえす能力が必要であり、かつ、殴り返す意図を持っていて、それを相手が理解していることが必要です。安倍元首相は習近平に対して「尖閣での対応において,日本を見誤ってもらったら困ります」と伝えていたという。
これは核兵器についても同じであり、北朝鮮がお金を渡さないなら核を使うと言ってきたときに,どう対応するか考えないといけないのです。
岸田元首相は、「私は被爆地広島出身です。だから,非核三原則を厳守します」と言っていましたが、抑止の考え方としては間違いです。抑止するためには、「被爆地広島出身です。だから日本国民を核から守るために,最適の解はこれです」と具体的な対策を言わなければ、日本国民を守れないのです。
真剣に戦うことを考えていないと抑止になりません。昔のローマ帝国の時代から,「汝,平和を欲するなら戦争に備えよ」という言葉がある(織田邦男)(p59)
原子力発電所はテロ対象設備
防衛関係者から見ると、日本の防衛は心配な点が多いようです。
例えば、日米安保条約ではNATOと違って,日本が攻撃を受けた後、アメリカがどうするかは,アメリカの憲法および議会の手続きに従って決めるという仕組みです。一方、NATOは一国でもやられたら自動参戦と決まっているのです。アメリカは本当に日本を守ってくれるのでしょうか。
また、原子力発電所は,日本以外の国ではテロ対象設備として軍隊が警備しています。しかし、日本では警察が小さな機関銃を持って警備しているくらいなのです。北朝鮮の工作員が原子力発電所を襲撃したら、対処できるのか心配なのです。
読んでいるうちに心配になってきました。著者の皆さんも同じ気持ちなのでしょう。良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・領空侵犯されると領有権を犯されるのと一緒ですから,2015年にシリアから上がったロシアの戦闘爆撃機がトルコの領空を1本か2本犯したら撃墜されました(織田邦男)(p20)
・日本人は甘くて・・F2開発のときに,日本の技術を全部取られました。反対にアメリカの技術は・・土壇場になって秘密だから売らないと言われたのです・・売ってくれないなら自分で作ると言ってソフトウエアを三菱重工が作りました(織田邦男)(p41)
・定員はそのままにして装備というものに対して予算を増やそうと・・定員を増やさずにして部隊をたくさん作ろうとすると・・負担が増えるだけで疲弊していくのではないか(火箱芳文)(P184)
・イージス艦の「あたご」と漁船が衝突・・・謝罪させられ・・大量処分ということになりました。しかし,結局最後の裁判で向こうが悪いということになったのです・・もう事件から4~5年経っているわけです(河野克俊)(P209)
▼引用は、この本からです
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ダイレクト出版株式会社
【私の評価】★★★★☆(86点)
目次
第5章 元空将・戦闘機パイロット:織田邦男氏の告白〜 空から始まる次なる戦争 〜
第6章 第32代陸上幕僚長:火箱芳文氏の告白 〜 3・11東日本大震災と自衛隊の戦い 〜
第7章 第5代統合幕僚長:河野克俊氏の告白 〜自衛隊トップが見た 国防と政治の光と影〜
著者経歴
元空将・戦闘機パイロット:織田邦男
第32代陸上幕僚長:火箱芳文
第5代統合幕僚長:河野克俊
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