「小隊」砂川 文次


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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
「ロシア軍が北海道に上陸し、自衛隊と対峙」2020年9月に元自衛官によって書かれたこの小説は、小隊長が近隣住民の避難をお願いして巡回しているところからはじまります。
小隊長の部隊は、ロシア軍の侵攻を阻止するため、防御陣地を構築しました。ロシア軍は上陸後、しばらく動かず自衛隊ではロシア軍がどの方面から侵攻を開始するのか判断できず、小隊長の部隊はに特科(砲兵)が配属されていない設定になっています。そこに敵の機械化旅団、戦車4台、自走りゅう弾砲2台、歩兵戦闘車9台が進出してきたのです。
・1コ機械化旅団を、わずかに増強された1コ連隊で阻止しようという我々も相当に愚かだが、その陣地に1コ中隊で突き進んでくる敵も引けを取らない(p92)
地雷で敵戦車が破壊され、戦闘が開始されました。戦闘が1時間もすると、敵の自走りゅう弾砲からの砲弾が雨のように降り注ぎ、小隊長の防衛陣地は穴だらけになってしまいます。ロシアのウクライナ侵攻を見てもわかるように侵攻する部隊も守る部隊もプロですから双方に大きな損害が出るのは当然です。ここで言う損害とは、人が砲弾でバラバラになったり、銃撃で腕が吹っ飛び、地雷で吹き飛ばされることもあるということです。
小隊長の脳裏に「陸自の旅団は何をやっているんだ。空自はなぜ出てこないんだ」などとグチが浮かんでも仕方がないのでしょう。目の前で人が死んでいるのです。
・人肉は、バーベキューソースをつけた肉と、そう見た目は変わらなかった(p110)
敵が上陸する前に対処するはずじゃないの?と状況設定に疑問を抱きつつ、住民の避難も自衛隊がやらされるという著者の予想は正しいとも思いました。また、ウクライナへのロシア侵攻でもドローンや対戦車兵器が活躍していますが、戦いとは火力と物量で決まるのだと感じました。武器がなければ、物理的に勝てないのです。
他国による侵攻への準備が大切であることがよくわかりました。また、このタイミングでこの小説が書かれたのは何か意味があるのでしょうか。
砂川さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・なんで敵は、なんかすごい精密兵器とかで攻撃してこないんですかね(p48)
・なぜ戦力を小出しにするのだろうか・・・スホーイか何かがおれたちを丸ごと焼き払っちゃうんじゃないだろうか(p84)
・弾丸と一緒にやってくる音と風は、これほどまでに怖いものだとは思いもよらなかった(p90)
・「現戦力で対処せよ!終わり!」なんのための通話だったのか(p105)
・小隊長、怖かったんです・・・多賀城に、妻と、まだ中一の娘がいるんです(p150)
【私の評価】★★★☆☆(79点)
著者紹介
砂川 文次(すなかわ ぶんじ)・・・元自衛官、都内区役所勤務。2014年秋頃、陸上自衛隊操縦学生であった時に書き上げた投稿作「市街戦」で、2016年の第121回文學界新人賞を受賞しデビュー。
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