【書評】「欲望という名の電車」テネシー・ウィリアムズ
2025/04/07公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(71点)
要約と感想レビュー
2024年、沢尻エリカ主演で上演
「鉄塔文庫」読書会の課題本ということで、読んでみました。この戯曲はブロードウェイで上演、映画化された名作ということで、2024年には日本でも沢尻エリカ主演で上演されています。しかし、読んだ印象は出演者がそろってダメダメ人間で、学ぶところがないという印象でした。
出演者を見てみましょう。アメリカ南部ニューオーリンズに、ポーランド系の夫スタンリーと名家の妻ステラが住んでいます。そこに、ステラの姉のブランチがやってくるのですが、どうやら夫が亡くなり、家や土地などの財産も失ってしまったようなのです。
(ブランチ)いったいあんたは、病気やお葬式の費用をどうやって支払ったと思ってるの?死ぬってお金のかかるものなのよ、ミス・ステラ!・・あの屋敷をなくしたのは私のせいだと思って!なくしたのは私のせい?(p31)
酒とギャンブルという誘惑
財産を失ったブランチは、妹のステラ夫婦に面倒を見てもらっているのに、ポーランド系のギャンブル好きの夫スタンリーが気に入りません。おなじようにスタンリーもお嬢様気取りのブランチが気に入らないのです。
夫スタンリーは昼間から酒を飲みながら、ポーカー賭博をして、気に食わないとステラを殴るような乱暴者です。名家出身のブランチと合わないのは当然でしょう。
ブランチは妹のステラに、スタンリーは浮気の相手にはいいけど、結婚して子供を作るなんて問題外と忠告します。しかしステラは、恋は盲目なのか、スタンリーとの生活を変えようとはしないのです。
(ステラ)でもねえ、男と女のあいだにはいろいろなことが起こるものよ、暗がりのなかでは・・そのためにほかのことはみんな・・どうでもよくなってしまうことが。(ブランチ)それは野獣の欲望よ・・ただの・・<欲望>!(p99)
尻軽女に堕落していたブランチ
ブランチは、スタンリーのポーカー賭博仲間のミッチと恋仲になり、結婚を考えます。結婚さえれば、ステラ夫婦の面倒にならなくてすむし、夫の収入で落ち着いて暮らせるというわけです。
ところが、スタンリーがブランチの悪い噂を聞きつけてくるのです。財産を失ったブランチは、ホテル住まいをしながら、男なら誰とでも寝るような生活をしていたというのです。
近くの陸軍兵舎では、ブランチと性的関係を持たないよう出入り禁止になっていたくらい町中、誰でも知っているというのです。財産を失ったブランチは、自暴自棄になり性的欲望に走り、尻軽女と評価され、ミッチとの結婚も失うことになるのです。
(ブランチ)私のほしいのは休息!もう一度のんびりと息をしてみたい!そう私はミッチがほしいわ・・猛烈に!考えてみて!そういうことになったら!私はここから出て行ける(p118)
「欲望という名の電車」とは
「欲望という名の電車」とは、英語でA streetcar named desireですので、路面電車のように欲望に乗ってしまえば、決まった目的地に行き着くということなのでしょう。スタンリーは酒とギャンブルと女という欲望に乗り、ステラとブランチは男と寝るという欲望に乗っているのです。
あえて学ぶとすれば、欲望とは生物として繁殖するために必要なものですが、欲望のままに生きるのは、まずい目的地に到着することがあるということでしょうか。ここまで欲望をコントロールできない人間は、あまりいないけどな!ウィリアムズさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・(ブランチ)「欲望」という名の電車に乗って、「墓場」という電車に乗りかえて、六つ目の角でおりるように言われたのだけれど「極楽」というところで(p12)
・(ブランチ)屋敷を抵当にしてお金を借りた会社の名前・・私たちの先祖が、思慮も分別もなしに、祖父だの父だの叔父だの兄弟だのが、土地と引きかえに次から次へ、女狂いの一大叙事詩(p56)
・(ユーニス)(スタンリーは)女房をなぐっといて帰れだなんてよく言えたもんだね!帰るもんか!もうすぐ赤ん坊が生まれるからだだっていうのに!あんたなんかね、ごろつきだよ!犬畜生のポーラックだよ!(p83)
▼引用は、この本からです
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テネシー・ウィリアムズ、新潮社
【私の評価】★★★☆☆(71点)
著者経歴
テネシー・ウィリアムズ (Tennessee Williams)・・・1911‐1983。アメリカの劇作家。ミシシッピ州コロンバス生れ。不況時代のセントルイスで不幸な家庭環境のもと青春時代を送る。各地を放浪、大学、職をかえながら、創作をしていたが、1944年自伝的作品「ガラスの動物園」がブロードウェイで大成功し、1947年の「欲望という名の電車」、1955年の「やけたトタン屋根の猫」で2度ピューリッツァー賞を受賞。その名声の裏で、生涯背負いつづけた孤独との葛藤から私生活は荒れていた。ニューヨークのホテルの一室で事故死
鉄塔文庫関係書籍
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック
「O・ヘンリー ニューヨーク小説集 街の夢」オー・ヘンリー
「猫を抱いて象と泳ぐ」小川 洋子
「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」川本直
「日本語が亡びるとき: 英語の世紀の中で」水村 美苗
「夜の樹」トルーマン・カポーティ
「性と芸術」会田 誠
「ずっとそこにいるつもり?」古矢永 塔子
「欲望という名の電車」テネシー・ウィリアムズ
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