「O・ヘンリー ニューヨーク小説集 街の夢」オー・ヘンリー
2024/01/17公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
賢者の贈り物
オー・ヘンリーの短編小説といえば、「賢者の贈り物」「最後の一枚」を誰でも一度は読んでいるのではないでしょうか。
この短編集の舞台となる1900年代のニューヨークは、移民が押し寄せ、犯罪も多く、現代のニューヨークとは大違いです。安い給料でこき使われる労働者や浮浪者が描かれています。その一方で巨大なビルが建設され、大時計、デパートができ、芸術や文化に興味を持つ人も描かれ、経済の発展の兆候も見てとれます。
そうした中で「賢者の贈り物」は貧乏な若者二人が主人公です。彼女はクリスマスプレゼントとして彼が大切にしていた懐中時計用の鎖を買うために、大切な髪を切って売ってしまうというお話です。それを知らない彼は彼女のために時計を売って、髪留めを買っていたというオチなのですが、オー・ヘンリーは、この若者たちは一見賢くないように見えるが、実は最高の賢者なのだと言っているのです。
・人生はむせび泣きとすすり泣きと微笑みでできていて、いちばん多いのはすすり泣きなのだ(賢者の贈り物)(p285)
貧乏二人暮らしは最高の幸せ
実は同じような短編で「愛の苦労」があります。こちらは、画家になろうとする青年と、ピアニストになりたい女性のお話です。二人は貧乏の中で同棲しますが、彼を絵の学校に行かせるために、彼女はピアノの家庭教師になって金を稼ぎはじめます。そうしているうちに、やっと彼の絵が売れはじめ、二人は奮発してごちそうを食べて、成功を祝うのです。
ところが実は、彼女はクリーニング屋でバイトをして稼いでいたのであり、彼はそのクリーニング屋のボイラ室でバイトしていたというオチでした。オー・ヘンリーは、この若者たちのように貧乏な中で二人でアパートに暮らすことこそ、最高の幸せであると言っているのです。
・わたしとしては、金持ちの若者にはこうアドバイスしたい・・持っているものはすべて売り払い、貧しい者たちにゆずれ(愛の苦労)(p93)
100年以上前のニューヨーク
ニューヨークという大都市で、貧乏の中で必死に生きる人を題材に、最後にオチが来るというパターンは読みやすく楽しめました。100年以上前のニューヨークは現在とまったく違うので、柱脚がなければ理解できないことが多いし、柱脚が面白いのです。
家具つきの部屋だと、周囲はあなたが飢えていても気がつかないなどと、ピリリと利いた風刺が秀逸でした。一度は読んでいただきたいものです。ヘンリーさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・女性たちは、例外なく、週払いの分割で自分のクレヨン・ポートレートを作ってもらっている(探偵たち)(p68)
・マンハッタン観光・・たくさんの珍しい風景に首を伸ばしてきょろきょろ見る観光客を「rubberneck(ゴム首)」と呼ぶようになったのは1890年から(p32)
・彼(マイケル王子)は、時計の小さな金属の針の動きに支配されてあくせくと不安げに駆けずりまわる人々に、いつも胸を痛めていた(キューピッドの王子と大時計)(p35)
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
警官と賛美歌
ゴム族の喜劇
キューピッドの王子と大時計
アイキー・ショウエンスタインの惚れ薬
探偵たち
天気のチャンピオン
円を四角に
愛の苦労
コスモポリタンはカフェで
巡回の合間
この街の声
真夏の騎士の夢
幻のブレンド酒
終わらない話
ネメシスと菓子売り
恐ろしい夜の都
成功の査定者
「罪人」は
感謝祭の二人の紳士
カクタス・シティからの買い付け人
屑レンガ街
賢者の贈り物
最後の一枚
著者経歴
オー・ヘンリー(O. Henry)・・・本名:William Sydney Porter。1862年、ノースキャロライナ州に生まれる。20歳のときにテキサス州のオースティンに移り、銀行に勤めるが、まもなく横領の容疑がかかり退職。後に起訴されると、中米のホンジュラスに逃亡。妻が病気に倒れたと聞いて戻り、服役する。模範囚として過ごし、小説を書きはじめる。ニューヨークにやってきたのは1902年。翌年から短編作家として人気を博す。1910年没。
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