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【書評】「蔦重の矜持(つたじゅうのきょうじ)」車 浮代

2025/07/11公開 更新
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「蔦重の矜持(つたじゅうのきょうじ)」車 浮代


【私の評価】★★★★☆(82点)


要約と感想レビュー


出版プロデューサー蔦屋重三郎

前回「蔦重の教え」で江戸時代にタイムスリップしたサラリーマンが、20年後にもう一度タイムスリップして蔦重こと蔦屋(つたや)重三郎と再会します。それも吉原の大火のど真ん中にタイムスリップして、死にそうになっている歌麿を助けるという設定です。


歌麿は、美人画で有名ですが、狂歌の歌集に精緻な動植物の挿絵も描いていている三大絵師の一人です。


またこの頃は、寛政の改革の影響で、歌舞伎など娯楽の勢いが落ちていました。そこで蔦屋重三郎のアイデアで写楽こと勝川春朗が、歌舞伎役者の「大首絵」28図を書き上げています。背景を黒雲母摺(くろきらずり)で真っ黒に光らせ、江戸っ子を驚かさせたのです。


デビュー前の歌麿に会ったってこと?・・・葛飾北斎や、東洲斎写楽には会ったぞ・・だが歌川広重は、蔦重が亡くなった年に生まれているから、会えるはずもない(p66)

上に政策あれば下に対策あり

寛政の改革では、美人画を規制するため幕府は遊女を描くことを禁止します。すると蔦重は町娘をモデルにした美人画を発表します。それに対し幕府は、「絵の中に特定の人物の名前を入れること」を禁じるのですが、蔦重は、衣装に家紋を入れたりして名前を入れなくてもわかるようにしました。


「上に政策あれば下に対策あり」というように、蔦重は幕府の質素倹約を素直に受け入れない胆力があったのです。


しかし、蔦重が企画した書籍「文武二道万石通」では寛政の改革を皮肉ったのですが、著者の朋誠堂喜三二(ほうせいどうきさんじ)は、藩主からきついお叱りを受けて絶筆することになります。


また、遊女の出張サービスを描いた「仕懸文庫」も発禁となり、著者の京伝は手鎖の刑に処されました。蔦重自身も身上半減の刑を受け、財産を半分没収されてしまうのです。


「寛政の改革」・・遊女を描くことを禁止する・・町娘をモデルにした美人画を発表した(p198)

蔦重の矜持

蔦重の矜持としては、「自分の好きなことを仕事にして、人に喜ばれることほど幸せなことはない」とか、「やっぱり本ってえのは面白ぇよな。遠い異国の話でも、こうやって何百年も伝わってくんだよな。書いた人間はとっくに死んでんのによ」などが紹介されています。本当に蔦重が語った言葉なのか、どこかに出典があるのでしょうか。、


前作は2013年出版でしたので、大河ドラマ「べらぼう」に合わせて作られた一冊なのでしょう。車さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・馬琴は十返舎一九(じっぺんしゃいっく)と並び、日本で初めて、執筆だけで生計が立てられた作家となった。それも蔦重が「作家にも潤筆料(原稿料)を支払う」という、今では当たり前の道筋をつけたおかげだ(p106)


・経営者である蔦重が、相手にどう思われようが関係なく叱れるのは、店を守るためと、相手を育てるためだ。叱られてふてくされるものは去ればいい。恨まれて嫌がらせをされたとしても、そんな輩に居座られるよりましだ(p177)


▼引用は、この本からです
「蔦重の矜持(つたじゅうのきょうじ)」車 浮代
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車 浮代 (著)、双葉社


【私の評価】★★★★☆(82点)


目次


序 タケの決意
第一章 爺ちゃんの秘訣
第二章 Gと爺、江戸へ行く
第三章 傲慢の行方
第四章 タイムスリップの謎
第五章 学術的に考える
第六章 戸惑いからの脱却
第七章 立ち上がるタケ
第八章 芸術は爆発だ
第九章 辛い記憶
第十章 旅の終わり


著者経歴


時代小説家、江戸料理文化研究家。セイコーエプソンのグラフィックデザイナーを経て、故・新藤兼人監督に師事しシナリオを学ぶ。2024年春、江戸風レンタルキッチンスタジオ「うきよの台所」をオープン。江戸料理の動画配信も行っている。国際浮世絵学会会員。


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