「セーヌ川の書店主」ニーナ・ゲオルゲ
2024/04/02公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
船を書店に改造
セーヌ川に係留された船を書店に改造した五十歳男のペルデュは,お客様にぴったりの本をお勧めする本のソムリエなのです。お客様が欲しい本を名指しても,「その本はあなたに合いません。長い目で見れば、どんな男と結婚するかより、何を読むかの方が重要なんですよ」などと説教してしまう書店主なのです。
そこにやってきたのが,若くしてベストセラー作家となったマックス。ところが,マックスはもう本を書けないと主人公ペルデュに告白するのです。悩んでいるのはマックスだけではありません。主人公ペルデュも,二十年前に振られた恋人マノンのことを思い続けている変人なのです。そこに新しい女性との出会いがあり,心が揺れ動いていたのです。
わたしは本を薬のようなものとして売っている(p31)
運河の旅はどたばたと続く
その新しい女性も夫から捨てられ,家も金もなく失意のどん底にいるのです。主人公ペルデュは、その女性に家具を贈呈するのですが,女性は机の中に手紙を発見します。その手紙は,主人公ペルデュが二十年前に恋人マノンから送られたものだったのです。
ついに主人公ペルデュがその手紙を読むことになります。その手紙には恋人マノンの秘密が書かれていたのです。主人公ペルデュは、「なぜ,すぐに手紙を読まなかったのか!」と後悔し,ショックで彼は船で旅に出るのです。その旅の途中で出会うタンゴの情熱,ドイツの中年女性三人組の魅力,溺れ死ぬ鹿との出会いなど運河の旅はどたばたと続くのです。
心の準備ができたら読もうと考えていた。一年後。あるいは二年後に。二十年も放っておくことになろうとは、いつのまにか五十歳の変人になってしまうとは、想像だにしなかった(p61)
言葉が人をコントロールしている
主人公ペルデュは、本を読んでいるわりには,恋愛がうまくないので不思議に感じました。ペルデュは,いつも謝る弱気な女性に対して,「人が言葉を選んでいるのではなく,よく使う言葉の方が人をコントロールしている」と説教しています。
その割には自分をコントロールできているとは思えないのです。「今日一日を乗り切れば、この後も同じように生きていける」なんて名言をつぶやきながら、ペルデュはなんとか生活しているのです。
欧米人はこんな人ばかりなんだろうか、と思いながら読んでいました。こんな変な人たちは珍しいと確信を持てないので、もう少し外国の小説を読んでいきます。ゲオルゲさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・マックスはところどころ鉛筆で下線を引き、疑問点を横に書き記していた。まさにそうあって欲しい、理想的な本の読み方だ(p149)
・年長者として助言を求められることがあれば、こういってやろう・・「不安には決して耳を傾けるな!不安が高じると馬鹿になる」(p138)
・食事に行きませんか?なんて訊いちゃいけない。そうじゃなくて、何を料理しようかと訊くのさ。そうすれは彼女はノンと答えられない(p71)
【私の評価】★★★★☆(84点)
著者経歴
ゲオルゲ,ニーナ(Nina George)・・・1973年ドイツ生まれ。作家、ジャーナリスト、コラムニスト。小説、ミステリー、ノンフィクションを含め27冊の本、および600以上の短編とコラムを執筆する。現在も精力的に執筆活動を続け、ドイツ・ベルリンと、フランス・ブルターニュの両方で暮らしている
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