「会社を救うM&A、つぶすM&A: 成功する中小企業の事業承継」中澤宏介
2024/04/03公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★★☆(86点)
要約と感想レビュー
M&A仲介業者は買い手の利益を優先する
最近、中小企業の事業継承M&Aが多いと聞いて、手にした一冊です。M&Aで事業の売り手にとっては、M&Aは初めての経験であり、仲介業者の言うがままになってしまう場合が多いという。
M&A仲介業者の問題は、売り手と買い手から手数料を取るにもかかわらず、買い手がリピート顧客になると見れば、買い手側の利益を優先することです。事業継承に悩んでいる中小企業に対して、「御社を買収したい大企業がある」とアプローチしてくるM&A仲介業者が多いのです。
売り手とすれば、大企業から声をかけられるのはうれしいでしょうが、買い手が一社に限定されているとすれば、買い手しだいで安く買い叩かれる可能性が高くなるのです。M&A仲介業者は、継続してM&Aを行う買い手のために売り手を探して、安い価格でも取引をまとめて手数料が得られればよいわけです。
仲介業者は、必ずしも中立的な存在ではなく・・・リピーターになる買い手の都合を考慮して動く(p61)
よくあるトラブル
よくあるトラブルは、M&Aの情報が洩れることや、M&A仲介報酬額が過大となることなどです。M&Aの情報が洩れると、従業員のモラルが低下したり、取引先との関係が悪化する可能性があります。社員が退職したり、取引先が現金取引になってしまう場合があるというのです。
また、報酬については、総資産レーマンによる報酬体系が多いのですが、設備の多い業態では仲介報酬額が過大になることがあるという。飲食店舗の居抜き物件の売買を、飲食店の「事業譲渡」のM&A仲介として扱い、不動産仲介の手数料よりも高額な費用を請求する場合もあるというのです。
お勧めする相談相手は、「売却の話が漏れたとき、どのような影響があるかを理解しており、信頼に足る行動を取る方」(p92)
理想は買い手候補を探して入札
著者の理想の中小企業M&Aは、仲介業者が売り手のために、買い手候補を探して入札を行うことです。しかし実際には、仲介業者は買い手本位であることが多く、追加で買い手候補を探すことはしないのです。手間が増えるだけだからです。
事業継承に悩む中小企業ができることは、親族継承、社内継承、第三者継承(M&A)すべてを並行して検討して、M&A仲介業者だけを選択肢としないことでしょう。M&A仲介業者を使うとしても、売り手の立場で動いてくれる会社を使うことですが、これがまた難しいようです。
M&Aについてはもう少し調べてみます。中澤さん、良い本をありがとうございました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・「あの大手企業が御社を買収したいと言っている」と買い手に確認せずに言うこともあります・・これがM&A仲介業の実態です(p193)
・事業拠点ごとに細切れの売却・・売り手ファーストの姿勢でない(p74)
・仲介業者との契約を解除できる条件は、一般的にアドバイザリー業務契約書に含まれていないため、売り手側から解除条項を追記・修正する(p139)
・ファイナンシャル・アドバイザリー契約はこの敵対関係を生む要素が強く、意見交換をする信頼関係が売り手と買い手に構築されず、いつまでたっても話が進まない(p218)
【私の評価】★★★★☆(86点)
目次
第1章 中小M&Aを成功に導く前提知識
第2章 中小M&Aを成し遂げる13のステップ
第3章 困難に直面する前にセカンドオピニオンを利用する
第4章 良い仲介業者はどこにいるのか
著者経歴
中澤宏介(なかざわ こうすけ)・・・プロアクティブパートナーズ合同会社代表。慶應義塾大学卒業。デロイトトーマツコンサルティング、大和証券にて、M&Aファイナンシャルアドバイザリー業務に携わる。大手上場企業の資本提携、事業買収・売却案件を推進し、日本の新聞紙面をにぎわすM&A案件を手掛けた。2019年に担当した中小企業のM&A仲介業務でずさんな実態を目の当たりにし、その在り方に疑問を持つ。日本経済の礎である中小企業に貢献したいと考え、2020年、中小M&Aのアドバイザリー業務を展開するプロアクティブパートナーズ合同会社を設立。セカンドオピニオンサービスに定評があり、多数の支援実績を誇る
この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
この記事が気に入ったらいいね!
コメントする