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【書評】「良い戦略、悪い戦略」リチャード P.ルメルト

2025/06/11公開 更新
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「良い戦略、悪い戦略」リチャード P.ルメルト


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー


スティーブ・ジョブズの戦略

アメリカの大学の先生は、企業戦略をどのように解説しているのでしょうか。まず、良い戦略の事例の紹介が続きます。


アップルを追放されたスティーブ・ジョブズが業績低迷するアップルに戻ったとき、ジョブズはデスクトップとノートパソコンをそれぞれ二機種に絞り込み、プリンターなどの周辺機器はすべて切り捨てました。アップルは代理店も六系列のうち五系列を切り、製造部門も廃止し、台湾の製造請負に切り替え、オンライン公式ストアで消費者への直販を始めたのです。


これらの対策は、説明されると教科書的で当たり前の内容なのですが、それにアップル社内の人間が誰も同じことができなかったことに企業戦略の難しさを著者は指摘するのです。


大規模な組織の多くは、内部に問題を抱えていることが多い。つまり、外部との競争よりも、時代遅れの業務慣行、官僚主義、既得権益、縦割り組織、旧態依然の経営手法などのほうが深刻な問題となっている(p110)

良い戦略の事例

その他の良い戦略の例では、トヨタのハイブリッド車の開発が紹介されています。アメリカで燃費の悪いSUVが流行している中で、トヨタは10億ドル以上をハイブリッド車の開発に投資していたのです。


また、アメリカだけで5000店舗を持つ世界最大のスーパーマーケットであるウォルマートの強みは何なのでしょうか。それは、ウォルマートでは150店舗の地域ネットワークが経営の基本単位として仕入れをしているというのです。つまり、ウォルマートは仮想で100店舗以上、100万人の人口を基本単位とすることで、価格交渉力を高め、常に低価格の商品を提供し続けられるというのです。


グラフィックGPUに特化したエヌビディアの戦略も見てみましょう。エヌビディは、6カ月ごとにGPUの性能を2倍にすることで、他社と差別化しています。そのために、エヌビディアでは開発チームを3つ作り、それぞれ18カ月のサイクルで製品を開発しますが、3つの製品サイクルをずらすことで、6か月ごとに新製品リリースすることができるようにしているのです。


このように戦略とは、個別企業毎に違うものであり、後でよく考えると合理的なものでわかるという種類のもののようなのです。


クラウン・コルク&シールは、三大メーカーを利益率で大幅に上回っている。なんと平均19%だ・・工場が他社に比べ小型であること・・各工場に余剰のラインが設置されると共に原料在庫を抱え、急な注文に応じる体制が整っている・・小ロット生産に徹してる(p199)

良い戦略の作り方

では、実際に良い戦略を考えるには、どうすればよいのでしょうか。


例えば、製造業であれば、まずはボトルネックを見つけ、短期的な投資が必要であってもボトルネックを解消する必要があります。ボトルネックの表現を変えれば、大きなちがいを生み出せるちがいでしょう。最も効果の上がる一点に集中し、実現可能な目標を立てるのです。


大企業であれば、少人数のチームを編成し、数ヶ月かけて調査をすることになるのでしょう。会社の商品の買い手は誰なのか、競合相手は誰で、どんな強みを持っているのか、どんな新しいサービスが可能か、開拓可能な見込み客は誰かなどをまとめるのです。


競争優位を拡げる・・デュポンは、もともとは爆薬の製造でスタートした。第一次世界大戦が終わると、化学の基礎研究と化学品製造のスキルを活かして、セルロース、合成ゴム、塗料に進出。さらに合成物質からポリマーへと手を広げ、1935年にはアクリル樹脂のルサイト、フッ素樹脂のテフロンを開発する(p232)

良い戦略の特徴

良い戦略を観察していると、「一点豪華主義」であるという。つまり、妥協よりも一点集中を選び、万人のための一般的なものを選んではいけないのです。もちろん、戦略はやってみて、うまくいかなければ修正していく必要があります。


例えば、スターバックスは当初、イタリア風コーヒーを提供する店としてはじまりました。しかし、お客であるアメリカ人の反応を見ながら、オペラを流すのをやめ、ミラノ風を打ち切り、椅子も導入し、テイクアウトが多いので、紙コップもとりいれたのです。


やはり、常に考え、実験してみるということが大切ではないかと感じました。ルメルトさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・抽象的な理論やフレームワークを参照するよりも、「師匠」ならこんなときどう言うだろうと考えるほうが、はるかに示唆に富むし、的確な評価が得られる(p359)


・テイラー・・「あなたのできる重要なことを10項目列挙したリストをつくることをおすすめします。リストができあがったら、一番目の項目から実行してください」・・テイラーは、1万ドルの小切手を受け取ったのだ(p343)


・トラガルファー海戦・・フランスとスペインは、・・トラガルファー岬に33隻の戦艦を終結。27隻で編成されたイギリス海軍と対峙した・・ネルソン提督の考えた戦略は・・二列縦隊をつくり、フランス=スペイン連合艦隊にいきなり真横から突っ込ませたのである(p3)


▼引用は、この本からです
「良い戦略、悪い戦略」リチャード P.ルメルト
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リチャード P.ルメルト(著)、日経BP


【私の評価】★★★★☆(81点)


目次


序章 手強い敵

第1部 良い戦略、悪い戦略
 第1章 良い戦略は驚きである
 第2章 強みを発見する
 第3章 悪い戦略の四つの特徴
 第4章 悪い戦略がはびこるのはなぜか
 第5章 良い戦略の基本構造
 
第2部 良い戦略に活かされる強みの源泉
 第6章 テコ入れ効果
 第7章 近い目標
 第8章 鎖構造
 第9章 設計
 第10章 フォーカス
 第11章 成長路線の罠と健全な成長
 第12章 優位性
 第13章 ダイナミクス
 第14章 慣性とエントロピー
 第15章 すべての強みをまとめる―NVIDIAの戦略
 
第3部 ストラテジストの思考法
 第16章 戦略と科学的仮説
 第17章 戦略思考のテクニック
 第18章 自らの判断を貫く


著者経歴


リチャード P.ルメルト(Richard P. Rumelt)・・・戦略論と経営理論の権威。マッキンゼー・クォータリー誌は「戦略の戦略家」、「戦略の大家」と命名。コアスキルに注力する企業こそが最善の結果を残すという考え方を提示し、卓越したパフォーマンスを出す企業は業界に左右されるのではなく個々の企業の能力によることを説明。リソース・ベースト・ビューの提唱者の1人であり、市場支配力をベースとしてきたそれまでの戦略論を転換させた。ハーバード・ビジネススクールにて博士号取得。現在はUCLAアンダーソン・スクール・オブ・マネジメントのハリー・アンド・エルザ・クニン記念講座教授。サミュエル・ゴールドウィン・カンパニーといった小企業から、シェル・インターナショナルといった大企業、またNGOや教育機関に至るまでコンサルティングを行っている。


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