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「ストーリーとしての競争戦略」楠木 建

2014/08/29公開 更新
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ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

うまくいったストーリーが戦略

戦略というとかっこいいのですが、戦略とはいったい何なのでしょうか。この本では、戦略とは経営者が頭の中に描いた道筋、ストーリーであるとしています。戦略が正しいから成功するわけではなく、うまくいったストーリーが戦略だというのです。


なぜなら、未来は不確実だからであり、どんなに精密に分析しても、結局のところ将来どうなるかは正確にはわからないからです。そうした前提のもとに、うまくいった戦略で進んでいこうという明確な意思を持つしかないわけです。


それだけでは一見して非合理だけれども、ストーリー全体の文脈に位置づけると強力な合理性を持っている(p318)

優れた戦略は一見非合理

優れた戦略は、一見非合理だという。だれもが、「そんなバカなことを・・」と考える。ですから、同じことをする人がなかなか出てこないのです。


例えばガリバーは中古車買取り専門店です。本来、買い取った中古車は、自分で売ってしまえば儲けが大きいのに、オークションですぐに売ってしまう。これを寿司屋に適応すると、マグロを買ってきて、寿司にして自分で売るのが当然なのに、マグロを買って、そのまま他の寿司屋にマグロを転売するようなもの。売れ残りのリスクを減らして、確実に儲ける戦略と言われれば確かにそのとおりなのです。


また、アスクルでは直接販売業者でありながら、既存の文具店を「エージェント」として取り込んでいます。既存の文具店は需要地に近いところにあるわけですから、都市部以外の小規模事業所を、既存の問屋・小売業者を取り込むことで開拓できたのです。直販会社で中抜きが競争の源泉でありそうなのですが、逆にの要素が差別化の源泉となっているのです。


ガリバーが1994年に事業を開始するまで、なぜ同じようなことをやる企業が現れなかったのでしょうか(p408)

絶対正解の戦略はない

JT(日本たばこ産業)ではタバコ以外の収益を確保するために、製薬業界に参入しました。こうした新規事業への投資ができるのは、タバコ事業からの安定した収益があり、このフリーキャッシュ(現金)で未来の収益源を探し、開拓しようとする戦略なのです。


セブンイレブンでは、店舗の一品一品を仮説に基づき仕入れることを戦略としています。そのために、店舗指導を担当する「オペレーション・フィールド・カウンセラー」(OFC)が、店舗から成功した事例や仮説が本部に集められ、本部からOFCを通じて各店舗に集約されたさまざまな成功事例がフィードバックされているのです。


多くの会社の例が示され、絶対正解の戦略はないと断言する潔さが印象的な一冊でした。一番いい戦略は、いろいろ小さくやってみて、うまくいったら大きくやる、という試行錯誤ではないでしょうか。うまくいくまで試行錯誤すれば、必ずうまくいくのですから。楠木さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・フォードは頑張りが利かないのが問題だ。しかし、マツダは何でも頑張ればなんとかなると思っている。マツダは何を頑張らなくてもいいかをはっきりしなければいけないし、フォードはマツダの頑張りに学ばなくてはいけない(p158)


口で言うのは簡単ですが、ストーリーの全面書き換えは一般にきわめて困難です。・・・革命的なストーリーの書き換えに成功した企業の例・・IBM・・ネット証券の先駆的企業へと脱皮を遂げた松井証券(p459)


ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
楠木 建
東洋経済新報社
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【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

第1章 戦略は「ストーリー」
第2章 競争戦略の基本論理
第3章 静止画から動画へ
第4章 始まりはコンセプト
第5章 「キラーパス」を組み込む
第6章 戦略ストーリーを読解する
第7章 戦略ストーリーの「骨法10カ条」



著者経歴

楠木建(くすのき けん)・・・一橋ビジネススクール教授。1964年東京生まれ。89年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略。


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