「アーモンド」ソン・ウォンピョン
2024/09/03公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
主人公は笑わなかった
頭の中にアーモンド状の恐怖をコントロールする偏桃体があります。主人公は、そのアーモンドが壊れているようなのです。恐怖もなければ、笑いもない。主人公は、周囲の人たちがなぜ泣くのか、笑うのか,よくわからなかったのです。
病院で主人公の病気が告げられると、母親は待合室で泣き続けました。母親には、主人公がいじめられる未来が見えていたのです。そして、泣く母親を怒鳴るおじさん。韓国の日常なのでしょうか。
泣く母親に対して、おばあちゃんは、主人公の頭をなでながら、「世界で一番かわいい怪物。それがおまえだ!」と奇妙な表現で励ましてくれるです。
「ばあちゃん,どうしてみんな僕のこと変だって言うの?」「おまえが特別だからだろ。人っていうのは,自分たちと違う人間がいるのが許せないものなんだよ。よしよし,うちのかわいい怪物や」(p21)
主人公は泣かなかった
ドラマは、主人公の母親とおばあさんが暴漢に殺されると急展開していきます。主人公はただ、それを見ているだけだったのです。主人公は母親が経営していた中古本屋を、一人でやりくりします。一人ぼっちになった主人公は、泣くことはなかったのです。
家族を殺されても普通に生活している主人公が、学校で噂になっているとき、学校に暴れ者のゴニが転入してきます。そしてゴニは、主人公を焼却炉の前に呼び出します。恐怖を感じない主人公は、呼び出しに応じ、殴られるのです。しかし主人公には恐怖を感じないので、殴られ痛みに耐えるだけです。
そして、主人公はゴニに「僕は演技はできない」と告げるのです。他の人もゴニを怖いと演技しているだけで、実はゴニをバカにしているのだと解説するのです。
ゴニが殴られながら耐えたのも,そんな通過儀礼のためだろう。でも僕は,そういうのはみんな,弱い証拠だと思う,弱いからこその,強さへの憧れでしかない(p249)
怒鳴りちらすのが普通なのか
ネタバレになるのでストーリーには踏み込みませんが、下の階にいつも怒鳴りちらしている爺さんがいたり、感情を爆発させる人が多くて韓国社会としては平均的なのか、演出なのか判断できませんでした。韓国社会を背景としているので、日本人の感覚とは違うのだろうと思いながら、日韓の文化差のほうに興味が湧きました。
実際に住んで、仕事をしてみないと本当の肌感覚はわからないのかもしれません。サスペンスドラマとしては、すばらしいと思いました。ウォンピョンさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・本は,僕が行くことができない場所に一瞬のうちに僕を連れて行ってくれた。会うことのできない人の告白を聞かせてくれ,見ることのできない人の人生を見せてくれた(p81)
・学校という社会の中では,誰だって本当の自分ではいられず,与えられた役割を演じるだけの小さなパーツでしかないのだ(p144)
【私の評価】★★★★☆(80点)
著者経歴
ソン・ウォンピョン(Sohn Won-Pyung)・・・ソウル生まれ。西江大学校で社会学と哲学を学ぶ。韓国映画アカデミー映画科で映画演出を専攻。2001年、「シネ21」映画評論賞受賞。初の長編小説『アーモンド』でチャンビ青少年文学賞を受賞し、2017年文壇デビュー。
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