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「考える粘菌 生物の知の根源を探る」中垣 俊之

2024/09/04公開 更新
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「考える粘菌 生物の知の根源を探る」中垣 俊之


【私の評価】★★★☆☆(76点)


要約と感想レビュー

昭和天皇も研究していた粘菌

粘菌といえば、昭和天皇が粘菌の研究をされており、天才生物学者の南方熊楠(くまぐす)が昭和天皇に粘菌標品を進献したり、直接ご説明したことが知られています。また、映画版の「風の谷のナウシカ」には出てきませんが、漫画版「風の谷のナウシカ」では敵の生物兵器として粘菌が出てきます。宮崎駿も粘菌に注目していたのです。


粘菌は巨大なアメーバのような単細胞生物で、べたべたしたゲル状の物質のようであり、物のようにも見える生きものです。粘菌は1時間に数センチ移動、変形することができ、均一性の高いので一部を切り取ると、一つの個体として再生することもできるのです。


昭和天皇も・・粘菌の分類研究に専心され、新種を発見されております(p59)

粘菌に意思はあるのか

粘菌は周囲の環境を感じて、活動を変えます。例えば、粘菌を針でつつくと、細胞内の流動が停止します。粘菌はセロファンやガラスの上を這いますが、食品用ラップフィルムは這いません。粘菌が広がった寒天に電気を流すと、粘菌は陰極へ移動するという。


さらに、粘菌を迷路に繁殖させて、迷路の2箇所に餌を置くと、2つの餌をつなぐ経路のうち長いほうの管がやせ細って切れて、餌と餌の最短経路の管が太くなって残るという。こうした実験から単細胞生物である粘菌にはたして意思のようなものがあるのか、それとも単なる反応の結果、最短距離を残すことになったのか、著者は考えているわけです。


粘菌は・・重力、磁場にも反応することが報告されています(p55)

粘菌の条件反射

また、粘菌はパブロフの犬のように条件反射をします。この本で紹介している実験は、粘菌が湿度90%から70%にすると、動きを止めることを利用します。実験では、一時間に一回約10分間、湿度を湿度90%から70%に下げます。これを三回繰り返し、四回目は湿度を下げません。100回ほどの実験の結果、約半数の粘菌が四回目の刺激を予測して動きを止めたという。


単細胞生物に意思があるのか、それとも単なる反射なのか、興味深いですね。中垣さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・進化の歴史を振り返れば、神経系が現れたのはずいぶんと後になってからのことで、それまでの生きものはずっと神経なしに情報処理をしてきたのです(p36)


・ゴニウムという微細藻類は、16個の単細胞性藻類が4×4の平面状に並んでくっついた多細胞性藻類です・・16個の細胞は、個々に鞭毛打を繰り返すわけですが、どのように協調すれば個体全体が旋回遊泳できるのか(p204)


▼引用は、この本からです
「考える粘菌 生物の知の根源を探る」中垣 俊之
中垣 俊之、山と渓谷社


【私の評価】★★★☆☆(76点)


目次

第1章 単細胞の情報処理
第2章 粘菌とはどんな生きもの?
第3章 粘菌が迷路を解く
第4章 危険度を最小にする粘菌の解法
第5章 両立が難しい目的をバランスさせる粘菌の能力
第6章 時間記憶のからくり
第7章 迷い、選択、個性
第8章 粘菌の知性、ヒトの知性



著者経歴

中垣 俊之(なかがき としゆき)・・・1963年愛知県生まれ。北海道大学電子科学研究所教授。粘菌をはじめ、単細胞生物の知性を研究する。北海道大学薬学研究科修士課程修了後、製薬企業勤務を経て、名古屋大学人間情報学研究科博士課程修了。理化学研究所基礎科学特別研究員、北海道大学電子科学研究所准教授、公立はこだて未来大学システム情報科学部教授を経て2013年より現職。2017~2020年北海道大学電子科学研究所所長。2008年、2010年にイグ・ノーベル賞を受賞。


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