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「ホッケースティック幻想―「地球温暖化説」への異論」A.W.モントフォード

2024/09/05公開 更新
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「ホッケースティック幻想―「地球温暖化説」への異論」A.W.モントフォード


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

ホッケースティック曲線とは

ホッケースティック曲線とは、ペンシルバニア州立大学教授のマイケル・マンが作成した20世紀に地球の気温が急上昇しているように見える図です。2000年のIPCC第三次報告書に記載され、2021年のIPCC第6次報告書にも類似の図が記載されています。


このホッケースティック曲線が有名になったのは、IPCCの1990年の第一次評価報告書に掲載された図と差が大きかったからです。第一次評価報告書では、世界の気温は11世紀から15世紀まで中世の温暖期と呼ばれる期間があり、その後には小氷期と呼ばれる温度の低い期間が18世紀まで続いて、その後の気温上昇は中世とあまり変わらない図だったのです。


中世の温暖期とその後の小氷期を知っている多くの科学者が、ホッケースティック曲線に違和感を持ちました。この本は、マッキンタイア氏がホッケースティック曲線の元になったデータから、どのように補正してホッケースティック曲線が作られたのか検証した経緯を、著者がまとめたものとなっています。
 

急激な地球温暖化を示すマン作成のグラフ(通称、ホッケースティック)・・それを見た定年退職後のマッキンタイアは、そこに中世の温暖期もその後の小氷期も示されていないことに不審を抱き、その元の論文及びそれを大きく取り上げているIPCCの報告書(2001)を調査することにした(p17)

ホッケースティックの元データ

まず、マッキンタイア氏は元データを検証しました。注目すべきは、1659年以降の気温データがそろっている英国中部温度記録では、1730年以前の70年分がカットされていました。小氷期の部分を削除していたのです。


また、気温の代替として112個のデータを使っていますが、1つ以外、すべて年輪のデータでした。その年輪のデータも、データ過剰にならないように一部データを除いているというので、除いたデータを整理すると、20世紀に温暖化しないものであったという。つまり、20世紀に温暖化したように見える年輪のみが、データ分析に利用されていたというのです。


さらに公文書中のデータは新版ではなく旧版を使っており、新板のデータでは1980年から年輪巾が小さくなり温暖化していないというデータになっていたのです。そもそも、年輪と気温は相関関係がないと考えられるのです。


年輪巾年代記56・・マンは、このデータの旧版を用いていた・・公文書中の新版は現在では・・1980年代の間に年輪巾の増加傾向が劇的に反転し、それまでの増加分を全て失っていることを示している(p58)

ホッケースティックを作る特殊な分析法

多くの気温データの主成分分析で標準化すると、地球の気温の平均値に対してどのくらいの偏差が年別に変わってきたのかがわかります。不思議なのは、オーストラリアの気温データを元にマンが主成分分析した結果はホッケースティック状なのに、標準的な主成分分析を行った結果、ホッケースティック状にならなかったのです。


また、ランダムな数列をマンの主成分分析のアルゴリズムに入力すると、如何なる場合もホッケースティックに似た形状の主成分が出力されたというのです。


実は、マンが採用した標準化は、通常の平均ではなく、短期平均標準化だったのです。短期平均標準化は、全体の平均をとるのではなく、短い期間に分割シて平均を取ることで、20世紀に気温が急上昇したようなデータがでる仕組みなのです。説明が難しいので、このサイトが「短期平均標準化」についてわかりやすい解説をしています。


数列群を、マンのアルゴリズム中に入力すれば、如何なる場合も、・・ホッケースティックに似た形状のPC1が何時も得られるのである(p88)

作られたホッケースティク曲線

このようにホッケースティック曲線は、20世紀になって急に気温が上昇したように見えるよう、データを選別し、標準化のやり方も特殊な方法を使っていることがわかりました。これを補正と呼ぶのか、改ざんと呼ぶのかわかりませんが、グレーゾーンぎりぎりを狙って、地球が温暖化しているように努力しているのだと思いました。


私個人の考えとしては、地球の気温上昇を抑えようという志は素晴らしいと思いますが、CO2排出のない縄文時代7000年前に海水面が数メートル高かったこともあるし、氷河期には百数十メートル海面は低かったように自然に気温は変動するのです。


自然の気温変動よりも、CO2排出による気温上昇が間違いないと断言するのは、自然と科学の力を軽視しているように感じました。モントフォードさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・年代記10と11は計器による2つの温度測定記録・・英国中部温度記録と欧州中部温度記録である・・・マンの数値は、まる1年の平均ではなく、実は毎年、6月、7月、8月の平均値に基づいていたのである(p56)


・マンの論文・・代替年代記は実に多彩であった。その主なものは年輪であった(p38)


・マッキンタイアは・・20世紀後半の年輪幅は、計器測定記録に見られる温暖化に平行して、増加してはいないという乖離問題を、ブリッファが報告していたことを明確に覚えていた(p40)


・生の代替え記録である年輪年代記もまた、同じ温暖化を示していなければならない。しかし、PC分析に掛けられなかった他の生の代替年代記は、20世紀にそのような温暖化を示していないのである(p49)


▼引用は、この本からです
「ホッケースティック幻想―「地球温暖化説」への異論」A.W.モントフォード
A.W.モントフォード、第三書館


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

1部 「ホッケースティック」の解明への取り組み
2部 マッキンタイアの二人組と科学界の対決
3部 世界の桧舞台での二人組の活躍
4部 科学の堕落



著者経歴

A.W.モントフォード (A.W.Montford)・・・イギリスの作家であり、ブログ運営者。


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