「泳げないカワウソの生きるヒント~「成長」をめぐる生物学」稲垣栄洋
2024/08/19公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
要約と感想レビュー
カワウソの赤ちゃんは泳げない
農学博士による生物の不思議な生態です。タイトルの「泳げないカワウソ」の意味は、正確には「カワウソの赤ちゃんは泳げない」という意味です。つまり、カマキリなど昆虫は、生まれたその瞬間から狩りの手法を身につけていますが、カワウソは教えてもらわないと泳げないというのです。
一般に哺乳動物の生まれたばかりの赤ちゃんは、一人で生きていくことはできません。そこには、長い進化の中でそうなる必然性があったということです。哺乳類は知能を使って、本能だけでは伝えられないノウハウを伝えることで子孫を残してきたのです。
カワウソは、主な生活の場である水中を泳ぐ技術を、生まれながらにして身につけていません(p3)
哺乳類の事例
哺乳類が本能ではなく、知能を使っている事例を見ていきましょう。
チーターは子どもたちに狩りのテクニックを教えます。気づかせずに近づいて、追いかけ、殺すプロセスを教えるのです。
また、動物園で人間に育てられたゴリラは、子育てができません。ゴリラの子どもは、ゴリラの両親に育てられて、初めて子育てができます。
カバは、口を大きい方が勝ちというルールを持っています。殺し合いをしないルールを自然と作って、伝えているのです。
このように哺乳類が生き残っている理由として、知能によって環境に合った行動を子孫に伝えていけるという仮説が成り立つわけです。
哺乳類は、強いからではなく、弱くても生き残るために、「子育て」をするようになったのです・・哺乳類は、「知能」を発達させました(p45)
おばあちゃん仮説
最後に著者は人の「おばあちゃん仮説」を紹介しています。「おばあちゃん仮説」とは、ヒトの女性が子どもを産まなくなった後も長く生きて、家族の一員としてとどまり続けるのは子育てを手伝っているからというものです。
実は、おばあさんやおじいさんが子育てを手伝っているということが、ヒトを最強の霊長類とした可能性があるのです。子育ての過程で、子どもにおじいちゃん、おばあちゃんが知恵を伝えているのかもしれませんね。おじいちゃん、おばあちゃんを大切にしたいものです。
稲垣さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・アベコベガエルのオタマジャクシは、25cmほどの大きさ・・大人のカエルになると、6cmほどの大きさになってしまう(p14)
・体の大きなカブトムシ・・幼虫のときに食べたエサの量で決まります(p19)
・サソリ・・クモ・・強い存在です。そのため、卵を守り、子育てができるのです(p32)
【私の評価】★★★☆☆(77点)
目次
1章 三億卵を産むマンボウの生きるヒント ?大人と子どもはどこが違う?
2章 泳げないカワウソの生きるヒント ?「遊び」と「学び」
3章 豹変する親ギツネの生きるヒント ?「ふつう」ってなんだろう
4章 踏まれたままの雑草の生きるヒント ?成長の計り方
5章 頭を垂れるイネの生きるヒント ?成長する力は、どこにある?
著者経歴
稲垣栄洋(いながき ひでひろ)・・・1968年静岡県生まれ。岡山大学大学院修了。農学博士。専門は雑草生態学。農林水産省、農林技術研究所等を経て、現在、静岡大学農学部教授
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