ビジネス戦略と生物の生き残り戦略は同じ「38億年の生命史に学ぶ生存戦略」稲垣栄洋
2020/12/25公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(82点)
要約と感想レビュー
ビジネスと生物の生き残り戦略は似ている
雑草の研究者が教えるビジネスと生物の生き残り戦略は似ているというお話です。ビジネスでは市場を細分化し、自分の強みを活かせるターゲットと自分のポジションを考えます。
例えばトラとライオンは似ていますが、ライオンはサバンナ、トラは森林と活動圏が違います。ヒトコブラクダは暑さに強く、フタコブラクダは寒さに強いと市場に最適化されているのです。すべての生き物は、「ナンバー1になれるオンリー1の場所」を持っているとも言えるのでしょう。
しぼり込んだほうが、ナンバー1になりやすいのである・・・1971年に創業したとき、スターバックスは「スターバックス・コーヒー・ティー・アンド・スパイス」という名前だった(p51)
環境に適合したものだけ生き残る
面白いのは、シャベル像という口の長いゾウがいたとか、ギガントピテクスという巨大猿がいたとか、いろいろな古代生物が出てくるところです。こんな古代生物がいたんだ!古代生物の辞書を買ってしまいました。
また、進化の特徴として、哺乳類のイルカと魚類のサメがよく似た形をしていることを紹介し、目指すべきものが同じであれば、最終的に同じ答えにたどりつくという説明も納得です。こんなにも多様な生物に変異し、環境に適合したものだけ生き残るという動物の進化の過程に驚くばかりです。
ウマの祖先であるエオヒップスは前肢に4本、後肢に3本の指がある。しかし、速く走るために、中央の1本の指だけを発達させて、他の指は退化させてしまった(p53)
企業の倒産も進化の一過程
企業の倒産も、進化の一過程と考えれば、進歩に必要なことであり、落ち込まず次に進めるように思えました。新しい市場ができたら様々な企業が参入し、市場に最も適合した企業が生き残るのです。
著者の専門は雑草であり、雑草は予測不能な環境では、数を増やして勝負しているという。トップ企業も予測不能な市場に対して、多くの商品を供給し、うまくいったものだけ残すという戦略をとっている会社もあるなと共通点を感じました。
生物もいろいろな工夫をしますが、結局、実際やってみないとわからないというのはビジネスでも同じなのです。稲垣さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・コア・コンピタンスの周辺で新しい事業ドメインを探す・・・勝ち続けることは難しい、しかし、ずらし続けることはできる(p38)
・オートバイのヤマハ発動機は、もともとはヤマハ楽器だった・・・戦時中に行ったプロペラ製造の技術を活かしてオートバイの製造に乗り出したのである(p39)
・何でもありますは、何もないのと同じなのである(p52)
・大型の動物は、天敵となる捕食動物から身を守るために、体を大きくしている・・・ネズミやウサギは天敵から逃れるために、わざわざ体のサイズを小さくしていた(p151)
【私の評価】★★★★☆(82点)
目次
1 生き物にとって競争とは何か?
2 生き物にとって変化とは何か?
3 生き物たちのオンリー1戦略
4 生き物たちの戦略
5 生物進化のイノベーション
著者経歴
稲垣栄洋(いながき ひでひろ)・・・1968年静岡県生まれ。静岡大学農学部教授。農学博士、植物学者。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て、現職
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