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「バッタを倒すぜアフリカで」前野ウルド浩太郎

2024/08/21公開 更新
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「バッタを倒すぜアフリカで」前野ウルド浩太郎


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

サバクトビバッタ集団別居仮説

前著「バッタを倒しにアフリカへ」の続編ということで読了しました。前著では論文が完成していなかったので、今回が論文完成報告となります。著者は現在、国際農林水産業研究センターで主任研究員となり、サバクトビバッタの生態解明に取り組まれています。安定した職場が見つかってなによりです。


著者のサバクトビバッタの生態の新発見は、集団別居仮説です。つまり、バッタが大群で移動しているとき、オスとメスは別々の集団として移動しているというものです。そしてメスが性成熟すると、オスの集団のほうに移動していくという仮説です。これまで、性成熟したメスのいる集団はオスの比率が高いことが観察されていたのですが、その理由は明確ではなかったのです。


「相変異」を示し、大群を成して移動するものを「トビバッタ」、はっきり示さないものを「イナゴ=単なるバッタ」と区別し、それぞれ「Locust」、「Grasshoppper」と記す(p105)

異文化交流の本質

前野さんの本が面白いのは、アフリカでの現地人や欧米の研究員との交流を追体験することで、異文化交流の本質を感じることができることでしょう。例えば、モロッコ国立サバクトビバッタ防除センターで施設を借りて飼育実験をしようと問い合わせたら、外部から1000万円以上の研究費を獲得して、現地人の給与を出してくれと言われたこと。


著者の専任運転手が、タクシー事業をはじめたいと著者から30万円の出資をしてもらって車を買ったが、雇った運転手はサボったり、車を持ち逃げされたり、現地人でも人を見る目が必要であること。
コロナでアフリカに戻れないときに、著者の専任運転手の生活のために100万円を仕送りしたら、近所の人にも寄付して3ヶ月で使い切ってしまったこと。
 

アフリカからイカやタコやマグロを輸入している人がいますが、アフリカでビジネスをすることの困難さが、この本を読むとよくわかるのです。


モーリタニアではヤギがご馳走だ・・・ヤギはその場で捌かれ、みんなで一緒に食べる(p60)

日本の研究機関に就職

大学の博士課程修了後、バッタが大量発生しているアフリカでバッタの研究をすれば、日本の研究機関に就職できるかもしれないという著者の読みは、現実化しました。アフリカの砂漠という過酷な環境で、実際にバッタを観察しながらデータ採取に取り組んだ著者の頑張りが、「集団別居仮説」の発見につながったと感じました。


あとは著者自身が別居中なので、性成熟したヒトの女性を観察してアタックするのみですね。前野さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・モーリタニアは世界有数のバッタの発生源・・モーリタニアと言ったらタコが有名(p26)


・バッタは、ふ化してから1か月弱かけて成虫になり、2週間ほどで性成熟し交尾・産卵する・・最短で2か月ちょいで、世代が回る(p147)


・マウンティング中のオスは、前脚と中脚のカギ爪をメスの胸部に引っ掛けることで、下から蹴り上げるメスの背中にとどまることができていたのだ(p349)


▼引用は、この本からです
「バッタを倒すぜアフリカで」前野ウルド浩太郎
前野ウルド浩太郎、光文社


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

第1章 モーリタニア編―バッタに賭ける
第2章 バッタ学の始まり
第3章 アメリカ編―タッチダウンを決めるまで
第4章 再びモーリタニア編―バッタ襲来
第5章 モロッコ編―ラボを立ち上げ実験を
第6章 フランス編―男女間のいざこざ
第7章 ティジャニ
第8章 日本編―考察力に切れ味を
第9章 厄災と魂の論文執筆
第10章 結実のとき



著者経歴

前野ウルド浩太郎(まえの うるど こうたろう)・・・昆虫学者(通称:バッタ博士)。1980年秋田県生まれ。国際農林水産業研究センター(国際農研)主任研究員。秋田中央高校卒業、弘前大学農学卒業、茨城大学大学院、神戸大学大学院博士課程修了。博士(農学)。京都大学白眉センター特定助教を経て、現職。サバクトビバッタの防除技術の開発に従事。著書に、25万部突破の『バッタを倒しにアフリカへ』、第4回いける本大賞を受賞した『孤独なバッタが群れるとき』などがある


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