「バッタを倒しにアフリカへ」前野ウルド浩太郎
2022/11/01公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
アフリカでバッタの研究
小学生の頃、ファーブル昆虫記を読んで昆虫学者になりたいと思った著者は、弘前大学でイナゴの研究で博士号を取りました。しかし、日本では博士号を取っただけでは教授になれません。論文を書いて成果を出さなければ、職を得られないのです。そこで、著者はアフリカでバッタの研究をしようと考えたのです。
アフリカではバッタの大量発生で農作物が被害を受けて大問題になっており、現地でバッタ研究で成果を出せば、日本の研究機関に就職できるかもしれない!という邪(よこしま)な思いからの出発です。
著者が向かったのはアフリカ西端のモーリタニアです。日本人は13人しかいませんが、日本で消費されているタコの約3割はモーリタニアから輸入されているという。著者は海外派遣支援制度を利用してモーリタニアのバッタ研究所に2年間の特別研究員として飛び込んだのです。
博士号を取得した研究者は、就職が決まるまでポスドクと呼ばれる・・・ポスドクは博士版の派遣社員のようなものだ(p106)
アフリカではトラブルの連続
面白いのは、やはり海外ならではのトラブルの連続ということでしょう。
通関で賄賂を渡さないので、10倍の手数料をふんだくられる。
約束の時間に集まらない。
研究所から給料をもらっているのを隠して、給料を要求される。
サソリに刺されて、足が腫れる。
30万円のバッタケージが錆びて壊れる。
そもそも干ばつでバッタがいない。
日本の常識は、世界の非常識といわれるように常識が違うのです。だから海外は面白いと考えるのか、やっぱり日本がいいと考えるのか人によるのでしょう。
モーリタニアでは、ふくよかなほうがモテる。そのため、少女時代から強制的に太らせる伝統的な習慣がある(p207)
ポスドクの不安定な身分の実態
もちろん私は、海外は面白いと考えるタイプです。カザフスタンに2年間滞在したときも同じようなことがあったな~、と楽しく読めました。
また、博士号をとったポスドクと呼ばれる研究者の不安定な生活の実態も伝わってきました。成果を出さなければ研究者としては「死」が待っているだけなのです。これだけ追い詰められれば、アフリカでもどこでも行こうと考えるのも納得なのです。
著者のバッタへの研究愛と、リアルのアフリカが面白い一冊です。★4としました。前野さん、よい本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・モーリタニア・・大人一人を月2万円で雇える(p70)
・暇なときに寂しくなっている。なるべく仕事を詰め込んで忙しくし、寂しさを相殺するようにした(p78)
・相変異を示すものがバッタ、示さないものがイナゴと呼ばれる(p113)
・電線に小鳥が5羽止まっています。銃には銃弾が3発。さあ、何羽仕留められますか?」「もちろん3羽!」「ノン!正解は1羽です。他の鳥は一発目の銃声を聞いたら逃げるだろ?」(p188)
【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
第1章 サハラに青春を賭ける
第2章 アフリカに染まる
第3章 旅立ちを前に
第4章 裏切りの大干ばつ
第5章 聖地でのあがき
第6章 地雷の海を越えて
第7章 彷徨える博士
第8章 「神の罰」に挑む
第9章 我、サハラに死せず
著者経歴
前野 ウルド 浩太郎(まえの うるど こうたろう)・・・昆虫学者(通称:バッタ博士)。1980年秋田県生まれ。国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(国際農研)研究員。秋田県立秋田中央高校卒業、弘前大学農学生命科学部卒業、茨城大学大学院農学研究科修士課程修了、神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。博士(農学)。京都大学白眉センター特定助教を経て、現職。アフリカで大発生し、農作物を食い荒らすサバクトビバッタの防除技術の開発に従事。モーリタニアでの研究。
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