「最高の授業: スパイダー討論が教室を変える」アレキシス・ウィギンズ
2024/12/26公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
スパイダー討論の方法
ディベート(討論)について調べていました。欧米の学校では、生徒が円形に座り、自由に発言する「ソクラテス・セミナー」、「ハークネス・メソッド」という討論形式の授業が行われています。
欧米では発言する人だけが評価される傾向があるため、全員が発言し、他人の意見を否定しないなどを「ハークネス・テーブル・ルール」として事前に定め、教師がファシリテーターとなって討論を進めるのです。
この本で紹介する「スパイダー討論」は、この「ハークネス・メソッド」の発言者を見える化することで、より生徒が自律的に討論を学ぶことができるように改良したものになっています。つまり教師はファシリテーターではなく、生徒の発言を記録する人になるのです。
具体的には、生徒の配置どおりに名前を書き、話した生徒から、次に話した生徒に向けて線を引き、次の生徒が話したらその生徒に向けて線を引くことで、クモの巣のような図を描きます。さらに、生徒の名前の脇に、誰かの発言を遮ったら「I」、関係ないことをしていたら「D」、本質的なコメントをした「?」など記号を記録していくのです。
ほとんどの高校で行われているソクラテス・セミナーやハークネス・メソッドは、いまだに教師がリードする形になっています(p17)
スパイダー討議の効果
実際にスパイダー討議をやってみると、話し好きの生徒からたくさんの線が出て、静かな生徒からは線がほとんど出ていないことに生徒たちが気づくという。発言が活発なグループでは、生徒たちは自分たちがどれだけ相手の話を遮っていたのかを知ることになるのです。
そうした場合には、生徒たちに何を改善する必要があるのか質問することで、順番に話す、話すのを控える、ほかの生徒に話を振るなどの意見が自然に出てくるという。つまり、スパイダー討議は、恥ずかしがり屋の生徒に発言を促し、話したがり屋には本当の意味での話し合いのリーダーになるように促す効果があるのです。
著者はスパイダー討議には、声高に主張することよりも、よく相手の話を聞き、多様な意見が出ることに価値があることを体験で教えてくれるとしています。
懐疑的なワークショップ参加者がスパイダー討議を試した結果、生徒たちのやる気が上昇したこと、そしてより良い学習成果が達成できたと、とても驚いているという報告を受けています(p140)
スパイダー討議の実際
スパイダー討議では、教師がファシリテートせず、生徒の自主的な発言に任せるので、うまくいくのか懐疑的な人も多いという。また、実際には反抗的で敵対的な生徒が討論を混乱させたり、そもそも討論に参加しない生徒もいます。
それでも生徒はスパイダー討議の中で、相手の意見を敬意を持って聞くと評価され、遮って話をすると評価されない経験を通して、よい討論の形を自問し、高い学習効果が得られるとしています。
そもそも日本の授業では、生徒が発言する機会が少ないので、そこからのスタートだなと感じました。ウィギンズさん、良い本をありがとうございました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・チームとして、テキストに対してどれだけクリティカルにアプローチできたか、互いのアイディアをどれだけ上乗せできたか、互いをより新しく、より良い理解に導けたか、が評価されます(p14)
・人の発言を途中で遮らないようにしたり、参加者ができるだけ均等に、バランスよく発言したりするなど、効果的に協力し合うことを重要視してください(p42)
・9年生は30分くらいで、12年生は45~50分を設定しています(p53)
・悪い、反抗的、感情的、難しい、敵対的な生徒の行動というのは、多くの場合、家庭で深刻な問題を抱えている(p204)
【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
第1章 なぜ、スパイダー討論の経験者が必要なのか?
第2章 スパイダー討論をはじめる
第3章 スパイダー討論における最初の数週間
第4章 初期の段階でよく起こる問題―恥ずかしがり屋とスーパースター(話したがり屋)
第5章 次に訪れるつまづき―あのとても難しいクラス!
第6章 評価は手段!武器ではない
第7章 スパイダー討論がもたらすもの
第8章 先を見据えて―年間を通してスパイダー討論をする
著者紹介
アレキシス・ウィギンズ(Alexis Wiggins)・・・米国北東部の私立校や5か国のインターナショナル・スクール等で中学・高校生を教えた経験をもつ。現在はテキサス州にあるJohn Cooper Schoolで高校英語科の学科長を務めるかたわら、スパイダー討論を世界的に広める教育NPO「CEEL」を運営している。ラーンズケイプ代表
この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
この記事が気に入ったらいいね!
コメントする