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「オホーツク核要塞 歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略」小泉 悠

2024/08/16公開 更新
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「オホーツク核要塞 歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略」小泉 悠


【私の評価】★★★☆☆(76点)


要約と感想レビュー

オホーツク海の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦

テレビでロシアの専門家としておなじみの小泉さんの一冊です。本書のテーマは、ロシアの弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(以下SSBN)がオホーツク海をパトロールしているという内容です。


ロシアはオホーツク海と北極のバレンツ海にSSBNを配備しています。そして、米軍の接近を阻止するためオホーツク海周辺に地対艦ミサイル、対艦ミサイル搭載艦や航空機を配備しているのです。


そしてオホーツク海におけるロシアSSBNの核抑止パトロールは、衛星写真の分析から概ね1か月から2か月弱で、各SSNBが1年に1回程度だという。予算がないのか、老朽化のためかわかりませんが、ロシアではSSBNが切れ目なく常に海に出ているという体制ではないのです。


なお、中国も南シナ海にSSBNをパトロールさせており、南シナ海に人工島を造成し軍事基地を作っているのは、SSBNへの接近や攻撃を阻止するためなのでしょう。


オホーツク海がロシア原潜の「聖域」である・・冷戦期のオホーツク海は北極のバレンツ海と並ぶSSBNのパトロール海域であり、その周辺には何重もの防衛網が張り巡らされて「要塞」化されていた(p26)

ロシアの強襲揚陸艦とSSBN

ロシアは、1970年代末に2隻の強襲揚陸艦を太平洋艦隊に配備しました。また、1980年代にロシアがオホーツク海を要塞化し、弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(以下SSBN)を配備していることが明確になってきました。日本としては、北海道とその周辺海域でロシアの接近を阻止するため、F15戦闘機やイージス艦を配備し、P-3C対潜哨戒機による対潜水艦戦闘能力を高めてきたのです。


日本は北朝鮮の核兵器と弾道ミサイル開発に対し、イージス艦やパトリオットPAC-3を配備してミサイル防衛としています。オホーツク海にいるロシアのSSBNの弾道ミサイルも迎撃可能なはずです。なお、ロシアはウクライナ侵攻で数千発の弾道ミサイルを発射しており、迎撃ミサイルの在庫不足が心配です。


オホーツク海の外堀がソ連本土から2000kmにまで広がっていた・・・・陸上自衛隊は敵を日本本土に引き込んで戦う内陸持久戦略を転換し、北海度とその周辺の海峡をソ連に明け渡さないための北方前方防衛戦略が採用された(p179)

ロシアの核抑止戦略

ロシアは公表資料の中で、「軍事紛争がエスカレーションする場合には、非戦略核兵器の行使の準備及び決意をデモンストレーションすることは実効的な抑止のファクターとなる」としており、核兵器を脅しに使うことを明確にしています。実際、ロシアのウクライナ侵攻でもウクライナに対して核兵器の使用を前提とした訓練を実施するなど、核兵器を持っていることは、大きな抑止力となっているのは事実なのです。


またロシアには、先制核攻撃でロシア指導部が全滅した場合、生き残った戦略核部隊に報復命令を伝達するシステムが存在するという。


広島、長崎に核兵器が使用されて来年で80年となりますが、核兵器が使用される可能性が高まっているように見えます。私達にできることは、迎撃ミサイルを購入し、地下シェルターを増設するくらいしかないのです。小泉さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・わが艦隊の艦艇は誰をも威嚇はしないが、祖国の安全をあえて犯すいかなる侵略者に対しても当然の反撃を加え得る用意が常にある(セルゲイ・ゴルシコフ(ソ連海軍総司令官))(p46)


・スターリンによれば、恒常的作戦要因を具備できるのは社会主義国だけであり、したがって、資本主義国と社会主義国が戦争になった場合は必ず社会主義国が勝利する(p54)


・米海軍は1979年にバレンツ海でもソ連海軍の海底ケーブルを見つけ出し、盗聴器を取り付けるようになった(p101)


▼引用は、この本からです
「オホーツク核要塞 歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略」小泉 悠
小泉 悠 、朝日新聞出版


【私の評価】★★★☆☆(76点)


目次

はじめに―地政学の時代におけるオホーツク海
第1章 オホーツク海はいかにして核の聖域となったか
第2章 要塞の城壁
第3章 崩壊の瀬戸際で
第4章 要塞の眺望
第5章 聖域と日本の安全保障
おわりに―縮小版過去を生きるロシア



著者経歴

小泉悠(こいずみ ゆう)・・1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所特別研究員を経て、東京大学先端科学技術研究センター


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