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「世界の潮流2024-25」大前 研一

2024/05/28公開 更新
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「世界の潮流2024-25」大前 研一


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

暴君リーダーが増える世界

大前さんの本は、だいたい読むことにしているのでご紹介します。現在の国際情勢はロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ侵攻を含めて紛争が増えています。著者は、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩総書記を3大暴君と呼んでいますが、いずれも日本の隣国であり、心配なところです。


それ他の例として、ベネズエラと北アイルランドの情勢を紹介しています。ベネズエラのマドゥロ大統領は昨年、隣国ガイアナの「エセキボ地域」は自国のものだと宣言しました。1899年の国際仲裁裁定においてガイアナの領土と認められたのに、無効を主張しているのです。


イギリスの北アイルランドもカトリックのアイルランド人の人口が増えています。北アイルランドがイギリスから独立し、アイルランド共和国と一緒になる可能性があるというのです。


食料・エネルギー価格の高騰・・特にウクライナやロシアで生産された穀物が世界に入ってこなくなっている・・「中国経済の減速」も無視できない(p76)

独裁者のジレンマ

中国については、習近平政権は鄧小平が生前に定めた「国家主席は2期10年で引退」というルールを無視して、3期目に入りました。完全な独裁者というわけです。


著者は中国の経済は0成長であると説明しています。特に投資用不動産が、30億人分あることを説明し、その多くが内装ができていない単なるドンガラなのです。したがって、仮に投資用不動産を購入しても、さらに購入金額の3割を出して内装工事を行わなければ、貸したり、販売もできないのです。そもそも不動産の供給が多すぎて、買う人がいないのですから、どうにもならないというわけです。


著者は独裁者となった習近平は、「独裁者のジレンマ」に落ち込んでいると説明しています。つまり、権力が集中したがゆえに、失敗の責任もすべてて習近平にあるということです。ロシアのプーチン大統領も、大統領就任から24年目を迎えてましたが、出口の見えないウクライナ侵攻に、責任を取らなくてはならない立場にあるのです。


過剰な不動産投資により、30億人分の空き家を抱える中国(p84)

ロシアと平和条約を結ぶ

大前さんの日本への提言は、お金持ちの移民の受け入れとロシアと平和条約を結ぶことです。


前者はオーストラリアでは「銀行に1億円を預けてくれた人には、パスポートをあげる」ということが行われており、これを真似ればいいということです。現在日本では、技能実習制度で外国人を受け入れていますが、安い賃金で働く貧乏な外国人が日本に多く滞在しています。安い労働者へのニーズがあるのだと思いますが、治安の悪化という副作用が顕在化しているのです。


また、後者については、アメリカ一辺倒ではない立ち位置で、中国や北朝鮮に対する抑止力としてロシアを取り込むというものです。安倍元首相もロシア関係を重視していました。しかし、ウクライナ侵攻しているロシアと手を結ぶのはタイミングが最悪です。


このように大前さんの提案は、正論で筋が良いのですが、実際にやろうとするとハードルが高いと感じました。ただ、小野寺五典さんが防衛大臣として、安保関連3文書を成立させたように、たとえ困難でも正論を通さなくてはならないこともあるのだと思います。大前さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・元々「禁じ手」と言われていた中央銀行による国債の買い入れ(p112)


・投票率が高い・・投票に来なかった人を政府が呼びつけて「なぜ来なかったのか」と問い詰める・・オーストラリアの場合は罰金だ(p109)


・ロシアは世界最大の入植を行ってきた・・シベリア、ベラルーシ、バルト三国、ウクライナのクリミア半島、中央アジア・・「ロシア系住民の人々を助ける」という大義名分がある(p43)


▼引用は、この本からです
「世界の潮流2024-25」大前 研一
大前 研一、プレジデント社


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

第1章 混迷を極める世界情勢
第2章 リセッション入りする世界経済
第3章 凋落する日本
第4章 中国の最新動向
第5章 2024年の世界はどうなるか



著者経歴

大前 研一(おおまえ けんいち)・・・早稲田大学卒業後、東京工業大学で修士号を、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号 を取得。日立製作所、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長。1987年にイタリア大統領よりピオマンズ賞を、1995年にはアメリカのノートルダム大学で名誉法学博士号を授与された。趣味はスキューバダイビング、ジェットスキー、オフロードバイク、スノーモービル、クラリネット。ジャネット夫人との間に二男。


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