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「日本の論点2024~2025」大前研一

2023/11/30公開 更新
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「日本の論点2024~2025」大前研一


【私の評価】★★★★★(91点)


要約と感想レビュー

大前研一氏の連載記事

「この人は何でも知っているな!」と私が思うのは、高橋洋一氏と大前研一氏です。本書はビジネス雑誌「プレジデント」に大前氏が連載していたもので、私にとっては再読に近いものとなります。


現在、問題となっているオーバーツーリズムについては、足りない宿泊施設として空き家を活用すること、廃業したガソリンスタンドを案内所とすること、足りない人材はワーキングホリデーで外国人を活用すること、タクシー不足にはライドシェア解禁を提案しています。


最近話題となっている10兆円で国際卓越研究大学を支援する制度については、基礎研究に巨額の資金を投入する必要はないと切って捨てて、国立がん研究センターなどの研究機関を活用して、世界中から優秀な医者や研究者を招聘したほうがいいと提言しています。


そもそもベンチャー起業やスタートアップで重要なのは「お金」ではなく「出会い」だというのです。例えば、スタンフォードが起業家育成に成功しているのかといえば、人を集めて出会わせる仕組みがあるからというのです。


地方は、観光用の足が圧倒的に不足している・・鹿児島に甑島(こしきしま)という風光明媚な島・・・島唯一の個人タクシーは18時で営業終了(p17)

役所には不可思議なことが多い

大前さんはスギ花粉症に悩んできたこともあり、花粉症対策が進まない背景を怒りとともに説明しています。極論すればスギを伐採すればよいのですが、実は不思議なことに、日本の政府や自治体はスギの植林に補助金を出しているというのです。それ以外にも花粉の少ないスギもあるし、スギが枯れない高さで切って、保水能力を維持しながら花粉が飛ばないようにする方法もあるという。


誰も食べなくなった捕鯨への補助金もなくならないことを示したうえで、日本の役所には不可思議なことが多いと書いています。これは経済合理性を追及する経営者の立場から見れば摩訶不思議ということで、役人からの視点に立てば、先輩の政策をひっくり返すのは怖いし、既得権を持っている人は反対活動をするので、既定路線を変更するのはリスクでしかないのです。日本のために行動した結果、自分の出世はどうなるんだと考えてしまうのでしょう。


道州制や地方自治・・「ユニットに力を与えて全体を活性化させる」という点で、稲盛氏が提唱したアメーバ経営と通じるものがある(p122)

現状の課題の本質

大前研一氏はマッキンゼーのコンサルタントでしたので、現状の課題の本質を説明し、他社・海外での事例を紹介しながら、次に打つべき手を示していくところはさすがだと思いました。もちろん大前氏は都知事選・参議院選に出馬して落選したこともあり、理論的に正しくてもそれを実際にいかに実行するかが難しいことも理解されていると思います。


難しいと知っているからこそあえて、コンサルという第三者の立場から、言いたいことを言って、誰かが立ち上がり、苦しみながら夢を叶えるのを鼓舞しているのだと思いました。ビジネス雑誌「プレジデント」を購読していない人はぜひ読んでみてください。大前さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・NHKが公共放送として何より重視しなければいけないのは「報道」だ・・それを最優先せずエンタメを重視する放送に、公共放送を名乗る資格はない(p131)


・習近平国家主席はかつての清朝の版図復活を夢見ており、その中には現在ロシアが支配している極東地域も含まれる。ロシアの弱体化に乗じてアクションを起こす危険(p204)


・アメリカやカナダ、オーストラリアでは、40歳前後で別荘を買う人が多い・・別荘の管理をマネジメントカンパニーに任せると、自分が使わないときは貸し出してくれる(p65)


▼引用は、この本からです
「日本の論点2024~2025」大前研一
大前研一、プレジデント社


【私の評価】★★★★★(91点)


目次

Partt1 〈日本編〉
巻頭言 2024年、日本が目指すべきは真の「観光立国」だ
論点01 岸田首相をはじめ日本の政治家が誰も理解していない、日本凋落の根本原因
論点02 岸田政権が続く限り、日本人の給料は確実に下がり続ける3つの根本原因
論点03 植田日銀総裁が、黒田「異次元緩和」路線と決別するために行うべき新たな金融政策
論点04 岸田政権が「異次元の少子化対策」の前に取り組むべき、「ごく普通の少子化対策」
論点05 産業振興目的の「大学10兆円ファンド」が、税金の壮大な無駄遣いになる理由
論点06 いまや国民病である花粉症患者が増え続ける根本原因と、その裏に潜むさまざまな利権
論点07 「ソロ社会」「ソロ活市場」の出現に伴い、日本企業が直面するビジネス環境の大変化
論点08 「日本を変えたい」という政治的野心に燃えた稲盛和夫氏の知られざる生涯
論点09 ネット配信時代のNHKは、受信料からチャンネルごとの課金制に移行すべし
論点10 インボイス制度導入よりも、サラリーマンに不公平な税制度の改革が急務だ
論点11 日本のシニアが楽しい定年後を送るための秘訣と、そこに眠るビジネスチャンス
論点12 介護崩壊を放置する日本の末路と、残された2つの選択肢
論点13 10年前に予見できた、モバイル事業以外に楽天グループが抱える衰退理由
論点14 移動モビリティの規制緩和とルールづくりにおいて日本が欧州から学ぶベき理由

Partt2 〈海外編〉
巻頭言 混迷極める世界情勢。「異形の大国」ロシアとのつきあい方を改めて考える
論点01 最新AI「ChatGPT」を開発した天才経営者が目指すのは「悪の帝国」か
論点02 新・世界一の富豪ベルナール・アノーとイーロン・マスクの違い
論点03 ミサイル防衛よりも防空壕のほうが安全? 日本の頼りない安全保障の実態
論点04 「日米同盟」&「中国包囲網」は、勉強不足で時代遅れな外交戦略
論点05 米欧銀行連続破綻は、世界金融危機のトリガーとなるのか
論点06 インフレに苦しむイギリスのスナク政権に残された「EU再加盟」という選択肢
論点07 ウクライナ侵攻が長期化しても、プーチンの支持率が高い歴史的理由
論点08 「プーチン政権崩壊後」を見据えて始まっているロシア国内外の動き
論点09 不動産不況に苦しむ習近平政権はなぜ"日本いじめ"を始めたのか
論点10 外資系企業誘致よりも、日本人技術者を海外へ派遣せよ
論点11 グローバル化の時代にもかかわらず、日本人の英語力が一向に伸びない理由



著者経歴

大前研一 (おおまえ けんいち)・・・早稲田大学卒業後、東京工業大学で修士号を、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得。日立製作所、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長。「ボーダレス経済学と地域国家論」提唱者。マッキンゼー時代には、ウォールストリートジャーナル紙のコントリビューティングエディターとして、またハーバードビジネスレビュー誌では経済のボーダレス化に伴う企業の国際化の問題、都市の発展を中心として広がっていく新しい地域国家の概念などについて継続的に論文を発表していた。この功績により、1987年にイタリア大統領よりピオマンズ賞を、1995年にはアメリカのノートルダム大学で名誉法学博士号を授与された。英国エコノミスト誌の1993年グールー特集では世界のグールー17人の1人に、また1994年特集では5人の中の1人として選ばれている。2005年の「Thinker 50」でも、アジア人として唯一、トップに名を連ねている。趣味は、スキューバダイビング、ジェットスキー、オフロードバイク、スノーモービル、クラリネット。ジャネット夫人との間に二男。


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