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「読書という荒野」見城 徹

2023/12/01公開 更新
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「読書という荒野」見城 徹


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー

学生時代の劣等感

68歳となった幻冬舎の創業者である著者が、自分の死を目の前にして語る、「読書」がいかに著者の人生に影響を与えてきたのか見ていきましょう。著者は中学生まで「タコ」と呼ばれ、5人くらいのグループから神社の裏に呼び出され殴られたという。中学2年生のとき、同じように神社の裏に呼び出された著者は、鉄パイプを握りしめ、「俺は本気だ。死んでもいい。やるか!」と叫んだのです。そのグループからの暴力はなくなったという。


また、大学に入り学生運動に傾倒した著者は、明日、逮捕されるのではないかというぎりぎりの状況になったという。その時、著者は「母親を悲しませたくない」という思いから学生運動から手を引いたというのです。


「タコ」と呼ばれいじめられた日々、学生運動で死んでいった活動家を横目で見ながら、普通の生活を送っているという劣等感、自己嫌悪、自己否定が著者の心の中にうごめいていたのです。そうした自己否定に苦しむとき、著者は読書をしていたという。


林真理子の原動力となっているのは、「美人ではない」というハンディキャップだ。その点では僕と通底する(p143)

社会人としての冒険

社会人になると、大物作家の新刊が出ると感想を手紙に書いて出し、作家との関係を作っていきました。作者は自分の作品を読んでもらい、感想をもらうとうれしいのです。そうした著者の思いを、読書で培った文章力で、くすぐったのです。


また、行きたいところがあると、「この国を舞台にしましょう」と作家に提案し、会社の経費で作家と一緒に旅行していたという。そうした人と違う極端なことができたのは、仕事でいくらリスクを取ったとしても死ぬことはない、という達観からだったと著者は言います。


学生運動で死んでいった仲間への劣等感が強い自意識を生み、強烈な行動に自分を突き動かしていったのでしょう。理想と社会の現実に直面し、死ぬ気でぶつかって何かが生まれるのです。同じように文学も、自分と同じような過剰か欠落を抱えた人間からしか生まれないと断言しています。


読書で純化した理想が現実に踏みにじられ、破壊される。しかし、それが大人になることだ。現実世界を生きるということだ(p9)

悲痛な日々のほうが生きている実感を味わえる

68歳となった著者は死を意識しつつ、悲痛な日々のほうが生きている実感を味わえるのではないかとしています。なぜなら人が社会で何かを達成するためには普通の人ができないような苦労、苦難の道を通らなければならないのです。「お前は今日一日を、最大限生きたのか」と自問し行動すれば、悲痛な日々が続くことになるのです。


著者は老化していく自分を見ながら、ジムで運動することで自分が老いていく恐怖と戦っているという。負の想いと戦ってきた著者の人生が見えてきました。見城さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・すべての意思決定は、人間の感情が引き起こしている・・他者への想像力を持つことが、人生や仕事を進める上で決定的に重要(p4)


・旅と同じくらい人間を成長させるのは恋愛だ。恋愛ほど、他者への想像力を磨くものはない(p185)


・正しい言葉を使えない人には、部下を率いることも、営業成績を上げることも、商談をまとめることも不可能だ(p7)


▼引用は、この本からです
「読書という荒野」見城 徹
見城 徹、幻冬舎


【私の評価】★★★★☆(83点)


目次

はじめに 読書とは「何が書かれているか」ではなく「自分がどう感じるか」だ
第1章 血肉化した言葉を獲得せよ
第2章 現実を戦う「武器」を手に入れろ
第3章 極端になれ! ミドルは何も生み出さない
第4章 編集者という病い
第5章 旅に出て外部に晒され、恋に堕ちて他者を知る
第6章 血で血を洗う読書という荒野を突き進め
おわりに 絶望から苛酷へ。認識者から実践者へ



著者経歴

見城徹(けんじょう とおる)・・・1950年12月29日、静岡県清水市(現・静岡市清水区)生まれ。静岡県立清水南高校を卒業し、慶應義塾大学法学部に進学。廣済堂出版に入社。初めて自身で企画した『公文式算数の秘密』が38万部のベストセラーとなる。1975年、角川書店に入社。「野性時代」副編集長を経て、「月刊カドカワ」編集長に。5本の直木賞作品を始め数々のヒット作を生み出し、41歳にして取締役編集部長に昇進。1993年、角川書店を退社し幻冬舎を設立。設立後、五木寛之『大河の一滴』、石原慎太郎『弟』、唐沢寿明『ふたり』、郷ひろみ『ダディ』など23年間で22冊ものミリオンセラーを世に送り出す


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